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癒し手の僕は、精霊たちの小鳥です。

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枯れた花畑がどこまでも続いていた。
大きな池溜まりの側で金髪の愛らしい少年は窮地を助けてくれた妖精たちに微笑みかけて目を瞑り歌を唄った。

助けてくれた、お礼をしよう
今の僕には歌うことしかできないけれど
少しでも気に入ってくれるといいな

その歌声には力があった。妖精たちの傷を治した。枯れた花の影で眠っていた妖精たちを目覚めさせた。色とりどりの花を咲かせて、踊り羽ばたいた。
歌い終わった少年が眼を開けるとそこは何もかも変わった色とりどりの世界が広がっていた。





「人を探してるんだけど知らない?濃い金髪に青い目で僕より身長はうんと高くて…それか黒髪に……ごめんね、知らないよねぇ。うーんどうしよ。森に入り込んだものの早々にはぐれて迷子になるなんて。僕は戦うことはほとんどできないから、困ったなぁ」

昆虫の翅を生やした妖精たちはふるふると首を振り、お互いに何かを話す動作をし、戦えないのなら任せろと胸を張るように見せた。
僕はその可愛らしい姿に笑い、仕方がないかと立ち上がり歩き出す。
周りには淡く光る妖精たち。先ほどまでとはガラリと違う景色に苦笑した。
力の加減を間違えたのか。癒し手といっても死んだ花を生き帰らすことはできないし、汚れた水溜りを清水の湖に変えることはできない。歌で起こしてしまった妖精たちが何かしたのだろうと思うことにする。

「進んでも進んでも花畑だなぁ。僕は森に戻りたいのに」

森は危険よ。たくさんの魔物がいるんだもの。
またおそわれてしまうよ、可愛い人。
わたしたちが側にいてあげるから。
歌を唄ってちょうだいな。
あなたの出す“音”はとてもとてもだいすきよ。
あなたの“音”に合わせて踊りたいの。

妖精たちに歌を唄ってと言われたような気がして歩きながら歌を唄った。
勇者の冒険譚を。



可愛い人は泣いてしまう。
勇者のお歌を唄いながら。
悲しいことを思い出してしまったんだね。
きみが悲しんでいるとぼくらも悲しい。
きみの涙は甘くておいしい。
花の蜜より甘くておいしい。
泣いてるきみはとてもいとおしい。


勇者は僕らの前からいなくなってしまった。
それは僕らが彼を守れなかったせい。
きっと彼は人に裏切られて傷ついている。
それを思うと涙が止まらなかった。
妖精たちは僕の涙をぬぐってくれた。頭を撫でて、額にキスをして、頬を撫でてくれる。
慰めてくれているようだ。

「ふふ、ありがとう。泣いてばかりじゃだめだよね。はやくみんなのところに行かないと。ねぇ、どちらに行けばいいと思う?」

妖精たちに尋ねるとこっちだよと案内される。唄い、踊り、跳ねながら。
進めば進むほど霧が濃くなる。湖をたどって進んでいるので、景色が一向に変わらないのであれば一度戻ると言うのも手だった。
目印があればいいのにとも思うがあるのは花だけだ。
霧が濃くなる。いまは何時くらいだろうか。まだ明るいから昼だとは思うのだけれど。
お腹がすいたと思えば、妖精たちが花の蜜を手にいっぱいにして持ってきてくれた。
白い蜜は甘くて美味しく、回復薬のような効果もあるのか、疲れもなくなり、気持ちが軽くなる。
次は何の歌にしようか。楽しい歌がいいかな。そんなことを考えながら進んだ。

はなのように笑うんだ
ぼくらのミツ(精気)がおいしいって
ぼくらもとてもうれしいよ
もっとたべさせてあげたいな
もっとあいしてあげたいな
もっともっともっと





歌を唄うのは楽しかった。それを聞いて喜んでもらえるのもとても嬉しい。
両親は幼少期に才能を開花させた時に喜んだ。癒し手はそう数は多くなく、国でも重宝される。両親や友人と離れて神殿で過ごすのは寂しかったけど、両親は定期的に手紙をくれた。魔物退治に参加して各地で活躍するととても喜んでくれた。
勇者との冒険は未知のことが多くて経験不足、世間知らずを痛感させられた。癒し手なのに、僕を守るために怪我をさせてしまうことも多く不甲斐なかった。
冒険の中には妖精たちと戦ったこともあった。ここにいる妖精たちのように優しくも美しくもなく、狡猾で醜い妖精だ。
ふと、その冒険で妖精たちに騙されたことを思い出した。
歩いても歩いても目的地にはつかない。
そのうち疲れて眠ってしまい、夢を見せる。あの時は勇者がいた。勇者はただ一人、妖精の幻術に惑わされず、果敢に立ち向かい、僕らを解放した。
ーー今は?






湖の畔に美しい神殿があった。
白亜の階段に高い柱、清水が流れ、庭の泉には色とりどりの花が浮かび、妖精が戯れる。
神殿の中はステンドガラスから入り込む光のみ。天の御使いやら女神やらの彫像がある。
人間の感覚で言うと、夢のように美しい神殿だ。
その厳かな雰囲気の中で、悲鳴に近い嬌声が絶え間なく響いている。柔らかな金髪に碧眼の美少年を複数の精霊たちが囲っていた。手を押さえて脚を広げて、身体に触れて、奏でる音を楽しんでいる。
その声…音は精気を養う力でもあるのだろうか。妖精たちの生殖行動を活発化させている。
生殖行動と言ってはいるが、動物のように子を生むことはないのでその行為は転生もしくは捕食でしかない。妖精は交尾して身体を乗っ取る行為を繰り返して力を得る。乗っ取る行為をする必要のなくなった精霊の生殖行動は単純に悦楽に耽ってるだけ。
なので、目の前で繰り広げられているのは単なる悦楽のための乱交だ。
身体を持て余した精霊たちもまたそれぞれで挿入行為を楽しんでいた。珍しく人型を模しているものが多いのは囲われている少年に合わせたのか。
 

…わたしがいない間に何があったんです?
それをわざわざ言葉にする必要はありますか?これが全てですが
人間は綺麗なお花好きでしょう?
あぁ、花畑ありましたね
人間は水辺がすきだろ?
湖とか庭はそれでですか
人間は美しい建造物が必要かだろう?
だから神殿?たしかに雰囲気はありますが

「一応、もてなしはしたんですね。でも、出会い頭で犯したのは失敗でしたね」

突然言葉が聞こえたせいか嬌声をあげながら行為に溺れていた少年の顔が曇り肩を震わせた。

「だれか!たすけて…!たすけて!暗いの、なにも見えないの、うで、もあしもうごかないの!!や、い、痛いの、も、むり、いやぁっ!ひぁ、も、やめ、ぇッッ」

翡翠色の眼は何も見えていない。
逃げられないように腕と脚を奪ったのか力なく揺れ逆方向に向いていた。
妖精や精霊は痛覚の類はわからない。

「眠りなさい」

そう言えば、かくんと寝台に落ちた。
少年の小さな体から長いペニスが抜けた。

人間みたいだな。
人間になったの?
半分人間。アレだ、あの魔物の雌の。
あら、誰か雌と交尾しなかったかしら?
したけど喰われたんだろ。胎の中で。
考えたね。雌を乗っ取るのではなく雌の子を乗っ取るなんて。
ぼくも次はそうしようかな。
この子はどうしましょう。
とても気に入ったんだけど、捨てるしかないの?
動かないんじゃ、仕方がない。
たくさん愛してあげたかったのに。
みんなで愛してあげたかったのに。
ずっと愛してあげたかったのに。

うるさいと思いながら少年を抱えて寝台を整える。変な方向に曲がっていた腕や脚を正しい向きにして横たわらせた。
死にかけているのを精霊たちの精気でギリギリ生きているといったところだ。


まず、体の修復ですかね。記憶の修復はわたしがやります。精気は与え続けないといけませんが、口の方がいいでしょう。ずっととは言いませんのでこの子の前では極力、人の形をとってください。
…母上から人間の知識をもらっておいて良かったですね。共有しておけば、扱いを間違えることはないはず。



大きな湖の畔には神殿があった。
僕が育った神殿とどことなく似ている気がして、引かれるように白亜の階段を登った。
美しい庭にある泉には花びらが浮かびその上で妖精たちが飛び跳ねて遊んでいる。
妖精たちが僕に気づくと両頬にキスをしてきてくすぐったくて笑ってしまった。
巨大な神殿の扉は人1人が通れる分だけ開いていた。


そこには淡く光る美しいひとたちがいた。
それはひとではない何かなのはわかったが、目を、心を、奪われた。
心臓の音が高鳴った。なんでこんなにドキドキするのだろう。
こちらへおいでと赤い光を放つひとに誘われて手を引かれる。
黄色い光を放つひとにようこそと言われる。
緑の光を放つひとに抱えられて「ひぁ」と声をあげてしまった。
ー驚かせてしまったようだね。ごめんね。
そんな声が聞こえた気がした。
黒い光を放つひとの膝の間に座らされる。頭をわしゃわしゃと撫でられて少しだけむっとするとクツクツ笑われた。
靴音が聞こえてはっとする。目の前には青く光る人がいた。
僕の前に膝をついて、手を優しく掴まれて手の甲にキスをされた。体温が一気に上がる。王子様がお姫様にするあれだ。どういうこと?なにが起きているの?とハテナを浮かべているとその人は苦笑いした。

「…怖がらせたいわけではないので、嫌なら嫌だと言ってくださいね」

言葉を話したことに驚いた。何かを話そうとするものの口がから回る。
それを不思議に思ったようで青いひとが頬を撫でてきた。

「なにかおかしなところありましたか?どこか痛いところとか?」
「ちちちちがいます!ごめんなさい。少し驚いてしまって。他の方は光のようなものとしか認識できないのに貴方は人のようにみえます。人のよう、なので違うのはわかるのですが。えっと、僕の知り合いにどことなく似ているというか……あ、すみません、気のせいですよね」
「……驚かせてしまったんですね。申し訳ありません。わたしたちは人間の目にはよく見えないかもしれません。あなたの言葉でいうと精霊というものに分類されます。“わたし”は“わたしたち”であり、“わたしたち”は“わたし”ですので、わたしの言葉は精霊たちの言葉だと思っていただいて…わたしの言葉はわかりますか?」
きょとんとしてしまった。やはり似ている。話し方や表情がそっくりだ。
頬をつねられる。じっと間近で見つめられていて距離を置こうと頭を引くと後ろの黒い精霊に頭をぶつける。くくっと笑われてまた髪を乱された。
「すみません」
「大丈夫です」
黒い精霊に謝ったのに、目の前の青い人から返ってくる。
そして、距離が近い。両手を取られていて、逃げ場はない。人間であれば息が聞こえそうなほど近い。どきどきした。

「……あの、あなた方が精霊ということはわかりました。わかりましたが、この近さはなんなんですか…?」

尋ねるとくすりと笑われた。その顔は人間らしいのに。

「わたし(わたしたち)はあなた(の音)を愛しています。たくさん愛し合い(交尾し)たいと思っています。できることなら(できなくとも)愛して(欲しがって)ほしいと思っています。永遠にその声(音)を聞かせてほしいのです」

まっすぐに見つめられて愛を囁かれる。何かがおかしいとは思っているのにこの真摯な声と顔に首を横に振ることはできない。心臓が痛いくらいにドキドキして、こくこくと縦に振った。
「僕でよければーー」
その声は重ねられた、口の中に溶けて消えた。

基本的に、人間は出会い頭で生殖行為はしない。
まずは自分たちを好きだと思い込ませた。淡い恋、憧れ、そう言った感情が向くように仕向けた。
母に似たこの姿は嫌われるはずがなかったのでそのまま利用した。
好きだ、愛していると告げて、キスをして、怖がらせないように身体に触れて。案の定好意に対しては無下にすることができない子だ。
相手は1人の方が集中できるだろうと、他の精霊には消えてもらって、全身を愛撫した。
精霊のペニスは長く尖っている。それは無理だと泣くのを宥めて、少しだけという条件で許してもらった。無理やりはしない。本人が認めて、自ら選ぶ行為に価値があった。
精霊のそれなので相手の器官に合わせて体内で変化する。
少しだけという約束はしたので少しずつ、慣れれば「もう少し」と言って結局全部入れた。動かさずじっとしていれば耐えられなくなってヘコヘコと腰を動かし、ペニスを搾り上げる動きをした。その行為は卑猥だと自覚しているらしい。止めたいのに止まらず、動いてほしいのに動いてもらえない。
「これがわたしたちの生殖行為ですから」
子種を欲しがってペニスを締め付け搾り取るのはいつだって雌のほう。その締め付けを楽しむように少しずつ射精する。催淫効果のある精をゆっくり身体に染み込ませて馴染ませる。腰を上下左右に動かして必死に快楽を追っているのは愛おしい。しばらくすれば好きなポイントがわかったようでそこばかりに擦り付けて達した。
「ァーーーーッ」
これ以上ない極上な音に、つい多く射精してしまう。すると中が喜んで一層締め上げた。
「んーーッ…は、ぁ、よかった、ですか?」
腰をゆらゆら揺らしながら可愛らしい顔で訪ねてくる。
「えぇ、あまりに良すぎて…つい、油断しました。大丈夫です?」
「はい……すごく、気持ちいいです。はしたないのはわかってるんです、けど、とまらなくて、ぁ、あ、ぁっっまたっっ」
「どうも、あなたの声はクルようです」
「そう、なんです?じゃ、ずっと、ァァ、話し、て、ふぅ、あ、ァ、ア、いいっっい、いぁ」
「いいですね。その調子です。たくさん励んで、感じて、達してください。わたしたちに射精される喜びを味わって下さい。たくさん鳴いて、わたしたちを喜ばせて下さい」
「…はぃ、い、ぼく、がんば、り、ますね」
蕩けた笑みを見せてまた甲高く鳴き始める。
それだけでまた少し多めに射精した。






神殿内で愛らしい嬌声が響いていた。
色とりどりの幻想花を散らした寝台で、天井から差した陽の光に照らされて華奢な身体をしならせた。
両手は別々の精霊たちに握れていて口を抑えるものはなにもない。
たまに口を塞がれた時だけ、その声が止まった。
片脚はいま交尾している精霊の肩に引っ掛けられて、もう片脚は伸びきって痙攣していた。
少年のペニスが反り返ると小柄な精霊がそれを己の雄膣に入れて腰を振る。
一層甲高い声で鳴いて果てると、奥に精気を感じた。反応は見えないが喜んでくれているようだ。
ふーふーっと息を整えながら、ゆるゆると己の中にあるペニスを奥に擦り付ける行為を再開する。もっともっとと射精を促すように雄膣で締め付けた。
乗っかっていた精霊が口を吸われる。

「好き?」
「好き」
「これは?」
「ん、すき」
「おいし?」
「ふふ、おいし。もっと」

口の中で舌を絡ませて噛んで遊び、花のように笑って強請った。
その間も腰を振って雄に犯される悦びに耽っていた。


青い精霊が姿を見せると「おかえりなさい」と出迎える。
「どこかに、行ってたわけではありませんけどね」
「いるなら、姿を、見せてください。覗き見されるのはいやです」
目は一つでも、この会話も、交尾ですら全ての精霊に共有されるのは、知識としてあるだろうに。
それを言ってもこの会話は繰り返されるので、大人しく頷くことにした。
「はい、わかりました。お詫びに、誰に抱かれて、どこで、どのくらいイったか教えてさしあげましょうか?」
「ーーそういうのいいから!」
顔を真っ赤にさせて怒るのは可愛らしい。
少年の表情はくるくると変わり、ずっとなにかしら歌って話して鳴いている。
小鳥のようだと思ったので、精霊たちはこの少年のことを小鳥と呼ぶようになる。
「わたしたちの可愛い小鳥。わたしたちのために鳴いてくださいね」
む、としていた顔を綻ばせる。
「ーーはい、ご主人さま」
可憐な声で鳴く声を聞きながら、精霊と妖精たちは交尾をはじめた。
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