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閑話 王弟アルベルト
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クリスティーナに養育してくれていた同居女性のことを聞くと、嬉しそうに話をしてくれる。
「お姉ちゃんは、掃除も洗濯もお料理も、全部魔法でやるのよ。
お姉ちゃんが作ったお菓子は美味しいの。あ、ハンバーグも美味しいのよ!
みんながね……、ティーナのお姉ちゃんは凄いって言ってくれるのよ!」
「まあ!クリスティーナのお姉様はすごい方なのね。
ふふっ。お姉様が大好きなのね。」
王妃殿下は、興味深そうにクリスティーナの話を聞いている。
「はい!私はお姉様が大好きなの。
そろそろお姉様の所に帰りたいな!
いつも暗くなる前に、お家に帰りましょうって言われているの。」
「……。」
「………。」
クリスティーナは、自分がここで生活するということをまだ理解していないようだった。
そんなクリスティーナに、陛下と王妃殿下が、自分達が今日からクリスティーナの父と母になると告げて、ここで生活しようと話をするのだが…
「お姉ちゃんは…?
お姉ちゃんも一緒がいい!」
「…では、今日はクリスティーナのお姉様のことを沢山教えて欲しいわ。
私達はまだお姉様のことを知らないから。」
「はい!」
王妃殿下が上手く誤魔化して、その日は何とかなった。
クリスティーナと同居していた女性が気になった私は、すぐにその女性を調べることにした。
それで分かったことは、彼女はまだ15歳くらいの時にクリスティーナを引き取って、それからずっと育ててくれたということだった。
大商会であるウォーカー商会の売れ筋であるベビー用品は、全部彼女が考えたものらしく、売り上げの一部が彼女の利益になっているようで、彼女は平民女性としては余裕のある生活をしているらしい。
「あの同居女性は、王女殿下に可愛い服を着せて大切に育てていたらしく、あの港町で王女殿下はお姫様と呼ばれていたようです。」
側近はすぐに調べたことを報告してくれた。
「そうか。クリスティーナは幸せに生活していたんだな。」
あの日、涙を流してクリスティーナを見送っていた彼女を思い出して、今更だが胸が痛んだ。
そんな私が、側近が調べたことを国王陛下と王妃殿下にも報告すると、驚くべきことを言われる。
「アル。お前がクリスティーナの養育者から預かってきた日記帳は素晴らしかった。
綺麗な字で、日々のクリスティーナの成長の様子が分かりやすく記録されていたのだ。
彼女は、いつかクリスティーナの家族が迎えに来てくれるだろうと信じて、どんな風に育ってきたのかを伝えたいと思って記録してくれていたようだ。
文面からは、彼女の知性とクリスティーナへの愛情が伝わるものだったよ。
奴隷にされたり、孤児院で貧しい生活をさせられているのではないかとずっと心配していたが、クリスティーナは大切に育ててもらって、幸せだったようだな。」
他者にも自分にも厳しい国王である兄は、滅多に人を褒めないのだ。
そんな兄が彼女を褒めている……
「アルベルト。クリスティーナのお姉様は、本当に平民なのかしら…?
クリスティーナは、お姉様が魔法で色々なことをしてくれると言っているのだから、魔力が強いということでしょ?
日記帳を読むと分かるけど、とても平民が書いたとは思えない文章よ。その辺の貴族令嬢よりも優秀かもしれないわね。
しかも、貴方と一緒にクリスティーナを迎えに行った近衛騎士達から聞いたけど、かなりの美人で品があったと言っていたわよ。」
王妃殿下も、彼女が気になって仕方がないようだった。
「クリスティーナはそのお姉様が大好きみたいだし、魔力が強くて学もあるようだから、平民ならば、王家と繋がりの深い貴族に養女に迎えてもらって、クリスティーナの侍女になってもらってもいいと思うのよ。」
もしそうなれば、クリスティーナは喜ぶだろう。
毎日彼女の話ばかりしていて、本当に大好きみたいだから。
「分かりました。もう少し彼女のことを調べてみたいと思います。」
クリスティーナは、手紙を書くのが好きらしく、お姉ちゃんに手紙を届けて欲しいと言う。
「叔父様、本当にお姉様に手紙を届けてくれるの?」
「ああ。私が届けるから、クリスティーナは早く手紙を書きなさい。」
「ありがとう!」
クリスティーナは、可愛らしい便箋を侍女に用意してもらってご機嫌の様子だった。
しかし、クリスティーナの手紙を持って港町の彼女の家に行ったが、彼女には会えなかった。
どうやら留守のようだった。
「騎士様、リーゼはどこかに旅に出たようですよ。」
近所のマダムが出てきて教えてくれる。
「夫人。どこに行ったのか分かりますか?
いつ頃戻るのか知っていますか?」
「船で外国に行ったようですけど、詳しいことは聞いてないから分からないんだよ。」
外国…?どうして?
仕方がない。出直すしかないな。
その後も何度か訪ねるが、まだ帰って来ていないと言われてしまう。
もしかして、旅行ではなく移住?
何も知らない彼女に会えないだけなのに、私はなぜこんなにも不安になっているのだろう…
「お姉ちゃんは、掃除も洗濯もお料理も、全部魔法でやるのよ。
お姉ちゃんが作ったお菓子は美味しいの。あ、ハンバーグも美味しいのよ!
みんながね……、ティーナのお姉ちゃんは凄いって言ってくれるのよ!」
「まあ!クリスティーナのお姉様はすごい方なのね。
ふふっ。お姉様が大好きなのね。」
王妃殿下は、興味深そうにクリスティーナの話を聞いている。
「はい!私はお姉様が大好きなの。
そろそろお姉様の所に帰りたいな!
いつも暗くなる前に、お家に帰りましょうって言われているの。」
「……。」
「………。」
クリスティーナは、自分がここで生活するということをまだ理解していないようだった。
そんなクリスティーナに、陛下と王妃殿下が、自分達が今日からクリスティーナの父と母になると告げて、ここで生活しようと話をするのだが…
「お姉ちゃんは…?
お姉ちゃんも一緒がいい!」
「…では、今日はクリスティーナのお姉様のことを沢山教えて欲しいわ。
私達はまだお姉様のことを知らないから。」
「はい!」
王妃殿下が上手く誤魔化して、その日は何とかなった。
クリスティーナと同居していた女性が気になった私は、すぐにその女性を調べることにした。
それで分かったことは、彼女はまだ15歳くらいの時にクリスティーナを引き取って、それからずっと育ててくれたということだった。
大商会であるウォーカー商会の売れ筋であるベビー用品は、全部彼女が考えたものらしく、売り上げの一部が彼女の利益になっているようで、彼女は平民女性としては余裕のある生活をしているらしい。
「あの同居女性は、王女殿下に可愛い服を着せて大切に育てていたらしく、あの港町で王女殿下はお姫様と呼ばれていたようです。」
側近はすぐに調べたことを報告してくれた。
「そうか。クリスティーナは幸せに生活していたんだな。」
あの日、涙を流してクリスティーナを見送っていた彼女を思い出して、今更だが胸が痛んだ。
そんな私が、側近が調べたことを国王陛下と王妃殿下にも報告すると、驚くべきことを言われる。
「アル。お前がクリスティーナの養育者から預かってきた日記帳は素晴らしかった。
綺麗な字で、日々のクリスティーナの成長の様子が分かりやすく記録されていたのだ。
彼女は、いつかクリスティーナの家族が迎えに来てくれるだろうと信じて、どんな風に育ってきたのかを伝えたいと思って記録してくれていたようだ。
文面からは、彼女の知性とクリスティーナへの愛情が伝わるものだったよ。
奴隷にされたり、孤児院で貧しい生活をさせられているのではないかとずっと心配していたが、クリスティーナは大切に育ててもらって、幸せだったようだな。」
他者にも自分にも厳しい国王である兄は、滅多に人を褒めないのだ。
そんな兄が彼女を褒めている……
「アルベルト。クリスティーナのお姉様は、本当に平民なのかしら…?
クリスティーナは、お姉様が魔法で色々なことをしてくれると言っているのだから、魔力が強いということでしょ?
日記帳を読むと分かるけど、とても平民が書いたとは思えない文章よ。その辺の貴族令嬢よりも優秀かもしれないわね。
しかも、貴方と一緒にクリスティーナを迎えに行った近衛騎士達から聞いたけど、かなりの美人で品があったと言っていたわよ。」
王妃殿下も、彼女が気になって仕方がないようだった。
「クリスティーナはそのお姉様が大好きみたいだし、魔力が強くて学もあるようだから、平民ならば、王家と繋がりの深い貴族に養女に迎えてもらって、クリスティーナの侍女になってもらってもいいと思うのよ。」
もしそうなれば、クリスティーナは喜ぶだろう。
毎日彼女の話ばかりしていて、本当に大好きみたいだから。
「分かりました。もう少し彼女のことを調べてみたいと思います。」
クリスティーナは、手紙を書くのが好きらしく、お姉ちゃんに手紙を届けて欲しいと言う。
「叔父様、本当にお姉様に手紙を届けてくれるの?」
「ああ。私が届けるから、クリスティーナは早く手紙を書きなさい。」
「ありがとう!」
クリスティーナは、可愛らしい便箋を侍女に用意してもらってご機嫌の様子だった。
しかし、クリスティーナの手紙を持って港町の彼女の家に行ったが、彼女には会えなかった。
どうやら留守のようだった。
「騎士様、リーゼはどこかに旅に出たようですよ。」
近所のマダムが出てきて教えてくれる。
「夫人。どこに行ったのか分かりますか?
いつ頃戻るのか知っていますか?」
「船で外国に行ったようですけど、詳しいことは聞いてないから分からないんだよ。」
外国…?どうして?
仕方がない。出直すしかないな。
その後も何度か訪ねるが、まだ帰って来ていないと言われてしまう。
もしかして、旅行ではなく移住?
何も知らない彼女に会えないだけなのに、私はなぜこんなにも不安になっているのだろう…
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