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「そこまで分かってるなら、もう思うままに動けばいいじゃないですか。今まで全部我慢して、お嬢様は自分を押し殺してきたんですから。まぁ、問題はしばらく山積みのままですが、自分が思うように、感じた通りに生きてみたらいいんですよ」
自分が思うように、感じたままで……か。確かに、なかったと思う。それこそ、幼い頃のマルクと喧嘩していた時ぐらいじゃないかしら。
自分の気持ちに素直に行動していたのって。たとえそれが貴族令嬢っぽくはなかったとしても、確かにあの時以上に自分らしくなんて振る舞ったことはなかったかもしれない。
でももう今は何も私を縛るものはない。ユノンが言うように、この胸の中にある感情を育ててみてもいいのかもしれない。
だって、私自身がそうしたいって強く思っているから。
「迷惑にならないかしら……」
「それは誰にとっての迷惑ってことですか?」
「ユノンとかマルク様とか……私にお大事な人たちにとって、よ」
「そういうのをぐずぐず考えるからダメなんですよ。他人のことなら思い切りがいいのに、本当に自分のこととなるとダメですね」
「だって……」
「たまには迷惑かけたっていいじゃないですか。お嬢様にとって大事だと思う人たちは、きっとその人たちにとってお嬢様のコトは同じように大事だと思いますよ。だから大丈夫です。そんなことぐらいで誰も文句を言う人なんていませんから」
「そうかな」
「そうですよ。お嬢様が大切だと思う人たちの幸せを祈るように、あたしたちだってお嬢様の幸せを願っているんですから」
同じ……そう思いは同じ。
「遠慮ばっかりされるほうが、逆にこっちが恐縮しちゃいますからねー。今までダメだった分、存分に幸せになって下さいな」
「ユノン……」
そうね。もし逆の立場だったらって考えたら、私は大事な人たちの幸せを祈っていた。たとえ自分が幸せではなくたって。
そう願いことで、いつか自分も幸せになれたらいいなって思っていたから。
「それにあたしはお嬢様の相棒ですよ。どんなことでも一緒に戦いますし、傍にいるって誓ったじゃないですか。あだからあたしはいつだってお嬢様の幸せを願ってますよ」
「相棒……そうね。そうだったわね」
ユノンとの古い約束。本当はユノンのためにした約束だったのに、いつの間にかきっとそれはお互いになっていたのね。
一方通行なんかじゃなくて、ちゃんと通じてる。そうね。思ってくれる人がいる以上、私もちゃんと幸せにならないとね。
「ただ領地についたらやることはたくさんありますよー。それこそ、死ぬほど。覚悟しておいて下さいね」
「そうね。まずは街道の整備に、宿屋の設置。あとは農作物の状況確認と、冒険者ギルドへの訪問」
「それだけじゃなくて、民家の柵などの補強から水路の視察、あとはそれが全部終わったら計画の締めくくりがありますからね」
「ああ。一番のイベントがあったわね。でもそれは少し待って。今回、この婚約を逆手に取られても困るし、そこはマルク様に少し手を貸してもらおうと思うの」
「ああ、確かに……。婚約させないとか言い出されても困りますからね~」
「金に目がくらんでいるうちは、それはなさそうだけど」
「でもほら、あの方たちのことですからね。何考えているんだか分かったもんじゃないですよ」
「言えてる~」
「でしょう?」
「なんとかなるように、いろいろ頑張んないとね」
「悩む暇なくてちょうどいいんじゃないですか」
「あはははは。それね」
私とユノン、そしてほんの一部の人間だけが知る計画。今回のこの騒ぎのせいで、だいぶ予定よりも早まってしまったことが少しネックではあるけど、大方は問題ないでしょう。
私たちを乗せた馬車が高い木々の多い街道をガタガタと抜けて行く。木々の隙間から時折見える月は大きく、まるでこの先の成功を照らしてくれているように思えた。
自分が思うように、感じたままで……か。確かに、なかったと思う。それこそ、幼い頃のマルクと喧嘩していた時ぐらいじゃないかしら。
自分の気持ちに素直に行動していたのって。たとえそれが貴族令嬢っぽくはなかったとしても、確かにあの時以上に自分らしくなんて振る舞ったことはなかったかもしれない。
でももう今は何も私を縛るものはない。ユノンが言うように、この胸の中にある感情を育ててみてもいいのかもしれない。
だって、私自身がそうしたいって強く思っているから。
「迷惑にならないかしら……」
「それは誰にとっての迷惑ってことですか?」
「ユノンとかマルク様とか……私にお大事な人たちにとって、よ」
「そういうのをぐずぐず考えるからダメなんですよ。他人のことなら思い切りがいいのに、本当に自分のこととなるとダメですね」
「だって……」
「たまには迷惑かけたっていいじゃないですか。お嬢様にとって大事だと思う人たちは、きっとその人たちにとってお嬢様のコトは同じように大事だと思いますよ。だから大丈夫です。そんなことぐらいで誰も文句を言う人なんていませんから」
「そうかな」
「そうですよ。お嬢様が大切だと思う人たちの幸せを祈るように、あたしたちだってお嬢様の幸せを願っているんですから」
同じ……そう思いは同じ。
「遠慮ばっかりされるほうが、逆にこっちが恐縮しちゃいますからねー。今までダメだった分、存分に幸せになって下さいな」
「ユノン……」
そうね。もし逆の立場だったらって考えたら、私は大事な人たちの幸せを祈っていた。たとえ自分が幸せではなくたって。
そう願いことで、いつか自分も幸せになれたらいいなって思っていたから。
「それにあたしはお嬢様の相棒ですよ。どんなことでも一緒に戦いますし、傍にいるって誓ったじゃないですか。あだからあたしはいつだってお嬢様の幸せを願ってますよ」
「相棒……そうね。そうだったわね」
ユノンとの古い約束。本当はユノンのためにした約束だったのに、いつの間にかきっとそれはお互いになっていたのね。
一方通行なんかじゃなくて、ちゃんと通じてる。そうね。思ってくれる人がいる以上、私もちゃんと幸せにならないとね。
「ただ領地についたらやることはたくさんありますよー。それこそ、死ぬほど。覚悟しておいて下さいね」
「そうね。まずは街道の整備に、宿屋の設置。あとは農作物の状況確認と、冒険者ギルドへの訪問」
「それだけじゃなくて、民家の柵などの補強から水路の視察、あとはそれが全部終わったら計画の締めくくりがありますからね」
「ああ。一番のイベントがあったわね。でもそれは少し待って。今回、この婚約を逆手に取られても困るし、そこはマルク様に少し手を貸してもらおうと思うの」
「ああ、確かに……。婚約させないとか言い出されても困りますからね~」
「金に目がくらんでいるうちは、それはなさそうだけど」
「でもほら、あの方たちのことですからね。何考えているんだか分かったもんじゃないですよ」
「言えてる~」
「でしょう?」
「なんとかなるように、いろいろ頑張んないとね」
「悩む暇なくてちょうどいいんじゃないですか」
「あはははは。それね」
私とユノン、そしてほんの一部の人間だけが知る計画。今回のこの騒ぎのせいで、だいぶ予定よりも早まってしまったことが少しネックではあるけど、大方は問題ないでしょう。
私たちを乗せた馬車が高い木々の多い街道をガタガタと抜けて行く。木々の隙間から時折見える月は大きく、まるでこの先の成功を照らしてくれているように思えた。
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