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カインから突如移転魔法で帰ってくると連絡が来た

しかも神殿の中に誰も入れないようにとも魔法郵便には書かれていた


王妃と共に神殿の前で待ってみるが誰も出てこない


一体どうしたと言うんだ?


アルタイック侯爵からは、カインが連れていたクウーラが2頭が
手紙と共に移転してきたと連絡も来た


一度城へ戻ろうかと王妃と話していると、神殿の扉が内側から開いた



「もう!僕達の何処が兄弟喧嘩なんだ!?」


「ユーリが兄でソウが弟にしか見えなかったよ?」


「僕自分の兄上とも喧嘩した事なんて無いんだけど!兄弟喧嘩なんて子供じゃあるまいし!」


「そうなのか?やはり繋がるものが深いと本性が出るのかな?」


「それって、本性は子供って言ってる?」


「いや?可愛らしくて俺は大好きだよ」


「…!!ぼ……僕が……そんな言葉で騙されると思わないでよね!!」


「騙してないよ?……ユーリ尻尾がブンブン揺れてるよ。」


「ぁ……うぅ…………」


何をしてるんだ……この2人は……………


私達の周りの近衛騎士は驚きに固まっている


そりゃそうだ


神殿から出てきたのはモア王子と、賢者様を逃したはずのカイン


言い合いをしながらも仲よさげに手を繋ぎ口元をニヤつかせている

報告は受けていた


2人が運命の番だったと


だがしかし………


2人から運命の番特有の匂いが物凄く漂ってきている


番うと私達獣人はお互いの匂いが体につく

相手の匂いと自身の匂いが混ざり、匂いが濃くなる

普段匂いというものは体臭でしかない

しかし番うと番同士匂いが混ざり香水とは違う良い匂いが香る


しかも番は常に側に居るので、誰が番同士かわかる


この2人は普通の番以上に匂いが濃い


別にキツイ匂いではない


爽やかな香りだが……


こんなに匂いを濃く纏わせてる番は珍しい




「あ……只今戻りました。母上、アレン殿。」


モア王子が爽やかな笑顔を向けてくる


「あぁ……よく戻った。戻ってきて直ぐに仲の良いところが見れて良かったよ。」


王妃は面白そうに笑う


「お……王妃様……ご無沙汰しております……お見苦しい所をお見せして申し訳ございません」


カインが一度ギロッとモア王子を睨み王妃に謝罪する


「いやいや、久々にモアの楽しそうな顔が見れたよ。カインのおかげだな。さぁ、ここで話すのもなんだし私の部屋へ参ろう。」


近衛騎士に周りを取り囲まれ、私達は城へと戻った






「異世界転生……?」


私達はカインから大きな大きな爆弾を投下された


「はい、僕の前世はソウと同じ異世界の同じ国に生まれたオトヤ=アラタという男でした。前世の記憶が戻ったのは10歳の頃です。」


あぁ………なるほど………

記憶が戻ったことによって大人びたのか……


「だから歴代の賢者の様な魔法の使い方ができるし、魔力量もオルガ程多い。想像した通りの魔法が使えるんです。…黙っててごめんなさい」


耳と尻尾を垂れさせションボリとしているカイン


「……お前が無詠唱で魔法を使うのも、戦闘能力が高いのも知っていたよ。」


「…え?」


驚いた顔をするカインに笑いが漏れる


「お前が10歳になってから急に大人の様な言動がみられ、兄上も私も不思議に思っていた。
しばらくしてから、お前の行動がおかしい事に気づき後をつけた。
そしたらお前はギルドで仕事の依頼を受けていた。そこで見たんだよ。無詠唱で魔法を使い、魔獣を瞬殺していくのをね。」



「うそ…………じゃあ……知ってたなら!何故問いたださなかったんです!?」


前のめりになるカイン


「カインが…その力を、人を傷つける為に使うとは思えなかったからだ。何か理由が必ずあると思い、兄上と秘密にする事にした。」



「……父上もご存知だったんですね」


「ああ。だからこそ、ソウ様を青の国まで護衛するようカインを指名した。カインなら必ず無事に送り届けれると確信していたんだ。」


「……そっか……そうだったんだ………」


力が抜けたようにソファに深く沈み込んだ



「ユーリが転生者だと言う事は、今は内密にお願いします。どの国も今はピリピリしていますので。」


モア王子がカインを引き寄せながらそう言う


「分かった。そうしよう。………先ずは王と第2王子を処罰しなければな……」


王妃は疲れた顔を見せる


「その件について報告していただけますか?私共もお話せねばならない事がございます」



報告…?


「じゃあまずこちらから……
カイン達が青の国へ向かった後のことから話しましょう。
あの後城の広場は悲惨な状況でした。
雷に撃たれて死んだ者も居れば大怪我をした者、軽症ですんだ者。
王妃がすぐさま王と第2王子を内密に騎士達に拘束させ地下牢へ入れました。
そして以前から証拠を集めておいた王派の貴族を片っ端から捕まえました。
全員捕獲し、騎士団の各団長が手分けして尋問を開始。
王と第2王子の不正の数々の裏付けができました。」



「では王と第2王子の王位剥奪の材料は揃ったと?」


モア王子の質問に頷く


「そして、皆の前で他国の王族と賢者様を殺そうとした為王位剥奪と共に裁判にかける事ができます。
ただ、一部から神が天罰を下さないと言う事は容認なさっているからじゃないかと。それをこちらで勝手に裁けば、こちらが天罰を受けるのではと不安がる者がいます。」


「なるほどね……ユーリ、話してやって。」



「うん……あのね、もうこの世界にエデン神は居ないんです。」


………は?



「居ない……?」


「うん、僕が記憶を思い出した時にフェラーリという神に会ったんです。僕をこの世界に転生させたのはそのフェラーリ神なんですよ。」



「フェラーリ神…?」


王妃は首を傾げる


確かに聞いたことのない名前だし、他にも神が存在しているとは思わなかった



「フェラーリ神は愛と誠実の神。フェラーリ神が言うには、エデン神は神々の掟を破ったらしいんです。
本来、神々は創った世界に干渉してはならない。
干渉する時は天罰を与えると決まりがあるらしいのですが、エデン神は、人々に加護を与え異世界から人を攫う神の力を分け与えてしまった。
400年前からエデン神は神々に拘束され審議を受けている為この世界に居ません。」



400年前って…………


「では、黒の王を討伐する者に与えられる加護は、受けていないということか?」


王妃がカインに尋ねる


「はい。神がいないからこそ天罰が下らないのです。200年前の勇者達は自力で黒の王を討伐したんだと思います。
フェラーリ神はこの世界が綻び始めてると言ってました。
軌道修正する為に僕はこの世界に転生させられたんです。」



次から次から出てくる話に私も王妃も開いた口が塞がらない


もし軌道修正ができなければ、この世界はどうなる?


「それから、フェラーリ神はエデン神の代わりにこの世界を見守っています。しかし皆がエデン神を信仰している為力が足りず天罰を下すことが出来ないそうです。」



「ああ……神は私達の信仰心が力となるんでしたね………既に各国で、神殿で祈る者が減ったという情報があります。」

王妃が頷きながら答える

「市井では、王に天罰が下らないことから神は居ないと噂が広まってますよ。小国でも同様の噂が広まっていて既に数少ない神殿が壊され始めていると聞きました。」


私がそう補足すると


「小国でも……ねぇ?」


モア王子がクスクス笑いカインを見ると、カインは明らかに目を泳がせた



「………カイン?もしや………」


「僕はただ『賢者様の世界には神は1人ではなかった』って噂を流しただけですよ。その後の事は、小国の人達が結論を出した結果です。」


シレッとした顔で答えるカインにため息が漏れる


「他には?カインは何をやからかした?」


「ちょっと叔父上!その言い方は酷くないですか?」


「全く酷くない。昔から問題児だな、カインは。前世でもそうだったのか?」


「前世は凄く大人しかったですよ!机に向かって勉強ばかりしてましたからね!」



「へぇ~……」


ついつい疑いの目を向けてしまう

何故なら子供の頃は勉強する時間に机に向かってる事はほぼ無かったからだ



「ほら!これ見てください。これは前世の知識で作った親子関係を証明してくれる道具です!」



カインが鞄から出したのはよくわからない道具



「これは??」


「簡単に言うと、私達の手や肉球が1人1人形が違うように、異世界では体を作っている『細胞』と言う物の中に『DNA』というものがあって、その『DNA』に親と同じ模様が出るんです。親のDNAは半分子供に受け継がれるそうです。DNAも私達の肉球や手の形の様に大人になっても変わりません。」


「す……凄いな………異世界の知識は………」


まさかそんな道具が異世界にあるとは……

賢者を異世界から呼び寄せる意味がわかったような気がした


「ですが、この道具は僕しか使えません。本来の作業工程を魔法で早めたりしているので膨大な異世界の知識と魔力量が必要です。」


「ソウ様には使えないのか?」


「ソウはこの分野において知識は殆どありません。僕は前世でこれを扱う仕事をしてたから知識があるんです。」


なるほど……


「この道具で、第2王子が王妃の子では無いことを証明し各国に周知させましょう。」



「そうですね。その後に王と第2王子をどうにかしなくては……」



「実は先程ユーリが神殿に誰も入れないように連絡したのは、青の国のルカルド王子が何者かにこの国の神殿の地下に拉致されていたのです。
神官長が拉致したルカルド王子の世話をしていたようで。」


「何だって!?」


ルカルド王子がこの国の神殿に監禁されていた!?

なんてことだ……今は全ての国が1つにならないといけないというのに……


「王妃、アレン殿。この国の者が身代わりの秘宝を盗みだしある男に使用させ1月前からルカルド王子と入れ替わっていました。
入れ替わっていた男はラウ王子が話を聞いています。
私達は神官長に話を聞き、誰が身代わりの秘宝を盗んだか調べなくてはなりません。」



「………分かった。誰が敵かわからぬ…この問題はモア、そなたに一任する。」


「畏まりました。ユーリ、手伝ってくれ。」


「もちろん。でも先にDNA鑑定だけ先にしとくよ。1つ1つ片付けよう。」



「そうだな。」








モア王子とカインが戻って来たら国の立て直しをと思っていたが、それどころではないようだ


あー…頭が痛くなりそうだ………







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