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そして白鬼は庭師になり
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ファイルヒェンのおかげで、白鬼はお城の庭師として働けることになりました。とはいえ白鬼はいちばん下っ端なので、もっぱら先輩たちが使う仕事道具の手入れに時間を費やしています。
それでも、手の空いている先輩が仕事のやり方を教えてくれたり、植物の豆知識を披露してくれたり、作庭のこだわりを熱く語ってくれたりするので、白鬼はこの仕事を楽しんでいました。
なにより白鬼にとっていちばん楽しみだったのは、時々庭にやって来るファイルヒェンに会えることでした。
「ミタマ、お仕事はどうかしら?」
彼女は自分が白鬼を手引きしたからか、彼の様子を確認しに来るのでした。ちなみに白鬼には名前がなかったので、彼女につけてもらった『ミタマ』という名前を使っていました。
「はい、まだまだ植物には触れませんが、先輩たちの話を聞くのは楽しいです」
白鬼はファイルヒェンの口から紡がれる『ミタマ』という名前に心をときめかせながらも、平静を装ってそう答えました。ファイルヒェンはくすくすと笑いをこぼします。
「人の話を聞くのが楽しいだなんて、変わっているわね。普通は自分の話を聞いてもらいたいものよ」
「楽しいものは楽しいので」
「本当に、あなたって子はお人好しね」
ファイルヒェンの微笑みに、白鬼の胸が高鳴ります。
「そういえば、あそこに植えられているラベンダー、ファイルヒェン様の好きな花なんですよね? 香りもいいし、鮮やかな紫がファイルヒェン様にぴったりだってみんな言ってます」
白鬼がそう言うと、ファイルヒェンの顔に影が差しました。きょろきょろと周りを見回した後、彼女は白鬼に耳を近づけました。
「みんなにはそう言っているけど、本当は違うの。私はスミレが好きなの」
「そうなんですか? どうしてそんな嘘を?」
「だって、スミレはみんな雑草だって言うじゃない。そんな花が好きなんて、王女のイメージが壊れちゃうわ」
「王女様は色々大変ですね。俺は堂々とスミレが好きだって言える身分でよかったです」
白鬼の言葉に、ファイルヒェンはきょとんとしました。それから、ふふふと笑い出します。
「ミタマもスミレが好きなの? 似合わないわ」
「失礼ですね」
白鬼が頬を膨らませてみせると、ファイルヒェンはこらきれないといった風に口を手で押さえて笑いました。
その時、足音が聞こえてきたので、ファイルヒェンはぴたりと笑いを止めました。足音の主はフォスキーアでした。
「ファイルヒェン、こんなところにいたのかい? 王妃教育の休憩時間はそろそろ終わりだろう。一緒に戻ろう」
「あら、もうそんな時間? 分かったわ」
フォスキーアが差し出した手を、ファイルヒェンはためらうことなく取りました。
連れ立って歩くふたりを見て、庭師の先輩たちが感嘆の息を漏らします。
「はぁ、やっぱりおふたりが並ぶと絵になるな」
「理想の夫婦像だよなぁ」
そんな周囲の言葉に反して、白鬼の胸はじくじくと痛んでいました。それでも、白鬼はその気持ちを心の深いところに押し込めました。
それでも、手の空いている先輩が仕事のやり方を教えてくれたり、植物の豆知識を披露してくれたり、作庭のこだわりを熱く語ってくれたりするので、白鬼はこの仕事を楽しんでいました。
なにより白鬼にとっていちばん楽しみだったのは、時々庭にやって来るファイルヒェンに会えることでした。
「ミタマ、お仕事はどうかしら?」
彼女は自分が白鬼を手引きしたからか、彼の様子を確認しに来るのでした。ちなみに白鬼には名前がなかったので、彼女につけてもらった『ミタマ』という名前を使っていました。
「はい、まだまだ植物には触れませんが、先輩たちの話を聞くのは楽しいです」
白鬼はファイルヒェンの口から紡がれる『ミタマ』という名前に心をときめかせながらも、平静を装ってそう答えました。ファイルヒェンはくすくすと笑いをこぼします。
「人の話を聞くのが楽しいだなんて、変わっているわね。普通は自分の話を聞いてもらいたいものよ」
「楽しいものは楽しいので」
「本当に、あなたって子はお人好しね」
ファイルヒェンの微笑みに、白鬼の胸が高鳴ります。
「そういえば、あそこに植えられているラベンダー、ファイルヒェン様の好きな花なんですよね? 香りもいいし、鮮やかな紫がファイルヒェン様にぴったりだってみんな言ってます」
白鬼がそう言うと、ファイルヒェンの顔に影が差しました。きょろきょろと周りを見回した後、彼女は白鬼に耳を近づけました。
「みんなにはそう言っているけど、本当は違うの。私はスミレが好きなの」
「そうなんですか? どうしてそんな嘘を?」
「だって、スミレはみんな雑草だって言うじゃない。そんな花が好きなんて、王女のイメージが壊れちゃうわ」
「王女様は色々大変ですね。俺は堂々とスミレが好きだって言える身分でよかったです」
白鬼の言葉に、ファイルヒェンはきょとんとしました。それから、ふふふと笑い出します。
「ミタマもスミレが好きなの? 似合わないわ」
「失礼ですね」
白鬼が頬を膨らませてみせると、ファイルヒェンはこらきれないといった風に口を手で押さえて笑いました。
その時、足音が聞こえてきたので、ファイルヒェンはぴたりと笑いを止めました。足音の主はフォスキーアでした。
「ファイルヒェン、こんなところにいたのかい? 王妃教育の休憩時間はそろそろ終わりだろう。一緒に戻ろう」
「あら、もうそんな時間? 分かったわ」
フォスキーアが差し出した手を、ファイルヒェンはためらうことなく取りました。
連れ立って歩くふたりを見て、庭師の先輩たちが感嘆の息を漏らします。
「はぁ、やっぱりおふたりが並ぶと絵になるな」
「理想の夫婦像だよなぁ」
そんな周囲の言葉に反して、白鬼の胸はじくじくと痛んでいました。それでも、白鬼はその気持ちを心の深いところに押し込めました。
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