168 / 344
これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか
間違えたのね。なら……
しおりを挟む全身が痛い。ズキズキする。真っ暗で何も見えないよ……手足一つ動かせない。どうして……?
もしかして、私縛られてるの!? 嘘!? マジで? こんなシーン、どこにもなかったよ。だって、私はヒロインだよ。皆に愛される存在なのよ。なのにこんな扱い許される訳ないじゃない。
さてはあの女ね。ほんと忌々しいバグが。
「解きなさいよ!! 糞女!!!! こんなことをしても、私は絶対にシオン様を諦めないんだから!!!! 今すぐ解いてよ!! シオン様の元に絶対行くんだから!!!!」
こんなことをしても無駄よ。どんなにゲームがバグっても、ストーリーは変更されないんだから。私がシオン様と結ばれるのは、決定事項なの。糞女、アンタがしてることは、只の足掻きよ。無駄な足掻き。可哀想よね。
「うるせぇーな。まだ夢を見てるのか? どこまでもお目出度いやつだな」
明らかに馬鹿にした声に、私は更にヒートアップする。当然よね。
「アンタこそ、何訳の分かんないこと言ってるのよ!! 今すぐ私を開放して、シオン様の所に連れて行きなさい!! それで、アンタのこと許してあげる」
これでもかなり譲歩してやったのに、馬鹿笑いされた。マジ腹立つ。シオン様に言って、絶対魔物の餌にしてやる。その時になって、謝っても許してあげないんだから。
「許す? お前が俺を? あ~~おかしい。」
更に馬鹿笑いは大きくなる。完全にイカれてるわ。コイツじゃ話にならない。
でも、絶望なんてしてないわ。だって、私はヒロイン。ヒロインは困難に屈しないのよ。そして最後に、王子様と結ばれて一生幸せに暮らすの。だから、私はありったけの声で助けを求めた。
「お願い!!!! 誰かいないの!? 誰か助けて!!!!」ってね。
すると、複数の足音が聞こえた。
「ほらね。助けに来てくれた。馬鹿男、アンタはもう終わりよ」
嗤いながら言ってやった。すると、
「……馬鹿はお前の方だぜ、馬鹿女。そろそろ現実見ようぜ」
「はぁ~~何言ってるの?」
私がそう不快感まるだしでそう言った時だった。足音が私のすぐ側で止まった。
言い争う声も、馬鹿男を取り押さえるような音が全くしない。
……私を助けに来てくれたんじゃないの?
「ほらよ」
馬鹿男の声と同時に光が目を襲う。一瞬白くなった視界はすぐに元に戻った。
目隠しを持った男。そして、私を取り囲むように立つ男たち。彼らは皆、同じ服を着ていた。私はその服をよく知ってる。
「…………う……嘘よ……」
漸く出た声は、とても小さかった。呆然とする私に、馬鹿男は見下ろしながら言い放った。
「馬鹿女。夢の時間は終わりだ。
楽しんだか? これからは、自由に動けないからな。お前はこれから信仰の対象になってもらう。光栄な話だろ。チヤホラされるぜ。あくまで表面上だけどな。されるの好きだろ?」
必死で首を横に振り拒否する。
嫌よ。絶対に嫌!! だって、それじゃあ、私は監禁エンドじゃない!!
「お前が主人公の物語は終わったんだよ。ここからが本編だな。ちゃんと役割を全うしてもらわないと困るぜ。
なぁに、心配するな。頭の悪い馬鹿女でも出来る簡単な仕事だから、安心しろ」
それだけ告げると馬鹿男は立ち上がって、仲間に何か指示をした。
途端に眠くなる。激しい睡魔に襲われながら、私は思う。
こんなのゲームになかった。ここはゲームの世界じゃないの……って。
……私はヒロインじゃないの?
「違うに決まってるだろ」
思ってたことが知らず知らずのうちに口から出てたみたい。明らかに馬鹿にした声がまた聞こえた。
私は間違えたのね……。リセットボタンはどこ? 早く押さ……ないと…………今ならまだ……間に合…………
「合わねーよ」
馬鹿男の声が聞こえた気がした。
42
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。