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第4章:幸せな夫婦の誓い
4-2.王宮からの招集――挙式の実施許可
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2.王宮からの招集――挙式の実施許可
そんなある朝、エドワードのもとに王宮からの召集がかかった。内容は「クラレンス侯爵家とローウェル家の婚姻手続き、および領地再編に関する説明を行う場を設ける」というもの。つまり、私たちの婚姻を正式に王家が認める手続きでもあり、さらにエドワードが申し出ている“ローウェル家の借金肩代わり”についても、国としての承認を得る場になるとのことだ。
「……やはり、形式的な手続きとはいえ、王宮からのお墨付きをもらうのは大切だろう。特に今回のように大きな財政移動が絡む場合、国王陛下の勅許が必要になるからね」
エドワードがそう説明してくれたが、私にとっては王宮という場所自体が遠い世界の話だった。だが、エドワードは若くして政治界や経済界で頭角を現している貴族だ。国王陛下からの信頼も厚く、こういう大きな案件でも堂々と提案できる立場にある。彼の領地は王都から離れているものの、彼自身は要所要所で王宮を訪れ、国政の場でも仕事をしているのだ。
「挙式の時期についても、その場で正式に認められる見込みです。私としては、あまり先延ばしにしたくありませんが……王宮がどう出るかで多少調整が必要になるかもしれません」
エドワードの瞳には、はっきりとした意志が宿っている。私を守り抜くために、そして私との結婚を確固たるものにするために、彼はどんな手段も惜しまない。そういう覚悟が伝わってきて、私の胸はまた熱くなる。
「私も……お供してよろしいのでしょうか。王宮なんて、まだ足を踏み入れたことがありませんけれど」
「もちろん。むしろ、あなたにこそ来てもらいたい。婚姻の当事者ですからね。――ただ、ああいう場所はどうしても堅苦しい。気を張りすぎないようにしてください」
優しく笑いかけるエドワードに、私は微笑みで返す。以前なら「王宮に行くなんて、恐れ多くて無理!」と怯えたかもしれない。だが今の私は違う。エドワードと一緒なら、きっと大丈夫。どんな場所へ行っても彼がそばにいてくれるとわかっている。それだけで、私は強くなれる気がしていた。
王宮への道中
王宮へ向かう日は快晴だった。青い空がどこまでも広がり、馬車から見える街の様子も活気に満ちている。エドワードの領地を出発し、しばらく平野を進んだのち、都市部に近づくにつれて道路がしっかりと整備され、建物の密度も増していった。
私は絢爛豪華な大通りを初めて目にする。市場には色とりどりの商人たちが軒を連ね、人々が忙しなく行き交っている。王宮が近いこともあって、貴族の馬車が絶えず通りを行き来しており、まさに“国の中心”という印象だ。
「すごい……私、こんなに大勢の人や店を見たのは初めてです。ローウェル家の領地では、ここまで大きな市場はないですから」
窓の外に釘づけになる私に、エドワードは楽しそうに笑う。
「王都は商業の要衝だからね。いずれあなたも、ここで開かれる社交界や舞踏会に出席することになる。正直、面倒な行事も多いけれど……あなたにはきっと刺激的な世界だろう」
「うふふ……でも、あなたとなら心強いです。すべてが新しい体験になるけれど、あなたが一緒にいてくれれば私も臆せず楽しめそう」
すると、エドワードは「それは嬉しいね」と言いながら、私の手をそっと握り返す。馬車の中で隣に並ぶだけでも、何だか胸の奥が暖かくなる。いったい私たちの結婚生活はどんなものになるのだろう――想像するだけで笑みがこぼれてしまう。
国王陛下への謁見
やがて馬車は王宮の正門へ着き、エドワードの名を告げると、兵士たちは慣れた様子で門を開いた。王宮の敷地内に入ると、今度は中庭のロータリーに沿って進み、正面玄関の近くで停車する。そこには、エドワードの“王宮における”秘書や従者たちが待機しており、私たちを出迎えてくれた。
私は促されるまま、大理石の階段を上り、荘厳な彫刻が施された扉の奥に足を踏み入れる。そこは王宮の広々としたホールで、天井の高さや装飾の豪華さに息を呑む。花柄のカーペットや黄金の柱、壁に飾られた巨大なタペストリーが、まさに王宮の格式を物語っていた。
奥へ進むと、さらに美しい調度品が並ぶ回廊を抜け、やがて玉座の間の手前に位置する控えの間へと通される。ここで国王陛下や大臣たちとの面会に備える形だ。私は緊張して肩がこわばるのを感じながらも、エドワードの隣で姿勢を正す。彼は終始落ち着き払っており、その余裕ある表情が私にも少しだけ安堵を与えてくれる。
「大丈夫、特に難しいことを聞かれるわけではないはずだ。私が話すから、あなたは安心して隣にいてくれればいい」
「はい……ありがとうございます」
声を潜めてやり取りしていると、侍従が扉の向こうから現れて、私たちを招き入れた。いよいよ国王陛下への謁見が始まる。
玉座の間に入ると、奥には玉座があり、その上に国王陛下が鎮座していた。陛下は私よりもずっと年配の男性で、伝え聞くところによれば穏健な人柄だという。周囲には数名の重臣たちが控えており、私は彼らの視線を一身に浴びているのを意識せずにいられない。
エドワードが深く一礼し、「クラレンス侯爵、ならびにその婚約者、アマンダ・ローウェルと申します」と名乗る。私も同じように深くお辞儀をする。すると陛下は柔和な笑みを浮かべ、私たちを見下ろしながら口を開いた。
「よく来てくれた、エドワード・クラレンス。……そなたが持ち込んだ要件について、先に文書を読ませてもらった。大きな投資が絡むようだが、ローウェル家の負債を引き受ける代わりに、結婚を円満に進めたいという趣旨で間違いないか?」
「はい、そのとおりです。私としては、ローウェル家の財政を健全化しつつ、アマンダ・ローウェルとの結婚を正式なものとしたいのです。すでにローウェル公爵も同意済みで、当人であるアマンダ・ローウェルも望んでおります」
エドワードは淡々と要点を述べているが、私が思い返せば、ここに至るまでには多くの障壁があった。父との対立、ランドルフ家とのいざこざ……それらをすべて解決してこの場に立てているのが奇跡のようだ。
「……ローウェル家とクラレンス家の縁組はもともと政略結婚として取り沙汰されていたが、どうやらそなたたちの間には深い信頼があるようだな。先ほどの提出書類を見ても、互いを尊重した条件が揃っている。よろしい、私としても異議はない」
陛下がそう告げると、重臣たちの間から一人が進み出て、「王家としても問題はないかと存じます」と報告する。どうやら何事も滞りなく進んでいるらしい。
そして、国王陛下は私に向けて視線を落とし、「アマンダ・ローウェルよ」と静かに声をかけてきた。
「……そなたにとって、この結婚は本当に望むものか? もちろん政略の面もあろうが、私は無理矢理強要されるような縁組は推奨しない。もし何か問題があるのなら、今のうちに正直に言うがよい」
その問いかけは真摯なものだった。私は思わず緊張しつつも、しっかりと顔を上げる。ここでエドワードの顔色ばかり気にしていたら、私の本意が伝わらないかもしれない。
私は心を落ち着け、少し声を張って答えた。
「わたくし、アマンダ・ローウェルは……この結婚を誰よりも望んでおります。エドワード・クラレンス殿は、私の意志と尊厳を尊重してくださり、苦しい状況からも救い出してくださった方です。政略による縁組の域を超えて、私は彼と共に生きたいと願っています」
玉座の間が一瞬静まり返る。私は緊張で胸が苦しかったが、エドワードの顔をちらりと見ると、彼は優しく微笑んでくれた。その瞬間、不安は吹き飛んでしまう。何があっても、私たちは互いを信じていられる――そんな安心感がある。
国王陛下は満足そうにうなずき、玉座の脇に控えていた侍従へ目配せする。侍従は書状を取り出し、陛下が自らペンを走らせて署名を入れた。どうやら国王の“勅許”が与えられたようだ。
「では、よかろう。アマンダ・ローウェルとエドワード・クラレンスは、正式に婚姻を許可する。手続きを滞りなく進めるがいい。――おめでとう」
「ははっ……! ありがとうございます、陛下」
エドワードは深い礼をとり、私も慌てて頭を下げる。こうして私たちの結婚は、国王陛下の承認を得て公的にも正式なものとなった。心の奥底から湧き上がる喜びが、全身を温めてくれるようだ。
玉座の間を下がるとき、エドワードがそっと私の耳元で囁く。
「これで、もう誰にも文句は言わせない。晴れて、私たちの未来は確定だね」
その言葉に、私はこみ上げるものを必死に押さえながら微笑んだ。
そんなある朝、エドワードのもとに王宮からの召集がかかった。内容は「クラレンス侯爵家とローウェル家の婚姻手続き、および領地再編に関する説明を行う場を設ける」というもの。つまり、私たちの婚姻を正式に王家が認める手続きでもあり、さらにエドワードが申し出ている“ローウェル家の借金肩代わり”についても、国としての承認を得る場になるとのことだ。
「……やはり、形式的な手続きとはいえ、王宮からのお墨付きをもらうのは大切だろう。特に今回のように大きな財政移動が絡む場合、国王陛下の勅許が必要になるからね」
エドワードがそう説明してくれたが、私にとっては王宮という場所自体が遠い世界の話だった。だが、エドワードは若くして政治界や経済界で頭角を現している貴族だ。国王陛下からの信頼も厚く、こういう大きな案件でも堂々と提案できる立場にある。彼の領地は王都から離れているものの、彼自身は要所要所で王宮を訪れ、国政の場でも仕事をしているのだ。
「挙式の時期についても、その場で正式に認められる見込みです。私としては、あまり先延ばしにしたくありませんが……王宮がどう出るかで多少調整が必要になるかもしれません」
エドワードの瞳には、はっきりとした意志が宿っている。私を守り抜くために、そして私との結婚を確固たるものにするために、彼はどんな手段も惜しまない。そういう覚悟が伝わってきて、私の胸はまた熱くなる。
「私も……お供してよろしいのでしょうか。王宮なんて、まだ足を踏み入れたことがありませんけれど」
「もちろん。むしろ、あなたにこそ来てもらいたい。婚姻の当事者ですからね。――ただ、ああいう場所はどうしても堅苦しい。気を張りすぎないようにしてください」
優しく笑いかけるエドワードに、私は微笑みで返す。以前なら「王宮に行くなんて、恐れ多くて無理!」と怯えたかもしれない。だが今の私は違う。エドワードと一緒なら、きっと大丈夫。どんな場所へ行っても彼がそばにいてくれるとわかっている。それだけで、私は強くなれる気がしていた。
王宮への道中
王宮へ向かう日は快晴だった。青い空がどこまでも広がり、馬車から見える街の様子も活気に満ちている。エドワードの領地を出発し、しばらく平野を進んだのち、都市部に近づくにつれて道路がしっかりと整備され、建物の密度も増していった。
私は絢爛豪華な大通りを初めて目にする。市場には色とりどりの商人たちが軒を連ね、人々が忙しなく行き交っている。王宮が近いこともあって、貴族の馬車が絶えず通りを行き来しており、まさに“国の中心”という印象だ。
「すごい……私、こんなに大勢の人や店を見たのは初めてです。ローウェル家の領地では、ここまで大きな市場はないですから」
窓の外に釘づけになる私に、エドワードは楽しそうに笑う。
「王都は商業の要衝だからね。いずれあなたも、ここで開かれる社交界や舞踏会に出席することになる。正直、面倒な行事も多いけれど……あなたにはきっと刺激的な世界だろう」
「うふふ……でも、あなたとなら心強いです。すべてが新しい体験になるけれど、あなたが一緒にいてくれれば私も臆せず楽しめそう」
すると、エドワードは「それは嬉しいね」と言いながら、私の手をそっと握り返す。馬車の中で隣に並ぶだけでも、何だか胸の奥が暖かくなる。いったい私たちの結婚生活はどんなものになるのだろう――想像するだけで笑みがこぼれてしまう。
国王陛下への謁見
やがて馬車は王宮の正門へ着き、エドワードの名を告げると、兵士たちは慣れた様子で門を開いた。王宮の敷地内に入ると、今度は中庭のロータリーに沿って進み、正面玄関の近くで停車する。そこには、エドワードの“王宮における”秘書や従者たちが待機しており、私たちを出迎えてくれた。
私は促されるまま、大理石の階段を上り、荘厳な彫刻が施された扉の奥に足を踏み入れる。そこは王宮の広々としたホールで、天井の高さや装飾の豪華さに息を呑む。花柄のカーペットや黄金の柱、壁に飾られた巨大なタペストリーが、まさに王宮の格式を物語っていた。
奥へ進むと、さらに美しい調度品が並ぶ回廊を抜け、やがて玉座の間の手前に位置する控えの間へと通される。ここで国王陛下や大臣たちとの面会に備える形だ。私は緊張して肩がこわばるのを感じながらも、エドワードの隣で姿勢を正す。彼は終始落ち着き払っており、その余裕ある表情が私にも少しだけ安堵を与えてくれる。
「大丈夫、特に難しいことを聞かれるわけではないはずだ。私が話すから、あなたは安心して隣にいてくれればいい」
「はい……ありがとうございます」
声を潜めてやり取りしていると、侍従が扉の向こうから現れて、私たちを招き入れた。いよいよ国王陛下への謁見が始まる。
玉座の間に入ると、奥には玉座があり、その上に国王陛下が鎮座していた。陛下は私よりもずっと年配の男性で、伝え聞くところによれば穏健な人柄だという。周囲には数名の重臣たちが控えており、私は彼らの視線を一身に浴びているのを意識せずにいられない。
エドワードが深く一礼し、「クラレンス侯爵、ならびにその婚約者、アマンダ・ローウェルと申します」と名乗る。私も同じように深くお辞儀をする。すると陛下は柔和な笑みを浮かべ、私たちを見下ろしながら口を開いた。
「よく来てくれた、エドワード・クラレンス。……そなたが持ち込んだ要件について、先に文書を読ませてもらった。大きな投資が絡むようだが、ローウェル家の負債を引き受ける代わりに、結婚を円満に進めたいという趣旨で間違いないか?」
「はい、そのとおりです。私としては、ローウェル家の財政を健全化しつつ、アマンダ・ローウェルとの結婚を正式なものとしたいのです。すでにローウェル公爵も同意済みで、当人であるアマンダ・ローウェルも望んでおります」
エドワードは淡々と要点を述べているが、私が思い返せば、ここに至るまでには多くの障壁があった。父との対立、ランドルフ家とのいざこざ……それらをすべて解決してこの場に立てているのが奇跡のようだ。
「……ローウェル家とクラレンス家の縁組はもともと政略結婚として取り沙汰されていたが、どうやらそなたたちの間には深い信頼があるようだな。先ほどの提出書類を見ても、互いを尊重した条件が揃っている。よろしい、私としても異議はない」
陛下がそう告げると、重臣たちの間から一人が進み出て、「王家としても問題はないかと存じます」と報告する。どうやら何事も滞りなく進んでいるらしい。
そして、国王陛下は私に向けて視線を落とし、「アマンダ・ローウェルよ」と静かに声をかけてきた。
「……そなたにとって、この結婚は本当に望むものか? もちろん政略の面もあろうが、私は無理矢理強要されるような縁組は推奨しない。もし何か問題があるのなら、今のうちに正直に言うがよい」
その問いかけは真摯なものだった。私は思わず緊張しつつも、しっかりと顔を上げる。ここでエドワードの顔色ばかり気にしていたら、私の本意が伝わらないかもしれない。
私は心を落ち着け、少し声を張って答えた。
「わたくし、アマンダ・ローウェルは……この結婚を誰よりも望んでおります。エドワード・クラレンス殿は、私の意志と尊厳を尊重してくださり、苦しい状況からも救い出してくださった方です。政略による縁組の域を超えて、私は彼と共に生きたいと願っています」
玉座の間が一瞬静まり返る。私は緊張で胸が苦しかったが、エドワードの顔をちらりと見ると、彼は優しく微笑んでくれた。その瞬間、不安は吹き飛んでしまう。何があっても、私たちは互いを信じていられる――そんな安心感がある。
国王陛下は満足そうにうなずき、玉座の脇に控えていた侍従へ目配せする。侍従は書状を取り出し、陛下が自らペンを走らせて署名を入れた。どうやら国王の“勅許”が与えられたようだ。
「では、よかろう。アマンダ・ローウェルとエドワード・クラレンスは、正式に婚姻を許可する。手続きを滞りなく進めるがいい。――おめでとう」
「ははっ……! ありがとうございます、陛下」
エドワードは深い礼をとり、私も慌てて頭を下げる。こうして私たちの結婚は、国王陛下の承認を得て公的にも正式なものとなった。心の奥底から湧き上がる喜びが、全身を温めてくれるようだ。
玉座の間を下がるとき、エドワードがそっと私の耳元で囁く。
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