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二度目の話

閑話 義兄 ルーク

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 王太子殿下とアナが図書館で一緒にいる姿を見た時があったが、ずっと前からお互いを知っていたかのような、仲の良さそうな雰囲気であった。

 アナは私以外の男とも楽しそうに会話をするんだな…。
 殿下にとってもアナは特別なのか?あんな風に嬉しそうに会話する殿下を初めて見た。

 そんなアナは、ブレア公爵家から茶会に熱心に誘われたり、縁談の話が来たりする。
 更に王太子殿下の婚約者候補に選ばれてしまったり…。
 本人は二人を避けようとしているのに、なかなか上手くいかないようだった。

 その頃には、私はアナには内緒で義両親にある頼み事をしていた。
 もしこの先、アナに婚約したいと思える人物が現れなかった場合や、義両親から見てアナの婚約者に相応しいと思える人物がいなかった場合、私とアナの婚約を認めて欲しいということだ。

 義父上は、アナが殿下やブレア公爵令息との縁談を嫌がっているのだから、今すぐに私と婚約してもいいのではと言ってくれた。
 しかしそれでは、アナの気持ちを無視してしまうので、まだ待って欲しいことを私からお願いした。

 義母上の方は、反対はしないが、王家やブレア公爵家の縁談が捨てがたいという考えのようだった。
 確かにあの二人は、血筋に家柄、容姿も能力も、皆が欲しがるものを全て持っている。義母上が縁談を受けたいという気持ちは理解できた。


 王太子殿下やブレア公爵令息と学園で関わりたくないという考えのもと、アナは留学までしたが、留学先での成績が良かったこともあり、我が国の王妃殿下から気に入られてしまったアナ。
 留学から帰って来ると、アナは王太子殿下の婚約者に内定しているのではと噂話が流れてしまっていたのだ。

 そして、恐れていたことが起きてしまう。
 アナは安全であるはずの貴族学園内で暗殺者に狙われてしまうのでる。
 
 その報告を聞いた私は、凄まじい怒りと、アナを失うかもしれないという例えようのない恐怖に襲われていた。
 しかし暗殺者に襲われたアナ本人は、ショックは受けつつも、どこか諦めたような表情をしていた。
 普通なら、取り乱して泣き出してもおかしくはないはずなのにだ。

 その様子を見て、アナは何かを知っているのだと私は確信した。
 もう黙って見ていることは出来なかった私は、アナの苦しみを私も分かち合いたいことを、必死に伝えていた。

 そしてそんな私にアナが打ち明けてくれたことは、想像以上のことであった。


「お義兄様…。私は…二度目の人生を送っているのです…」

 アナは一度目の人生で、殿下の婚約者だったこと、殿下と婚約解消になりブレア公爵令息と王命で結婚したことを話す。
 嫁ぎ先のブレア公爵家のメイド長に毒を盛られ、そんなアナを助けに私が公爵家に向かったことや、毒で死にゆくアナを私が看取ったこと。

 普通の人間なら、そんな話は信じられないと思うだろう。
 しかし私は、何の疑いも持たなかった。
 私が見ていた夢の疑問が解けたからだ。
 私が見ていたのは、私が一度目の人生で経験した不幸な出来事の夢。

 だからアナは、王太子殿下やブレア公爵令息との婚約をあんなにも嫌がっていたのだろう。
 
 殿下とアナが親しげに話していたのは、殿下にも記憶があって、アナとは協力関係のようなものだからということなのだろう。

 しかし王太子殿下は、隣国の第二王女とフロスト卿が暗殺の首謀者だと言って監視はしていたらしいが、結局、こうやってアナが危険な目に遭っているではないか!
 
 フロスト卿も隣国の王女も、フロスト侯爵家も潰してやる。
 誰に手を出したのか後悔させてやろう。


 学園に暗殺者を送るほど愚かなことをする隣国の王女は、余程時間がないのだろう。それを考えると、暗殺者は近いうちに必ずこの邸に来るはず。
 そう考えた私は、暗部の人間と騎士達に厳戒態勢を敷くようにと命じた。

 結果、暗殺者達はあっさり捕まえることに成功した。
 アナが孤児院から連れてきた、騎士のアーサーが大活躍したことと、私がマニー国のアカデミーで作ってきた痺れ薬がとても役に立ったのだ。
 更に、捕まえた暗殺者の中にはアーサーの孤児院の友人がいたらしい。
 私はアーサーに、すぐにその友人の説得を命じることにした。

 暗殺者達は侯爵家で面倒を見ると言ったら、私達に協力してくれることになり、そのお陰で、暗殺者組織の壊滅と、隣国王女とフロスト侯爵家が暗殺者を依頼した証拠も掴むことが出来た。

 しかし、気になることがあった。
 私達に協力してくれた元暗殺者達の話だと、暗殺者組織のボスの右腕だと言われていた凄腕の暗殺者がすでに死んでいたことや、他の主要な暗殺者達も何人か消えていたらしい。
 そのお陰で、簡単に組織の壊滅に成功したのだが、フロスト侯爵家が贔屓にするくらいなのだから、元々は手練れ揃いの暗殺者集団であったはずなのだ。

 その凄腕暗殺者達を始末出来るほどの力を持つのは、王家以外だと……

 ブレア公爵家が動いたか?

 
 
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