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第七章 私の幸せに貴方たちは不要です
温度差があるようです
しおりを挟む想像していたよりも、重い話でした。
とはいえ、私が知らないだけで、王族内では、そう珍しくない話かもしれません。親子間の不仲はよく聞きますからね。そこから発生する悲劇も。歴史書に数多く描かれてますわ。
そもそも、血に染まっていない玉座など、始めから存在しないのだから。理由は様々あるでしょうけど。それを、いちいち気にしていてもしょうがない。無意味ですわ。
要は、私と殿下の血を染み込ませないようにすればいいだけの話。
まぁ、最悪、全てを放りだして逃げるのもアリだと私は考えます。王族であり、王族に嫁ぐ者として、責任感がないと詰られ、責められるでしょうけど。
ぶっちゃけ、継ぎたい者、もしくは継がせたい者が継げばいいのでは。
支える者なら、殿下以外にも大勢いるでしょうし。表に立ちたい者もいるでしょう。なので、殿下が率先して表に立つ必要はないですね。本人も、その気はないようですし。それに、支え方も色々ありますから、自分たちにあった支え方をすればいいのです。
表に立たないからといって、なんの準備もしないのは話が違います。これから忙しくなりますね。
私は軽く溜め息を吐いてから、立ち上がります。すると、心痛な表情の殿下に手を取られました。自然に私の横に移動し、寄り添おうとして来ます。
いや、その配慮いらないです。
それにしても、自然と掴みましたね。まぁ、それなりに経験はありますよね、冒険者だし。……それよりも、婚約が決まった途端、スキンシップが急激に増えていませんか? 手ぐらいなら許しますが、これ以上過度の接触をなされるのなら、一度物理的に抗議しましょうか。
そんなことを、内心考えているとは気付かず、殿下は私に気遣うように話し掛けてきます。
「シア、疲れたのか……そうだな、話すなら、日を分ければよかったな」
あ……これ、完全に、勘違いしてますね。私、そこまでメンタル弱くありませんよ。
確かに、重たい話でしたが、別段、誰も死んではいませんし、殿下のお母様も暗殺ではないようですし、話自体で疲れてはいません。疲れているとすれば、急な環境の変化ですね。まぁ、それも、受け入れてしまえば、あとは野となれ山となれですよ。
「いえ、私は休むつもりで部屋に戻るのではありません。家に帰るので着替えようかと」
「家に帰るのか!?」
何をそんなに驚いているのでしょう? 別におかしなことは言ってませんよ。
「勿論、帰りますよ」
「シアの家はここだろ!! 少なくとも、秋休中はここにいるべきだ!!」
いつから、ここが私の家になりました!? それに、まだ秋休暇に入ってません!!
「コウとは婚約しましたが、婚姻をしたわけではありません。婚姻前に、婚約者の屋敷に寝泊まりするのは、はしたない行為だと思いますが」
「だが、色々学ぶこともあるだろ!!」
やけに粘りますね。でも、殿下の言う通り、色々学ぶ必要があるのも事実……いずれ、王族でなくなるからといっても、まだ王子妃なのは変わりませんからね。見下されないよう、準備は必要です。
「それは、王子妃としてのものですか……なら、一度、王族付きの教師との面接の場を設けてください。試験をして、足りない所を重点的に勉強しますから」
そのやり方の方が、効率がいいでしょう。
「いや、それも大事だが、俺が言ってるのは!!」
別に学ぶことあります?
首を傾げる私と、帰らせまいとする殿下。
「温度差ありすぎだな。シア、送ろうか?」
私たちの姿を見て、レアルさんに笑いながらドアに促します。殿下の手が緩んだので、スルリと抜けだします。
「神殿まで送ってくれたら大丈夫です。後は自分で帰れますわ」
ドアの前でそうお願いすると、私の声を遮るように、殿下は大声で被せてきました。
「なら、俺も一緒に行く!!」
「いえ、それには及びません。コウはコウの仕事をしてください。コンラッド公爵家には私から報告しますわ。あと……試験の日程が決まりましたら、魔鳩を飛ばしてください。間に合うように参りますわ」
魔鳩なら、魔窟内でも手紙を運んでくれますからね。クエストを切り上げても行きます。あれ? 殿下の迷惑にならないように、そう提案したのに、何故、そんなに落ち込んでいるのですか?
反対に、レアルさんは大爆笑。
「……わかってる。わかってはいる……それでも」
「コウ、私は貴方と婚約しました。四年後は、おそらく婚姻してるでしょう。一緒にいるのが確約されているのに、何か心配することがあるのですか?」
不思議に思って尋ねると、殿下は目を見開き、私を凝視したかと思うと破顔しました。破壊力ありすぎて、目を背けてしまいます。そして、落ち込む殿下。
色んな殿下を見れて嬉しいですが、どうしても、直視できない時があるのです。さっきの笑顔。あまりにも、眩し過ぎて。殿下には隣で笑っていて欲しいので、慣れないといけませんよね。難しいですけど、頑張ります!!
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