今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

文字の大きさ
120 / 354
第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

実は皆勤賞狙ってたの



 殿下が眉間に皺を深く寄せ、険しい表情でジッと床を見詰めている。

 こういう時って、何か良からぬことを考えてるんだよね。全く。不敬だけど、殿下の頭を軽く叩く。

「マリエール!?」

 驚いて顔を上げた殿下の眉間に指を当てた。

「また、良からぬことを考えてますね。殿下。
 
 もしかして、ポーター公爵に会おうと考えてませんか? せっかく、国王陛下と王妃様が防波堤になってらっしゃるのに。

 それに……まだ、そうと決まった訳ではありませんわ。だから、余計なことはなさらないで下さいね、殿下。それが、私から目を逸らさせるためだとしても」

 何度生まれ変わっても、癖は変わらないものね。都合が悪くなると黙り込むのは悪い癖よ。全然納得してないのマル分かり。

「……もし、ポーター公爵に接触したら、今後一切、王妃教育の後のお茶会はしませんわ。当家に来られても対応致しません。それで宜しければ、どうぞ」

 殿下なら分かるよね。私は一度でも口にしたことは守るたちだって。

 真っ青になる殿下。

 冷や汗凄いね。うんうん。分かってくれて嬉しいわ。漸く考えを改めてもらったようで。ホッと胸を撫で下ろした時だ。クスクスと笑う声が聞こえた。笑ってるのは、やっぱり学園長だった。

「もうこの年で、尻に敷かれてるんだね」

 完全に面白がってるわね。ムカつくけど、ここは相手にしない方が賢明ね。自爆しそうだから。退散した方が一番得策だわ。

 殿下も苛つきながらも、食って掛かりはしない。付き合いが長いから分かってるのね。

「では学園長様、私は家に戻ります。ポーター公爵家のことを、父に報告しなければなりませんから」

 そして、手を打たなければならない。一刻も早く。

「オルガ=グリードの監視か」

「ええ。何も考えずに口から出たのかもしれませんが、出た以上監視をする必要があるでしょうから」

「分かった。今日はこのまま帰っていい。公休としておこう。これを、ジェラルドに」

 学園長から手紙を受け取る。

「ありがとうございます」

 良かった~~。皆勤賞狙ってたんだよね。実は。

 頭を下げ学長室を出ようとした私に、学園長が声を掛けてきた。振り返る。

「この件が片付いたら、魔法具について話したいんだがいいかな?」

「勿論、構いませんわ。是非、お願いします!! 何時間でも話しましょう!!」

 もし背があったら、学園長の机に両手を付き身を乗り出してたわね。背が低いから出来ないけど。

「マリエール。浮気は許さないから」

 背後から冷気を感じます。

「浮気ではありませんわ。学問の探究です」

 ちゃんと聞いてたよね。

「だったら、俺も一緒で構わないよな」

「いえ。殿下はご自身の勉強を」

「俺、邪魔?」

 にっこりと笑いながらも、目は全く笑ってない。いつもならここで折れるが、魔法具に関しては無理。なので、

「はっきり言わせてもらえば、邪魔です。殿下に合わせて話をするのは手間が掛かります。もし黙ってるからって仰られても、存在が邪魔になります。それでも一緒にいたいのなら、最低限の魔法具の知識を持ってからにして下さいませ。宜しいですか、カイン殿下。

 では、私はこれで。失礼致します」

 放心状態の殿下を一瞥してから再度頭を下げる私に、

「ちょっと待って。今日から、学園内だけではなく、外においてもサクヤを護衛に付ける。いいね」

 私と殿下のやり取りに苦笑しながら、学園長は告げた。

「分かりました」

 そう返事すると、今度こそ学長室を出るのに成功した。サクヤと一緒に。


 



 馬車に乗り屋敷に戻って来た私を、クライシスとアンナたちは驚きながらも出迎える。

 私の後ろにいるサクヤを見て、その顔に緊張が走った。当然、私の専属護衛のジークの表情も固いままだ。だが直ぐに、ジーク以外いつもの表情に戻った。

「「「「お帰りなさいませ。マリエール様」」」」

「ただいま。お父様は帰って来ているかしら?」

 執事であるクライシスに尋ねる。

「はい。今は執務室で仕事をなさっておいでです」

「そう。なら、取次を。お父様に話があります」

「畏まりました」

 私はサクヤと一緒にお父様がいる執務室に向かった。




感想 326

あなたにおすすめの小説

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結