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貴方がそれを望むのなら
第八話 巣穴、見付けましたわ
しおりを挟む徹夜で午前中の仕事を前倒しで終わらせた私は、早速、早朝に魔の森にやってきました。ケルヴァンを含む精鋭五人で。私を省いて。
通常なら、魔の森に潜る時は砦への報告が必須なのですが、私の特権を有効に使わせてもらいました。あまり褒められた行為ではありませんが、まぁ、今回は仕方ないでしょう。
なんせ、我がコンフォート皇国の宝を我が物にしようとしている輩がいるのですから。
一人、私は上空で待機しながら、五人の様子を観察。さすがですね、皆緊張もなく普段通りですわ。
私はあらかじめ、五人に認識阻害の魔法、あと物理と魔法防御の魔法を重ねがけし、いつもと同じ通りに、通信用の魔法具を渡しています。
この認識阻害の魔法は臭いも声も認識できなくなるので、多少、大きな声を上げても気付かれることはありません。シオン様クラスには到底効きませんが、彼は今、例の泥棒猫と一緒に町を探索していると聞きましたわ。
町中を二人で、朝食デートですか――
腹立たしい!! 腸が煮えくり返りすぎて、一周した感じですわ。だからか、頭がとてもクリアですの。
「セリア様、気が乱れてますよ」
まさかの指摘!?
「……この距離で気付くのですね。スミス、貴方、本当に人族ですか?」
「それは褒め言葉ですか、セリア様。私は人族ですよ」
愉快そうな声が聞こえてきますが、この距離でわかるスミスは、すでに人外だと改めて思いましたわ。私自身も、認識阻害の魔法をかけてますからね。
「大丈夫ですわ。頭はクリアですから。では、始めましょうか、巣穴探しを!!」
私の声を合図に、五人はスミスを先頭に魔の森に入ります。
それを見届けてから、私は探知魔法を砦を中心にして張り巡らします。
「まずは、五百メートル、次は一キロ、二キロ……まだ先か……」
三キロ近くまで伸ばした時でした。
わずかですが、反応が――
普通の探索魔法なら気付かない、小さな小さな綻び。綻びは、私に違和感を感じさせます。私は直接、巣穴を探していたわけではありません。周囲に張ってある魔法の歪みを見付けようとしていたのです。
「……見付けましたわ」
とてもとても嬉しくて、私は満面な笑みを浮かべています。世にいう悪役令嬢のような、高笑いは恥ずかしくてしませんけど。
「砦から北東、三キロ先。私も向かいますわ」
「了解」
「「「「畏まりました、向かいます」」」」
あら、楽しい狩りの始まりなのに、若干二名の声が硬いですね。ケルヴァンもクラン君も緊張しているようには見えなかったのですが……まぁそこは、スミスたちがフォローするでしょう。
私は大事な話をしなければなりませんから。
でもその前に、二人にご連絡しなくては。どうしても、同席したいと仰りましたので。家族の願いは、できる限り叶えたいと思うでしょう。
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