1 / 17
なぜ私が!?
しおりを挟む「有難うございました。またの来店をお待ちしております」
「はぁ……神幹さん……また、おねがいしますね」
「まだ余韻が抜けていないかもしれません。足元気を付けて帰ってください」
とあるマッサージ店から女性が出ていく。それを見送る男性。
ここは街のメインストリートからは少し外れた場所にあるマッサージ店 <プレジャータイム>
施されるマッサージはリラックスするためや治療のためのマッサージではない。女性が"性的"に気持ち良くなることを主眼としたマッサージ店だ。
開店してまだ数か月。しかし店長であり施術者である神幹 修義の腕が良く口コミで広まり繁盛している。
神幹は30代後半でがっしりした体型。元々は柔道をしていて整体師を目指していたそうだが、女性の体を触ると無意識に性感帯ばかりをピンポイントで探り当ててしまう。これでは施術にならないと一時は悩んだが、天から与えられた才能だと割り切ってからは性感マッサージ師として大活躍だ。そんな神幹が独立して自分の店プレジャータイムをオープンさせた。
「店長、郵便物ここに置いていますので」
<プレジャータイム>に最近、スタッフとして雇われた本島 英吏。英吏は20代後半で日中はOLをしているが、副業を探していたところ、週に何回か夜の数時間だけで良くて簡単な受付業務や軽作業で時給がいいからと求人を見て応募した。
普通のマッサージ店だと思っていたが、面接中にふと目に入ったマッサージメニューを見て性感マッサージだと気づいた。しかし時給の良さや店長の「僕一人じゃあもう店が回らなくて。助けてほしい」とお願いされて「頑張って働きます」と返事をしてしまったのだ。
実は英吏以外にも応募者は多かった。なので性感マッサージに対して嫌そうな顔をした英吏に無理に働いてもらう必要はなかった。しかし、英吏は真面目で従順そう。
そして何より英吏の外見が性感マッサージ店に合っていたのだ。受付で客と顔を合わせるスタッフがもし派手めで若い女性だとお客が気後れすることもある。
その点で英吏は20代後半でお客の平均年齢よりは若い方だが、見た目が地味な感じ。豊満な胸や美しい肌の持ち主ではあるが、いかんせん服が野暮ったく地味。
お客が不快にならない、そして印象にも残らない丁度良い雰囲気。それが気に入り、神幹はぜひあなたに働いてほしいと懇願した。
神幹は郵便物を確認しながら英吏に指示を出す。
「本島さん、さっきのお客さんの後片付けしておいて」
「はいっ」
ここで働き始めたばかりのときに教わった「後片付け」は、色々な液体(マッサージオイルだけでは無さそうだ)を拭き、甘ったるい湿気た空気を入れ替え、ベッドメイクするという仕事。作業量は大したことはない。しかし色々想像してしまうことが英吏の悩みだ。
「片付けが終わったらうちで働きたいっていってる人が来るから紹介するよ」
「新しい人ですか」
英吏は私を雇ったばかりなのにまた新しい人?と首をひねる。
「受付スタッフじゃなくてマッサージのほう。予約枠がほぼリピーターさんで埋まってるからね。新規さん獲得のためにも施術できる人を採りたい」
神幹は腕もいいし、見た目もいい。そんな神幹の施術を受けようとリピーターは増えるばかりで新規客が受け入れにくくなった。そのため新たに施術できる人間を増やすのだ。
「そうなんですね。良い人だといいですね」
「そうだね」
神幹は人の良さそうな笑顔を英吏に向ける。
(君にとっても……ね)
「初めまして、飛虎 健といいます!よろしくお願いします!」
「はい、よろしく」
「宜しくお願いします」
元気な声が響く。神幹は慣れたように、そして英吏は大きな声に驚きつつ挨拶を返す。
マッサージ師志望という男はまだ20代になりたて。飛虎だなんていかつい苗字だが、見た目は可愛らしい感じの顔。年上のお姉さま方に好かれそうな顔だ。愛くるしい顔だが高身長。神幹に比べれば筋肉は無いが、スタイリッシュで清潔感のある男だ。
飛虎はマッサージ師養成の専門学校に通っているが、在学中に色んな経験を積みたいからと<プレジャータイム>に応募した。
「飛虎くん、改めて聞くけどここは性感マッサージの店だよ。分かってるんだよね」
「……はいっ」
飛虎は性感マッサージという言葉にピクリとしたが元気のいい返事。
「専門学校でマッサージのことは学んでるだろうけど、性感マッサージはまた違うからね。悪いけどいきなり君を採用するわけにはいかない。お客さんにオーガズムに達してもらえるかが重要だ。セックスでいかせるんじゃない。手技だけで絶頂を味わってもらうんだ」
英吏は普段の生活では聞かない言葉が目の前で言われ顔を赤らめる。
(オーガズムとかそんな恥ずかしい言葉……//)
英吏は恥ずかしくて俯く。しかし神幹の18禁ワード連発の説明は続く。
「……ということで、研修を受けてもらうよ」
「分かりました!」
やっとまともな会話になったと英吏が顔を上げる。
「研修後に修了課題をしてもらってそれが合格なら雇う。不合格なら悪いけど雇えない。修了課題は……」
これまで会話の外にいた英吏の肩を神幹がポンとたたく。
「修了課題は本島さんをイかせること。本島さん、練習台になってあげてね」
普段は物静かな英吏の、驚嘆の声が部屋に響いたのであった。
35
あなたにおすすめの小説
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる