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二度目の話

マニー国

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 船や列車を乗り継いで、私とお義兄様はマニー国にやって来た。
 私達の他に、私のメイドのシェリーとアデルに、お義兄様の従者達と護衛騎士を数人連れての旅だったので、寂しさは全くなかった。

 メイドのハンナも行きたがっていたが、私としてはまだ病気のことが心配だったので、寂しいけどお留守番を頼むことにした。
 シェリーや従者、護衛騎士達は、私とお義兄様が留学することが決まってすぐに、マニー語や文化などを必死に勉強して、付いて来てくれた。
 本当に申し訳ない気持ちになる。

 私…、お義兄様や使用人たちをかなり振り回しているのよね。
 学園では絶対に結果を出さないといけない!

 住む場所は、学園の近くに邸を借りてそこに住むことになった。
 うちの侯爵家と取引をしているマニー国のシュナイダー伯爵様が色々と手配をしてくれたらしい。
 更にこの国での保護者代理として、何かあればすぐに駆けつけてくれるということになっているようで、とても心強いと思った私だ。

 実は私は、学園の寮に住むつもりでいたのに、お義兄様はそれを許してくれなかった。
 
『おっちょこちょいのアナは、寮での生活はやめた方がいい。』

 お義兄様のこの一言で、両親は納得していた。
 ここまでおっちょこちょいだと言われる私って…



 そんな私は、お義兄様と一緒に街を散策している。
 
 石畳みの道と歴史の感じられる街並みはとても綺麗だわ。
 お洒落なお店も沢山あるし、ただ見て歩くだけでも楽しいわね。


「アナ、あの店に入ってみよう!」

 お義兄様は繋いでいた私の手を引いて、高級そうなアクセサリーの店に入る。

 お義兄様は、真剣にアクセサリーを眺め始める。

 さすがお義兄様だわ。秘密の恋人に手紙やプレゼントは送るつもりでいるのね。しばらくは会えないのだからそれは重要よ!
 秘密の恋人に何がいいのか真剣に考えているようだから、私は邪魔にならないように、少し離れていよう。
 お義兄様は、流暢なマニー語で店員さんと何かやり取りをしているようだった。

 少しして…

「アナ、待たせて悪かったな。
 何か気に入ったものはあったか?
 …その髪飾りが気に入ったのだな。買ってやろう。」

「いえ、私は大丈夫ですわ。」

「せっかく来たんだから遠慮する必要はない。」

 そう言うと、お義兄様は店員さんを呼んで、私が眺めていた髪飾りを買ってくれた。

「アナ、私が着けてやろう。」

「…ありがとうございます。」

 胸がズキズキするような気がした…






 それから一週間後、マニー国の貴族学園の入学式を迎える。
 お義兄様は昨日からアカデミーが始まっていて、すでに出発してしまった。


「まあ!アナちゃん、貴族学園の制服がとても似合っているわ。」

「ああ、そうだな。きっと入学式でみんなに注目されるだろうな。」


 この二人が、うちの侯爵家と取引をしているマニー国のシュナイダー伯爵と夫人だ。
 今日は入学式だから、私の両親の代わりに一緒に行ってくれることになったのだ。

「身に余るお言葉を頂き、ありがとうございます。
 今日はどうぞよろしくお願い致します。」

「ええ。こちらこそよろしくね。」


 入学式は特に何もなく終わったと思う。
 新入生の挨拶は、マニー国の第三王子殿下がやっていた。
 王族はどこの国もみんなカッコいいって決まりがあるのかしら?挨拶している王子殿下を熱のこもった目で見ている令嬢方が多いような気がする。

 人生も二度目だから、割とそういうことには冷静に見れるわね。
 それに、お義兄様の方がカッコいいし…

 
 当たり前だけど、知らない人しかいないし、今日は入学式だけだったので、すぐにシュナイダー伯爵様達と帰って来てしまった。
 そういえば…、我が国の外交官の家門のクラーク伯爵令嬢は来ていたのかしら?人が多すぎて分からなかったわね。


 そして翌日。
 今日から学園での授業が始まる。

「アナ。今日はアカデミーが終わるのが早いから、私が迎えにいく。
 知らない人について行ってはダメだからな。」

「お義兄様、私のおっちょこちょいはそこまで酷くはありませんわよ!」

「気を付けて行って来て欲しいってことだ。特に令息には気をつけるんだ。
 アナが何も知らない留学生だからと、甘い言葉で誑かそうと近づいてくるかもしれない。」

 私の見た目はちんちくりんだから、そのように感じるのかもしれない。
 でも中身は二度目の人生で、物事に対してはシビアに捉えていると思うから、多分大丈夫ね。

「気を付けますわ。」



 初登校で、少し緊張しながら教室に入る。
 
 留学生といっても、侯爵令嬢の私はAクラスらしい。

 ええと…、私の席はどこだろう?

 自分の座席を探す為に、キョロキョロしていると声を掛けられる。

「失礼!君がコールマン侯爵令嬢か?」

 ……うわっ!

「王子殿下にご挨拶いたします…」

 慌てて、カーテシーをしようとするが…

「ここは学園なのだから、そのように堅苦しい挨拶は不要だ。」

 そう言われましても…。
 教室内がシーンと静まり返っている。

「君のことは、アーヴル国の王太子殿下から聞いている。
 大切な婚約者候補だから、くれぐれもよろしく頼むと言われているよ。何か困ったことがあれば、私か私の側近にでも言ってくれ。
 他の者達も彼女をよろしく頼んだ。アーヴル国は我が国の友好国だ。コールマン侯爵令嬢に何かあれば外交問題になってしまうかもしれないからな。」

 周りで聞き耳を立てているであろうクラスメイト達に、威嚇するかのように話す王子殿下。
 なかなかの迫力ね…

 なるほど…。殿下なりに私に気を遣って、わざわざこの王子殿下に手紙でも出してくれたのね。あの方はそういう方だもの。
 

 親切?な王子殿下は、同じ国出身の者同士、話が合うだろうと、クラーク伯爵令嬢を紹介してくれた。
 一度目の人生ぶりのクラーク伯爵令嬢だ。


 正直、有り難かった。

 

 
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