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ううう。俺は次の朝(というかもう昼前だが)目覚めるとそう唸った。
おしりが、おしりの穴がぼってりする。未だに何かを咥え込んでいるような違和感があるのだ。ようやくプラグから解放されたと喜んでたのに、こんな未来が待っているなんて予想もしなかった。
「もも」
先に起きた唯継が、まだベッドから出てこない俺に温かいココアを淹れてくれた。
丸メガネをほんのり曇らせながら、あちあちとココアをちょっとずつ飲む俺を唯継はベッドに腰掛け甘い視線で見つめてくる。
「今日は一日ここにいていいからね」
「うん」
俺は素直にうなずいた。まあそこまで重症でもないけど甘えとく。
「ねえ、もも」
唯継が俺の手から飲みかけのココアの入ったマグを取り、隣のチェストの上に置いた。それから俺の横から肩を抱き、整った顔を近づけてくる。
「これからここで一緒に暮らさない?」
「え、‥え?い、一緒に?」
「今もほぼ毎日僕の家に泊まってるし、むしろちゃんとこっちに引っ越してきなよ」
でも毎日来てたのはプラグで拡張するのを手伝ってもらうだけだからだし、処女喪失という大仕事を終えた俺はしばらくけつに何も挿れない平穏な日々を送りたい。
「うん。考えとく」
俺の返事に唯継が目に見えてしゅんとした。見えないミミとしっぽがうなだれてる。美形男前のわんこ可愛すぎるだろ。ぎゅっとして「やっぱり一緒に暮らそ」ってつい言いたくなる。
でもここで絆されちゃだめだ。俺のおしりの平穏には代えられん。その時、俺のお腹がぐうぐう鳴ったのでついでに話を変えた。
「唯継、おなかへった」
唯継はすぐに顔を上げると「何食べたい?何か作ろっか?」ってすりすりしてくるから「唯継が作る以外のなにか」ってたわいないおしゃべりをしながらその日は過ぎて行った。
そして俺のおしりと日常に平穏が戻ってきた。───はずだった。
目の前にはちょっと不満気な顔の唯継。場所は図書館。俺の職場だ。そんで図書館のすみっこで俺たちはひそひそ話。
「もも、なんで連絡くれないの」
「ちゃんと返事してただろ」
まあ唯継とやった後の連絡はちょっと適当だった。ひと言だけとか、スタンプのみとか。だってちゃんと返すと「図書館まで迎えにいくね」ってなって「泊まってて」ってなって「しよっか」ってなるの目に見えてたから。俺は唯継に弱いし、唯継は紳士風吹かせつつも押しもテクも強いから、俺はそうなったら断る自信がなかった。
そしたら唯継、なんも連絡せずに仕事場にやってきた。
時刻はちょうどお昼。昼休みかもしれないけど唯継ってほんとヒマだな。唯継は土日も休みだし、さらに俺が平日の休みの日は、ほぼほぼそれに合わせて休みを取っている。
昼間の図書館という予想外の時間帯に格好良く登場してきた唯継に俺といつメン(枝多さんと土田ちゃん)は驚いた。
俺を見つけてちょっとすねた顔の唯継がかわいくてつい目を奪われる。それで唯継が俺の方に話しかけにきたから、これはいつメンに聞かれたら恥ずかしいやつだぞ。と思って図書館の隅の方まで唯継を引っ張ってった。
ここで最初の会話に戻る。誰もいない閑散とした書架の隙間で、唯継は連絡を俺がちゃんと返さないことを不満気に言ってきた。
「もも、なんで連絡くれないの」
「ちゃんと返事してただろ」
適当に返事する俺に、唯継は逃すまいとするみたく本棚に両腕を付き、その間に俺を挟み込むと俺の適当な態度は責めず、優しい言葉で誘ってきた。
「今日、うち来る?」
「今日は姉ちゃんの誕生日で家族でカニ食べるから即帰る」
唯継の美しい顔を見ないようにさっ、と目を逸らし、どうでもいい嘘をつく俺。姉ちゃんの誕生日は冬だし、カニを食べる予定もない。
「じゃあ明日、また迎えに来てもいい?」
「あ、明日はいつメンとすき焼き食べに行く約束だからだめ」
そんな予定も全くない。
そしたら唯継が凛々しい眉を下げて真剣な目で見つめてきた。
「もも、寂しいよ」
目の前いっぱい唯継の悲しげな顔。しかしあまりにもその姿もかっこいい。俺はずれた丸メガネからそれをぽう、と見て心奪われていたが、唯継の言葉に我に帰る。
い、いかん、そうか。つい俺の身勝手で唯継に寂しい思いをさせてしまっていたのか。唯継にそう言われてやっと俺はそれに気がついた。でも、俺だってこわいんだ。
やった次の日はおしりの穴の腫れとプラグからの解放感で平穏を願った俺だったが、落ち着いてくると夜な夜なおしりの奥が疼くことに気がついてしまったのだ。
正直、唯継とのセックスはすごく良かった。あの日ポジション決めで女役を選んだ俺に感謝したいと心の隅で思ったくらいだ。
でも、だからこそのめり込むのがこわいのだ。俺と唯継は一緒に暮らし始めたら、絶対、多分、毎日やる。断言できる。
そしたら俺は唯継にはまって、抜け出せなくなるかもしれない。でも唯継は格好いいし、すっごくもてる。だからいつ俺に飽きても不思議じゃない。俺はおしりだけゆるゆるになって唯継に振られるのがこわい。
そんで一人寂しくおしりの穴にアナルパールをぬこぬこ挿れてる自分を想像すると震えた。あんまりにも震えるから唯継から少し距離を取ったんだ。
「ごめん、唯継」
俺は覚悟が足りないな。俺は誰かと付き合うのが初めてで、しかも相手はこんな人生において滅多に見ない美形で、そんで男で。正直俺はびびってる。
でも男と付き合うのが初めてなのは唯継だって同じなのに。なのに、唯継は俺をおじいちゃんに紹介もしてくれたし、一緒に住もうとも言ってくれた。だけど俺はそれに応えず連絡をおろそかにした。反省だ。唯継が離れてしまうのがこわいくせに、自分から唯継を遠ざけ、そのせいで唯継に寂しい思いをさせてしまったのだから。
でも、それなのに唯継はちゃんと俺に会いに来てくれて、寂しいって言ってくれる。
俺は唯継の腕の間で、申し訳無さから足のつま先同士をもじもじとこすりあわせた。ばかな俺を許してほしい。
「やっぱり今日、唯継んち泊まりに行く‥」
唯継は俺の気持ちを知るとほっとした顔をしたが、わざとにやっと笑って適当に考えた断りの文句の心配をしてきた。
「お姉さんの誕生日はいいの?」
「ちゃんとした誕生日、2月10日にやるからいいよ」
姉ちゃんの本当の誕生日だ。ふふっ、っていつも見たく微笑んでくれる。それでまた確認してきた。
「明日も出掛けなくていいよね?」
「‥うん。俺がメンバーから外れてもすき焼きの美味さは変わらないから」
そもそもいつメンとすき焼き行く約束なんてしないし。どうせ唯継にはこんなわかりやすい嘘とっくにバレているんだろう。
「俺、仕事戻んなきゃ」
唯継に挟まれた腕から抜けようとすると肩をふわっと持たれた。
「キスしたら戻っていいよ」
唯継の腕が俺の腰に周り、支えるような体勢になる。
「この前は僕からキスしたから今度はももからしてほしい」
この前ってのは付き合う前に図書館で唯継が俺にしたほっぺにキスのことだ。
俺は少し戸惑いながらもきょろきょろとあたりを見回すと少しつま先で背伸びをし、鼻の頭にキスをした。
「続きは帰ってからな」
照れながら唯継の腕をすり抜け、カウンター業務に戻る。しばらくすると唯継が俺に一冊、本の貸し出しをお願いしてきた。
「また仕事終わったら迎えに来るね。それまでにこれ読んで今後の参考にする」
借りた本を目の前にすっと持ち上げる唯継。
隣でずっと俺たちのやり取りをそっと見ていた土田ちゃんが小さな声でぽつりとつぶやいた。
「‥ゼクシィ」
おしりが、おしりの穴がぼってりする。未だに何かを咥え込んでいるような違和感があるのだ。ようやくプラグから解放されたと喜んでたのに、こんな未来が待っているなんて予想もしなかった。
「もも」
先に起きた唯継が、まだベッドから出てこない俺に温かいココアを淹れてくれた。
丸メガネをほんのり曇らせながら、あちあちとココアをちょっとずつ飲む俺を唯継はベッドに腰掛け甘い視線で見つめてくる。
「今日は一日ここにいていいからね」
「うん」
俺は素直にうなずいた。まあそこまで重症でもないけど甘えとく。
「ねえ、もも」
唯継が俺の手から飲みかけのココアの入ったマグを取り、隣のチェストの上に置いた。それから俺の横から肩を抱き、整った顔を近づけてくる。
「これからここで一緒に暮らさない?」
「え、‥え?い、一緒に?」
「今もほぼ毎日僕の家に泊まってるし、むしろちゃんとこっちに引っ越してきなよ」
でも毎日来てたのはプラグで拡張するのを手伝ってもらうだけだからだし、処女喪失という大仕事を終えた俺はしばらくけつに何も挿れない平穏な日々を送りたい。
「うん。考えとく」
俺の返事に唯継が目に見えてしゅんとした。見えないミミとしっぽがうなだれてる。美形男前のわんこ可愛すぎるだろ。ぎゅっとして「やっぱり一緒に暮らそ」ってつい言いたくなる。
でもここで絆されちゃだめだ。俺のおしりの平穏には代えられん。その時、俺のお腹がぐうぐう鳴ったのでついでに話を変えた。
「唯継、おなかへった」
唯継はすぐに顔を上げると「何食べたい?何か作ろっか?」ってすりすりしてくるから「唯継が作る以外のなにか」ってたわいないおしゃべりをしながらその日は過ぎて行った。
そして俺のおしりと日常に平穏が戻ってきた。───はずだった。
目の前にはちょっと不満気な顔の唯継。場所は図書館。俺の職場だ。そんで図書館のすみっこで俺たちはひそひそ話。
「もも、なんで連絡くれないの」
「ちゃんと返事してただろ」
まあ唯継とやった後の連絡はちょっと適当だった。ひと言だけとか、スタンプのみとか。だってちゃんと返すと「図書館まで迎えにいくね」ってなって「泊まってて」ってなって「しよっか」ってなるの目に見えてたから。俺は唯継に弱いし、唯継は紳士風吹かせつつも押しもテクも強いから、俺はそうなったら断る自信がなかった。
そしたら唯継、なんも連絡せずに仕事場にやってきた。
時刻はちょうどお昼。昼休みかもしれないけど唯継ってほんとヒマだな。唯継は土日も休みだし、さらに俺が平日の休みの日は、ほぼほぼそれに合わせて休みを取っている。
昼間の図書館という予想外の時間帯に格好良く登場してきた唯継に俺といつメン(枝多さんと土田ちゃん)は驚いた。
俺を見つけてちょっとすねた顔の唯継がかわいくてつい目を奪われる。それで唯継が俺の方に話しかけにきたから、これはいつメンに聞かれたら恥ずかしいやつだぞ。と思って図書館の隅の方まで唯継を引っ張ってった。
ここで最初の会話に戻る。誰もいない閑散とした書架の隙間で、唯継は連絡を俺がちゃんと返さないことを不満気に言ってきた。
「もも、なんで連絡くれないの」
「ちゃんと返事してただろ」
適当に返事する俺に、唯継は逃すまいとするみたく本棚に両腕を付き、その間に俺を挟み込むと俺の適当な態度は責めず、優しい言葉で誘ってきた。
「今日、うち来る?」
「今日は姉ちゃんの誕生日で家族でカニ食べるから即帰る」
唯継の美しい顔を見ないようにさっ、と目を逸らし、どうでもいい嘘をつく俺。姉ちゃんの誕生日は冬だし、カニを食べる予定もない。
「じゃあ明日、また迎えに来てもいい?」
「あ、明日はいつメンとすき焼き食べに行く約束だからだめ」
そんな予定も全くない。
そしたら唯継が凛々しい眉を下げて真剣な目で見つめてきた。
「もも、寂しいよ」
目の前いっぱい唯継の悲しげな顔。しかしあまりにもその姿もかっこいい。俺はずれた丸メガネからそれをぽう、と見て心奪われていたが、唯継の言葉に我に帰る。
い、いかん、そうか。つい俺の身勝手で唯継に寂しい思いをさせてしまっていたのか。唯継にそう言われてやっと俺はそれに気がついた。でも、俺だってこわいんだ。
やった次の日はおしりの穴の腫れとプラグからの解放感で平穏を願った俺だったが、落ち着いてくると夜な夜なおしりの奥が疼くことに気がついてしまったのだ。
正直、唯継とのセックスはすごく良かった。あの日ポジション決めで女役を選んだ俺に感謝したいと心の隅で思ったくらいだ。
でも、だからこそのめり込むのがこわいのだ。俺と唯継は一緒に暮らし始めたら、絶対、多分、毎日やる。断言できる。
そしたら俺は唯継にはまって、抜け出せなくなるかもしれない。でも唯継は格好いいし、すっごくもてる。だからいつ俺に飽きても不思議じゃない。俺はおしりだけゆるゆるになって唯継に振られるのがこわい。
そんで一人寂しくおしりの穴にアナルパールをぬこぬこ挿れてる自分を想像すると震えた。あんまりにも震えるから唯継から少し距離を取ったんだ。
「ごめん、唯継」
俺は覚悟が足りないな。俺は誰かと付き合うのが初めてで、しかも相手はこんな人生において滅多に見ない美形で、そんで男で。正直俺はびびってる。
でも男と付き合うのが初めてなのは唯継だって同じなのに。なのに、唯継は俺をおじいちゃんに紹介もしてくれたし、一緒に住もうとも言ってくれた。だけど俺はそれに応えず連絡をおろそかにした。反省だ。唯継が離れてしまうのがこわいくせに、自分から唯継を遠ざけ、そのせいで唯継に寂しい思いをさせてしまったのだから。
でも、それなのに唯継はちゃんと俺に会いに来てくれて、寂しいって言ってくれる。
俺は唯継の腕の間で、申し訳無さから足のつま先同士をもじもじとこすりあわせた。ばかな俺を許してほしい。
「やっぱり今日、唯継んち泊まりに行く‥」
唯継は俺の気持ちを知るとほっとした顔をしたが、わざとにやっと笑って適当に考えた断りの文句の心配をしてきた。
「お姉さんの誕生日はいいの?」
「ちゃんとした誕生日、2月10日にやるからいいよ」
姉ちゃんの本当の誕生日だ。ふふっ、っていつも見たく微笑んでくれる。それでまた確認してきた。
「明日も出掛けなくていいよね?」
「‥うん。俺がメンバーから外れてもすき焼きの美味さは変わらないから」
そもそもいつメンとすき焼き行く約束なんてしないし。どうせ唯継にはこんなわかりやすい嘘とっくにバレているんだろう。
「俺、仕事戻んなきゃ」
唯継に挟まれた腕から抜けようとすると肩をふわっと持たれた。
「キスしたら戻っていいよ」
唯継の腕が俺の腰に周り、支えるような体勢になる。
「この前は僕からキスしたから今度はももからしてほしい」
この前ってのは付き合う前に図書館で唯継が俺にしたほっぺにキスのことだ。
俺は少し戸惑いながらもきょろきょろとあたりを見回すと少しつま先で背伸びをし、鼻の頭にキスをした。
「続きは帰ってからな」
照れながら唯継の腕をすり抜け、カウンター業務に戻る。しばらくすると唯継が俺に一冊、本の貸し出しをお願いしてきた。
「また仕事終わったら迎えに来るね。それまでにこれ読んで今後の参考にする」
借りた本を目の前にすっと持ち上げる唯継。
隣でずっと俺たちのやり取りをそっと見ていた土田ちゃんが小さな声でぽつりとつぶやいた。
「‥ゼクシィ」
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