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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

実は皆勤賞狙ってたの

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 殿下が眉間に皺を深く寄せ、険しい表情でジッと床を見詰めている。

 こういう時って、何か良からぬことを考えてるんだよね。全く。不敬だけど、殿下の頭を軽く叩く。

「マリエール!?」

 驚いて顔を上げた殿下の眉間に指を当てた。

「また、良からぬことを考えてますね。殿下。
 
 もしかして、ポーター公爵に会おうと考えてませんか? せっかく、国王陛下と王妃様が防波堤になってらっしゃるのに。

 それに……まだ、そうと決まった訳ではありませんわ。だから、余計なことはなさらないで下さいね、殿下。それが、私から目を逸らさせるためだとしても」

 何度生まれ変わっても、癖は変わらないものね。都合が悪くなると黙り込むのは悪い癖よ。全然納得してないのマル分かり。

「……もし、ポーター公爵に接触したら、今後一切、王妃教育の後のお茶会はしませんわ。当家に来られても対応致しません。それで宜しければ、どうぞ」

 殿下なら分かるよね。私は一度でも口にしたことは守るたちだって。

 真っ青になる殿下。

 冷や汗凄いね。うんうん。分かってくれて嬉しいわ。漸く考えを改めてもらったようで。ホッと胸を撫で下ろした時だ。クスクスと笑う声が聞こえた。笑ってるのは、やっぱり学園長だった。

「もうこの年で、尻に敷かれてるんだね」

 完全に面白がってるわね。ムカつくけど、ここは相手にしない方が賢明ね。自爆しそうだから。退散した方が一番得策だわ。

 殿下も苛つきながらも、食って掛かりはしない。付き合いが長いから分かってるのね。

「では学園長様、私は家に戻ります。ポーター公爵家のことを、父に報告しなければなりませんから」

 そして、手を打たなければならない。一刻も早く。

「オルガ=グリードの監視か」

「ええ。何も考えずに口から出たのかもしれませんが、出た以上監視をする必要があるでしょうから」

「分かった。今日はこのまま帰っていい。公休としておこう。これを、ジェラルドに」

 学園長から手紙を受け取る。

「ありがとうございます」

 良かった~~。皆勤賞狙ってたんだよね。実は。

 頭を下げ学長室を出ようとした私に、学園長が声を掛けてきた。振り返る。

「この件が片付いたら、魔法具について話したいんだがいいかな?」

「勿論、構いませんわ。是非、お願いします!! 何時間でも話しましょう!!」

 もし背があったら、学園長の机に両手を付き身を乗り出してたわね。背が低いから出来ないけど。

「マリエール。浮気は許さないから」

 背後から冷気を感じます。

「浮気ではありませんわ。学問の探究です」

 ちゃんと聞いてたよね。

「だったら、俺も一緒で構わないよな」

「いえ。殿下はご自身の勉強を」

「俺、邪魔?」

 にっこりと笑いながらも、目は全く笑ってない。いつもならここで折れるが、魔法具に関しては無理。なので、

「はっきり言わせてもらえば、邪魔です。殿下に合わせて話をするのは手間が掛かります。もし黙ってるからって仰られても、存在が邪魔になります。それでも一緒にいたいのなら、最低限の魔法具の知識を持ってからにして下さいませ。宜しいですか、カイン殿下。

 では、私はこれで。失礼致します」

 放心状態の殿下を一瞥してから再度頭を下げる私に、

「ちょっと待って。今日から、学園内だけではなく、外においてもサクヤを護衛に付ける。いいね」

 私と殿下のやり取りに苦笑しながら、学園長は告げた。

「分かりました」

 そう返事すると、今度こそ学長室を出るのに成功した。サクヤと一緒に。


 



 馬車に乗り屋敷に戻って来た私を、クライシスとアンナたちは驚きながらも出迎える。

 私の後ろにいるサクヤを見て、その顔に緊張が走った。当然、私の専属護衛のジークの表情も固いままだ。だが直ぐに、ジーク以外いつもの表情に戻った。

「「「「お帰りなさいませ。マリエール様」」」」

「ただいま。お父様は帰って来ているかしら?」

 執事であるクライシスに尋ねる。

「はい。今は執務室で仕事をなさっておいでです」

「そう。なら、取次を。お父様に話があります」

「畏まりました」

 私はサクヤと一緒にお父様がいる執務室に向かった。




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