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一度目の話
王命での婚約
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しかし、話し合いをしたいと両親に言う前に、私はお父様の執務室に呼ばれる。
そこには、お母様と義兄も呼ばれたようだった。
「アナ。先程、王宮から使者が来て、陛下からの手紙が届いた。
アナを王命でブレア公爵家の嫡男と婚約させたいと書いてある。」
「ブレア公爵家ですって?筆頭公爵家ではないですか!」
お母様がかなり驚いているのが分かった。
「殿下との婚約がなくなったとはいえ、アナは国王陛下と王妃殿下に可愛がられていたのは事実だし、そんなアナに、陛下がいい縁談を用意してくれたのかもしれない。」
「待って下さい!確かに名門のブレア公爵家との縁談は素晴らしいものかもしれませんが、アナの気持ちはどうなるのです?
アナと殿下は仲の良い婚約者同士だったのですよ!貴族は政略結婚が当たり前とはいえ、仲の良かった婚約者との関係がなくなったばかりで、心を痛めている時に、すぐに次の婚約者を王命で決められてしまうなんて、アナの気持ちを全く考えていないではないですか?
しかも、相手のブレア公爵令息は殿下の最側近ですよ?殿下の最側近と婚約したら、嫌でも殿下と顔を合わせる機会が沢山ありますよね?
私はその婚約には反対です!」
一体どうしたの?そんなに仲良くなかった義兄が、本気で私を心配しているように見えるわ。
「ルークは心配性ねぇ。
今は婚約解消したばかりで辛いかもしれないけれど、いずれは結婚しなければならないのよ?
殿下のことを忘れるために、ブレア公爵子息と友達から始めてみるのもいいかと思うわ。」
「いや、王命での縁談なのだから、余程の理由がなければ断れないだろう。
アナが幸せになれないと、あの殿下は心配すると思うぞ。殿下を安心させるためにも、今は辛くてもアナは前に進むべきだ。」
両親はこの縁談に前向きであるようだ。
そして両親よりも、義兄の方が私の気持ちに寄り添ってくれていることの方が驚きだった。
しかし私が望まなくても、義兄が反対したとしても…、結局は王命なのだ。
その数日後には、私はブレア公爵令息と王命でデートをすることになる。
「コールマン侯爵令嬢。貴女を名前で呼ぶことを許して欲しい。」
「はい。では、アナスタシアと…」
「アナスタシアという名前は素敵だが、私達は結婚するのだから、シアって呼んでもいいか?」
「ええ、勿論ですわ。みんな私をアナって呼びますので、シアって呼ばれるのは初めてですわね。
とても新鮮ですわ。」
今日私達は、二人で薔薇園に来ている。
国王陛下が婚約者同士で交流するようにと言われたようなのだ。
王命での婚約なのに、ブレア公爵令息は嫌じゃなかったのかしら?
嫌悪感みたいなのは感じないし、むしろ、積極的に私との距離を縮めようとしているような気もしなくはない。
でも筆頭公爵家の跡取りとして育ってきた人だから、政略結婚に抵抗はないだけなのかもしれない。
きっと王命だからと割り切っているだけね。この人は上位貴族らしく、自分の感情を表には絶対に出さないという印象だったし。
厳しい王妃教育で、やっと人前でのみ感情を我慢することが出来るようになった私とは全然違って、この方は優秀な人だものね。
「シア…。」
「はい?」
「シアも私を名前で呼んでくれないか?」
「…はい。アルマン様。」
「……アルって呼んでくれたら嬉しい。」
いきなり愛称呼びするの?この人がそんなことを言うとは思わなかったわ。
「……アル様?」
「君にそう呼んでもらえる日が来るとは思っていなかったよ。
自分でそのように呼んで欲しいと言いながら、実際に呼ばれると恥ずかしいものなのだな。」
あのブレア公爵令息の表情がいつもと違うような気がする…。
こんな風に笑う人だったのね。
「シア。私達は王命での結婚だが、私は君と結婚出来ることを嬉しく思っている。
私は殿下の側近をしているから、君がどれだけ王妃教育を頑張っていたのかも、君と殿下が愛し合っていて、二人がどんな気持ちで婚約解消になったのかも分かっているつもりだ。
今すぐに私を愛して欲しいなどと図々しいことは言わないが、少しずつ私に心を開いてくれないか?
私は君を幸せにすると約束する。」
いつもは感情の読めない表情をしているブレア公爵令息が、真剣な眼差しを向けてくる。
今はまだ殿下への未練があって辛いけど、王命で望まない婚約者を押しつけられた立場であるはずのブレア公爵令息がここまで言ってくれている…。
私はこの方を信じたいと思った。
「はい…。私はアル様を信じてついて行きたいと思います。
至らない私ですが、どうぞよろしくお願い致します。」
「ありがとう。」
ブレア公爵令息は、忙しい仕事の合間に、私の邸まで会いに来てくれたり、デートに誘ってくれたりするようになる。
真面目で誠実な方だと感じた。
きっとこの方となら、家族として仲良くやっていけるだろうと、その時の私は思っていた…。
そこには、お母様と義兄も呼ばれたようだった。
「アナ。先程、王宮から使者が来て、陛下からの手紙が届いた。
アナを王命でブレア公爵家の嫡男と婚約させたいと書いてある。」
「ブレア公爵家ですって?筆頭公爵家ではないですか!」
お母様がかなり驚いているのが分かった。
「殿下との婚約がなくなったとはいえ、アナは国王陛下と王妃殿下に可愛がられていたのは事実だし、そんなアナに、陛下がいい縁談を用意してくれたのかもしれない。」
「待って下さい!確かに名門のブレア公爵家との縁談は素晴らしいものかもしれませんが、アナの気持ちはどうなるのです?
アナと殿下は仲の良い婚約者同士だったのですよ!貴族は政略結婚が当たり前とはいえ、仲の良かった婚約者との関係がなくなったばかりで、心を痛めている時に、すぐに次の婚約者を王命で決められてしまうなんて、アナの気持ちを全く考えていないではないですか?
しかも、相手のブレア公爵令息は殿下の最側近ですよ?殿下の最側近と婚約したら、嫌でも殿下と顔を合わせる機会が沢山ありますよね?
私はその婚約には反対です!」
一体どうしたの?そんなに仲良くなかった義兄が、本気で私を心配しているように見えるわ。
「ルークは心配性ねぇ。
今は婚約解消したばかりで辛いかもしれないけれど、いずれは結婚しなければならないのよ?
殿下のことを忘れるために、ブレア公爵子息と友達から始めてみるのもいいかと思うわ。」
「いや、王命での縁談なのだから、余程の理由がなければ断れないだろう。
アナが幸せになれないと、あの殿下は心配すると思うぞ。殿下を安心させるためにも、今は辛くてもアナは前に進むべきだ。」
両親はこの縁談に前向きであるようだ。
そして両親よりも、義兄の方が私の気持ちに寄り添ってくれていることの方が驚きだった。
しかし私が望まなくても、義兄が反対したとしても…、結局は王命なのだ。
その数日後には、私はブレア公爵令息と王命でデートをすることになる。
「コールマン侯爵令嬢。貴女を名前で呼ぶことを許して欲しい。」
「はい。では、アナスタシアと…」
「アナスタシアという名前は素敵だが、私達は結婚するのだから、シアって呼んでもいいか?」
「ええ、勿論ですわ。みんな私をアナって呼びますので、シアって呼ばれるのは初めてですわね。
とても新鮮ですわ。」
今日私達は、二人で薔薇園に来ている。
国王陛下が婚約者同士で交流するようにと言われたようなのだ。
王命での婚約なのに、ブレア公爵令息は嫌じゃなかったのかしら?
嫌悪感みたいなのは感じないし、むしろ、積極的に私との距離を縮めようとしているような気もしなくはない。
でも筆頭公爵家の跡取りとして育ってきた人だから、政略結婚に抵抗はないだけなのかもしれない。
きっと王命だからと割り切っているだけね。この人は上位貴族らしく、自分の感情を表には絶対に出さないという印象だったし。
厳しい王妃教育で、やっと人前でのみ感情を我慢することが出来るようになった私とは全然違って、この方は優秀な人だものね。
「シア…。」
「はい?」
「シアも私を名前で呼んでくれないか?」
「…はい。アルマン様。」
「……アルって呼んでくれたら嬉しい。」
いきなり愛称呼びするの?この人がそんなことを言うとは思わなかったわ。
「……アル様?」
「君にそう呼んでもらえる日が来るとは思っていなかったよ。
自分でそのように呼んで欲しいと言いながら、実際に呼ばれると恥ずかしいものなのだな。」
あのブレア公爵令息の表情がいつもと違うような気がする…。
こんな風に笑う人だったのね。
「シア。私達は王命での結婚だが、私は君と結婚出来ることを嬉しく思っている。
私は殿下の側近をしているから、君がどれだけ王妃教育を頑張っていたのかも、君と殿下が愛し合っていて、二人がどんな気持ちで婚約解消になったのかも分かっているつもりだ。
今すぐに私を愛して欲しいなどと図々しいことは言わないが、少しずつ私に心を開いてくれないか?
私は君を幸せにすると約束する。」
いつもは感情の読めない表情をしているブレア公爵令息が、真剣な眼差しを向けてくる。
今はまだ殿下への未練があって辛いけど、王命で望まない婚約者を押しつけられた立場であるはずのブレア公爵令息がここまで言ってくれている…。
私はこの方を信じたいと思った。
「はい…。私はアル様を信じてついて行きたいと思います。
至らない私ですが、どうぞよろしくお願い致します。」
「ありがとう。」
ブレア公爵令息は、忙しい仕事の合間に、私の邸まで会いに来てくれたり、デートに誘ってくれたりするようになる。
真面目で誠実な方だと感じた。
きっとこの方となら、家族として仲良くやっていけるだろうと、その時の私は思っていた…。
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