4 / 102
一度目の話
王命での婚約
しかし、話し合いをしたいと両親に言う前に、私はお父様の執務室に呼ばれる。
そこには、お母様と義兄も呼ばれたようだった。
「アナ。先程、王宮から使者が来て、陛下からの手紙が届いた。
アナを王命でブレア公爵家の嫡男と婚約させたいと書いてある。」
「ブレア公爵家ですって?筆頭公爵家ではないですか!」
お母様がかなり驚いているのが分かった。
「殿下との婚約がなくなったとはいえ、アナは国王陛下と王妃殿下に可愛がられていたのは事実だし、そんなアナに、陛下がいい縁談を用意してくれたのかもしれない。」
「待って下さい!確かに名門のブレア公爵家との縁談は素晴らしいものかもしれませんが、アナの気持ちはどうなるのです?
アナと殿下は仲の良い婚約者同士だったのですよ!貴族は政略結婚が当たり前とはいえ、仲の良かった婚約者との関係がなくなったばかりで、心を痛めている時に、すぐに次の婚約者を王命で決められてしまうなんて、アナの気持ちを全く考えていないではないですか?
しかも、相手のブレア公爵令息は殿下の最側近ですよ?殿下の最側近と婚約したら、嫌でも殿下と顔を合わせる機会が沢山ありますよね?
私はその婚約には反対です!」
一体どうしたの?そんなに仲良くなかった義兄が、本気で私を心配しているように見えるわ。
「ルークは心配性ねぇ。
今は婚約解消したばかりで辛いかもしれないけれど、いずれは結婚しなければならないのよ?
殿下のことを忘れるために、ブレア公爵子息と友達から始めてみるのもいいかと思うわ。」
「いや、王命での縁談なのだから、余程の理由がなければ断れないだろう。
アナが幸せになれないと、あの殿下は心配すると思うぞ。殿下を安心させるためにも、今は辛くてもアナは前に進むべきだ。」
両親はこの縁談に前向きであるようだ。
そして両親よりも、義兄の方が私の気持ちに寄り添ってくれていることの方が驚きだった。
しかし私が望まなくても、義兄が反対したとしても…、結局は王命なのだ。
その数日後には、私はブレア公爵令息と王命でデートをすることになる。
「コールマン侯爵令嬢。貴女を名前で呼ぶことを許して欲しい。」
「はい。では、アナスタシアと…」
「アナスタシアという名前は素敵だが、私達は結婚するのだから、シアって呼んでもいいか?」
「ええ、勿論ですわ。みんな私をアナって呼びますので、シアって呼ばれるのは初めてですわね。
とても新鮮ですわ。」
今日私達は、二人で薔薇園に来ている。
国王陛下が婚約者同士で交流するようにと言われたようなのだ。
王命での婚約なのに、ブレア公爵令息は嫌じゃなかったのかしら?
嫌悪感みたいなのは感じないし、むしろ、積極的に私との距離を縮めようとしているような気もしなくはない。
でも筆頭公爵家の跡取りとして育ってきた人だから、政略結婚に抵抗はないだけなのかもしれない。
きっと王命だからと割り切っているだけね。この人は上位貴族らしく、自分の感情を表には絶対に出さないという印象だったし。
厳しい王妃教育で、やっと人前でのみ感情を我慢することが出来るようになった私とは全然違って、この方は優秀な人だものね。
「シア…。」
「はい?」
「シアも私を名前で呼んでくれないか?」
「…はい。アルマン様。」
「……アルって呼んでくれたら嬉しい。」
いきなり愛称呼びするの?この人がそんなことを言うとは思わなかったわ。
「……アル様?」
「君にそう呼んでもらえる日が来るとは思っていなかったよ。
自分でそのように呼んで欲しいと言いながら、実際に呼ばれると恥ずかしいものなのだな。」
あのブレア公爵令息の表情がいつもと違うような気がする…。
こんな風に笑う人だったのね。
「シア。私達は王命での結婚だが、私は君と結婚出来ることを嬉しく思っている。
私は殿下の側近をしているから、君がどれだけ王妃教育を頑張っていたのかも、君と殿下が愛し合っていて、二人がどんな気持ちで婚約解消になったのかも分かっているつもりだ。
今すぐに私を愛して欲しいなどと図々しいことは言わないが、少しずつ私に心を開いてくれないか?
私は君を幸せにすると約束する。」
いつもは感情の読めない表情をしているブレア公爵令息が、真剣な眼差しを向けてくる。
今はまだ殿下への未練があって辛いけど、王命で望まない婚約者を押しつけられた立場であるはずのブレア公爵令息がここまで言ってくれている…。
私はこの方を信じたいと思った。
「はい…。私はアル様を信じてついて行きたいと思います。
至らない私ですが、どうぞよろしくお願い致します。」
「ありがとう。」
ブレア公爵令息は、忙しい仕事の合間に、私の邸まで会いに来てくれたり、デートに誘ってくれたりするようになる。
真面目で誠実な方だと感じた。
きっとこの方となら、家族として仲良くやっていけるだろうと、その時の私は思っていた…。
そこには、お母様と義兄も呼ばれたようだった。
「アナ。先程、王宮から使者が来て、陛下からの手紙が届いた。
アナを王命でブレア公爵家の嫡男と婚約させたいと書いてある。」
「ブレア公爵家ですって?筆頭公爵家ではないですか!」
お母様がかなり驚いているのが分かった。
「殿下との婚約がなくなったとはいえ、アナは国王陛下と王妃殿下に可愛がられていたのは事実だし、そんなアナに、陛下がいい縁談を用意してくれたのかもしれない。」
「待って下さい!確かに名門のブレア公爵家との縁談は素晴らしいものかもしれませんが、アナの気持ちはどうなるのです?
アナと殿下は仲の良い婚約者同士だったのですよ!貴族は政略結婚が当たり前とはいえ、仲の良かった婚約者との関係がなくなったばかりで、心を痛めている時に、すぐに次の婚約者を王命で決められてしまうなんて、アナの気持ちを全く考えていないではないですか?
しかも、相手のブレア公爵令息は殿下の最側近ですよ?殿下の最側近と婚約したら、嫌でも殿下と顔を合わせる機会が沢山ありますよね?
私はその婚約には反対です!」
一体どうしたの?そんなに仲良くなかった義兄が、本気で私を心配しているように見えるわ。
「ルークは心配性ねぇ。
今は婚約解消したばかりで辛いかもしれないけれど、いずれは結婚しなければならないのよ?
殿下のことを忘れるために、ブレア公爵子息と友達から始めてみるのもいいかと思うわ。」
「いや、王命での縁談なのだから、余程の理由がなければ断れないだろう。
アナが幸せになれないと、あの殿下は心配すると思うぞ。殿下を安心させるためにも、今は辛くてもアナは前に進むべきだ。」
両親はこの縁談に前向きであるようだ。
そして両親よりも、義兄の方が私の気持ちに寄り添ってくれていることの方が驚きだった。
しかし私が望まなくても、義兄が反対したとしても…、結局は王命なのだ。
その数日後には、私はブレア公爵令息と王命でデートをすることになる。
「コールマン侯爵令嬢。貴女を名前で呼ぶことを許して欲しい。」
「はい。では、アナスタシアと…」
「アナスタシアという名前は素敵だが、私達は結婚するのだから、シアって呼んでもいいか?」
「ええ、勿論ですわ。みんな私をアナって呼びますので、シアって呼ばれるのは初めてですわね。
とても新鮮ですわ。」
今日私達は、二人で薔薇園に来ている。
国王陛下が婚約者同士で交流するようにと言われたようなのだ。
王命での婚約なのに、ブレア公爵令息は嫌じゃなかったのかしら?
嫌悪感みたいなのは感じないし、むしろ、積極的に私との距離を縮めようとしているような気もしなくはない。
でも筆頭公爵家の跡取りとして育ってきた人だから、政略結婚に抵抗はないだけなのかもしれない。
きっと王命だからと割り切っているだけね。この人は上位貴族らしく、自分の感情を表には絶対に出さないという印象だったし。
厳しい王妃教育で、やっと人前でのみ感情を我慢することが出来るようになった私とは全然違って、この方は優秀な人だものね。
「シア…。」
「はい?」
「シアも私を名前で呼んでくれないか?」
「…はい。アルマン様。」
「……アルって呼んでくれたら嬉しい。」
いきなり愛称呼びするの?この人がそんなことを言うとは思わなかったわ。
「……アル様?」
「君にそう呼んでもらえる日が来るとは思っていなかったよ。
自分でそのように呼んで欲しいと言いながら、実際に呼ばれると恥ずかしいものなのだな。」
あのブレア公爵令息の表情がいつもと違うような気がする…。
こんな風に笑う人だったのね。
「シア。私達は王命での結婚だが、私は君と結婚出来ることを嬉しく思っている。
私は殿下の側近をしているから、君がどれだけ王妃教育を頑張っていたのかも、君と殿下が愛し合っていて、二人がどんな気持ちで婚約解消になったのかも分かっているつもりだ。
今すぐに私を愛して欲しいなどと図々しいことは言わないが、少しずつ私に心を開いてくれないか?
私は君を幸せにすると約束する。」
いつもは感情の読めない表情をしているブレア公爵令息が、真剣な眼差しを向けてくる。
今はまだ殿下への未練があって辛いけど、王命で望まない婚約者を押しつけられた立場であるはずのブレア公爵令息がここまで言ってくれている…。
私はこの方を信じたいと思った。
「はい…。私はアル様を信じてついて行きたいと思います。
至らない私ですが、どうぞよろしくお願い致します。」
「ありがとう。」
ブレア公爵令息は、忙しい仕事の合間に、私の邸まで会いに来てくれたり、デートに誘ってくれたりするようになる。
真面目で誠実な方だと感じた。
きっとこの方となら、家族として仲良くやっていけるだろうと、その時の私は思っていた…。
あなたにおすすめの小説
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?