魔族のペット(ネコちゃん)の調教記録

えい

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2.ペットの記憶とかつての記憶

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すべて。
その瞬間、思い出した。



騎士であった自分を。
魔物討伐に出向いて、そのまま仲間の裏切りにあった記憶を。
意識を失って目覚めた瞬間には身体の中を作り替えられたことを。
その時に全て記憶を失ったことを。


優しくしてくれたのはたった1人だった。
今覚えばそれは作られた優しさだったが、全てを失った自分にはそのヒトが全てだった。
強くて美しいヒト。
そのヒトが褒めてくれるのが嬉しかった。
優しくしてもらえるのがうれしかった。
そう。
全部覚えている。
なにをしてきたのか。
なにをしていたのか。
とても幸せで。とても悦くて。ずっとそこにいたかった。
すべてを忘れたままそのヒトのことだけを考えていたかったのに。

ぼろぼろと子供のように泣いた。
溢れる涙が止まらなかった。

「あら?」

不思議そうにそのヒトは言う。



その言葉に凍りついた。身体が震える。
ベッドに頭を擦り付けて、声を絞り出す。



「……お願いだから……捨てないで」


記憶を取り戻したら可愛い何も知らないペットのままではいられない。
それがわかってしまった。
捨てられること、このヒト以外に売られることを恐怖した。

だけれどそのヒトは笑う。
顔を上げさせて、頬を両手で掴まれる。


「おバカね。捨てるわけないじゃない。アナタはアタシのモノだもの。かわいい子」


そう言ってたくさん愛をくれた。






記憶が戻って、話せるようになっても、今までのことはきちんと全て覚えていた。
好きなものも、好きなことも変わらず好きなまま。
変わったことといえば。

「おいしぃ。ベルさまのがいちばん、すき」
「あの、ここで遊んで?ね?あそぼう?」
「乳首もこんなになっちゃった」
「だしたい、よ、射精したい、な」
「ん、きもち、ぁあっいっちゃ、う、あっあーーっ」

恥ずかしそうにしながらも、きちんと全て言葉にする。
好きなことは好き、いいことはいい。

「あの、言葉を話さない方がよければ言ってね、話さないようにするから」

どこまで健気なの?

「アタシ、お利口な子好きだもの。そのままでいなさい」

そういえばとても嬉しそうに笑った。




さらにお手伝い…調教に関してはスパダリっぷりに拍車がかかる。

「かわいい。そうそう締め付け上手。もうちょっと力んでみようか?ふふ、きもちい?俺も気持ちいいよ」

こっちが赤くなるほどとても丁寧に教えながら抱く。
攻めてはいるもののペニスのリングも、アナルプラグもそのままなので、後ろを締め付けながら出さずにイクのがとても可愛い。
隙をついた他の子が、プラグをとって犯したくなっちゃうのもとてもよくわかる。
カシャカシャカシャカシャ。

「もう、なにとってるの…?」

無言で撮っていると色気を垂れ流したクロトが困った。
ここまで淫乱で、淫乱の自覚がある子でも記録されるのは恥ずかしいらしい。

「永久保存版よ」
「ほどほどにして」

口に吸い付き戯れてくる。
全身で、言葉で好きを伝えてくるクロトがどうしようもなく可愛かった。





ベルはクロトを連れて出かけることにした。
ここまで従順であれば外に連れ出しても問題ないという判断だ。
暴れない、怖がらせない、自分から離れない。というのを何度も復唱させる。
ショーを見に行くと伝えれば。

「ベルさまとデートだね。うれしい」
「そう。デートなんだから、アタシから絶対に離れないこと」
「わかったよ」

なによりもデートという言葉の方が効果がかるようだった。
外に出るので服を着せる。
ベルはネコに服を着せて遊ぶ趣味もあるので服自体は大量にあるが、クロトのものはそれとは別に大量に用意していた。

「久々に服らしい服を着たけど……うんまぁ……」

胸は乳首が隠れるくらいしかない。ゆったりとしたズボンを履いたが、かなり浅い。耳に大振りの石がついたピアスをつけられて髪も綺麗に整えられる。
正直落ち着かないが、ベルが絶賛して写真を撮るのでまぁいいかとなった。

ショーが行われる場所はさまざまな魔物や魔族で賑わっていた。
ベルとクロトは薄布で覆われたVIP席に通される。
中央に舞台があるそこはサーカスみたいだなとクロトは思った。
何が行われるかは、大体わかった。
人間か、人間もどきかが犯される。相手は魔物であったり、獣であったり。犯された方は最初は恐怖。それが段々と快楽に染まっていく。
黙って見ているベルに寄りかかる。
仕事の邪魔はしない。でもつまらないので服の下で乳首のリングを引っ張って遊んだ。

「あら、お外でもそうなっちゃうのね?」
「してはいけない?」
「いいのよ。好きになさい」

しばらくそうやって、舞台上を見ていた。
犯されて可愛い顔になる瞬間がとても好きで興奮する。気持ちよさそうにしているコを見ると自分も気持ち良くなる。

「教えてあげたい子がいたら言いなさい。買ってあげるわよ」

ベルは調教する商品を物色していた。
舞台にいる子たちは可愛いなぁとは思う。だけどそこまでで口にベルの手を咥えて舐めてに夢中になる。
それで遊んでいると、少年の甲高い悲鳴が聞こえて、舞台を見た。
身体中をビクビクさせて、生まれたての子鹿のように震わせる。
後ろに代わる代わる男を咥えていた。
顔は恐怖一色だ。
その顔を見た瞬間クロトは一瞬止まる。
我慢できずに後ろに入っているプラグを動かして、亀頭をぐりぐりと弄る。
その少年がイクと同時にクロトもビクリと身体を震わしてコテンと脱力した。ベルに支えられる。

「あの子がいいの?」

クロトはふふと笑った。
あぁ、面白い。

「あれ、俺の弟だね」

ベルはさらりと言ったクロトに目を見張った。

「あらまぁ。運が悪いのね。兄弟揃って」
「…いいと思うけど?俺はしあわせだもの」
「それならいいわ。どうする?アタシのところであればちゃんと面倒みてあげられるわよ?飼い主も選んであげられる」
クロトは少しだけ考えた。
あれは弟だ。
可愛い、可愛い弟。
「弟だものね。いろいろ教えてあげないとね……うん、あれ買って?」

わかったわ、とベルは布の隙間から手を出して最高額をつけた。





少年は静かな暗闇の中、目を覚ました。
首輪が首に擦れる。
服は薄い布でできた肌触りの良いチュニックのみで、少し動けば下半身が露出された。
身体中にある拘束跡と赤いアザに何をされていたのかを全て思い出して絶望した。
今は拘束はされていない。いまなら逃げられる。
そう思った矢先に声がかかる。

「あぁ、起きたかい?おはよう」

その声は大好きな兄の声だ。

「おにいさま?」
「そうだよ。お前のお兄様だよ。身体はつらくないかい?」
「お兄様!お兄様!あぁやっと会えた!よかった生きていた!」

涙が止まらない。

「お兄様が助けてくださったんですね!?あの地獄から!お兄様を助けにきたのに、逆にボクが助けてもらうことになるなんて…恥ずかしい限りです。さぁお兄様、家に帰りましょう!お兄様?」

顔だけしかみえていなかった。その顔は変わらない兄の穏やかな笑顔だった。
だが身体は。身体の線がわかる薄い布だけ。
露出した至る所に赤いアザがあった。
下半身は勃起して布を押し上げていた。
逃げようと思った。けれど、すぐに兄に、兄のようなモノに捕まってしまう。
力でこの人に敵うわけがない。
少し寂しそうに笑う顔も兄のもの。

「怖がらなくて良い。お兄様はお前の味方だもの。お兄様が知っていることを全部おしえてあげる。だから、よく聞きなさい」

『お兄様はお前の味方だもの。お兄様が知っていることを全部教えてあげる』
それは幼い頃、自分だけ剣技を習うことが出来なくて泣きじゃくった自分に歳の離れた兄が優しく言ってくれた言葉だった。

涙を拭う顔は、それは間違いなく兄で、「お兄様」という言葉は兄の口に飲み込まれた。
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