45 / 105
連載
聖騎士
しおりを挟む
いつものように、孤児院で掃除と洗濯をした後に、女の子達に本を読んであげていると、外が騒がしいことに気付く。
「誰か来たのかしら?」
「あっ、もしかして聖騎士様が来てくれたのかな?」
「男の子たちが喜んでいる声が聞こえるから、きっとそうだわ。」
「えっ!聖騎士様が孤児院に遊びに来るの?」
「うん。忙しいからなかなか来てくれないけど、時間がある時に遊びに来てくれて、男の子達に剣術を教えてくれるんだよ。」
「そうだったのね…。知らなかったわ。」
窓の外を見てみると、聖騎士が数人いて、男の子達に剣術を教えているのが見える。
忙しくて滅多に来れないから、私が孤児院で手伝いを始めてから今日まで、偶然会わなかったのね……。
その後も室内で女の子達と過ごしていた私は、職員のマダムに呼ばれる。
「リーゼさん。そろそろお茶の時間だから、騎士様達にお茶を淹れてあげてくれる?
私みたいなオバさんより、若くて綺麗なリーゼさんがお茶を淹れてくれた方が、騎士様達は喜んでくれると思うのよ。」
このマダムの職員さんは、現場の職員をまとめているボスみたいな方だと思う。
「……滅相もないです。
私は、大人の魅力溢れるマダムの淹れてくれたお茶が大好きですし。」
「ふふっ……。お上手ねぇ。
リーゼさんは、仕事を一生懸命やってくれるし、子供達をすごく可愛がってくれるから、私は貴女に幸せな結婚をしてもらいたいのよ。貴女はきっと、いいお母さんになるわ。
独身の聖騎士様が沢山いるから、行ってきなさい。素敵な出会いがあるかもしれないわよ。」
おばちゃんがよく言いそうなセリフを言われてしまったなぁ。
「私、今は結婚願望はないので……」
「勿体ないこと言わないの!
お茶を頼んだわよ。
応接室で待ってもらっているから。」
「……分かりました。」
強引なマダムは最強で、断ることは許されないようだ。
そんな私がお茶の準備をして応接室に向かうと、聖騎士が数人、ソファーに座っていた。
チラッと見た感じ、みんな初めて見る人達のようだった。
お茶を淹れ終えた私は、すぐに子供達の所に戻る。
「リーゼさん、聖騎士様はどうだった?」
「お茶を出してすぐに退室してしまったので、特に話はしませんでしたわ。」
「もう!リーゼさんは若いのだから、もっと積極的に動かないとダメよ。」
そんな話をして、その日の孤児院のお手伝いは終わった。
しかしその翌日、また聖騎士達が孤児院にやって来たようだった。
「昨日来てくれたばかりなのに、今日もですか…。」
「男の子達が喜ぶから、時間がある時はよく来てくれるのよ。
忙しい時なんかは、全く来なくなるけどね。」
「騎士って仕事は、男の子達の憧れのお仕事だからね。」
職員達とそんな話をしていたら、マダムの職員さんに呼ばれる。
「リーゼさん。聖騎士様がリーゼさんを呼んでいるわよ。」
「……聖騎士様がですか?」
「あの方、聖騎士団で最年少で部隊長になったっていう、すごい方よね?
次期、騎士団長と言われていて、令嬢達に大人気だと噂で聞いたことがあるわ。
ふふっ……。リーゼさんたら、なかなかやるじゃないの!
騎士様を応接室に案内してあるから、早く行ってあげて。ゆっくり話をしてきていいからね。」
わざわざ応接室に案内しなくても……
玄関先でいいのに。
あのマダムは、ノリが良くて楽しい人だけど、お見合いオバさんみたいな人だなぁ。
応接室には、どことなく不安そうな表情をした、あの聖騎士様がいた。
「リーゼ……。やはり、君だったか。
昨日、ここに来た騎士達が、孤児院で美しい令嬢が働いていたと話していて、特徴がリーゼと一緒だったし、子供達が〝リーゼお姉ちゃん〟と呼んでいたと聞いて……。
もしかしたら、君かもしれないと思って、気になって来てしまった。
仕事を辞めたと聞いた……。私は、ずっと君を心配していたんだ。」
「騎士様……、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」
うーん……。気まずくて、何を話していいのか分からないなぁ。
「君が身分の高い後見人に引き取られたと聞いた。
私が聞いていいのか分からないが……、君は今どこにいるんだ?
今の生活は、君にとって幸せなのか?」
ただの客と店員という関係だったにも関わらず、この聖騎士は、私のことを真剣に心配してくれていたようだ。
そういえばあの時、おじ様と私が聖騎士団で噂話になっていると教えてくれたのも、心配して話してくれたのかもしれない。
この人は、やはり普通にいい人のように見える。
「誰か来たのかしら?」
「あっ、もしかして聖騎士様が来てくれたのかな?」
「男の子たちが喜んでいる声が聞こえるから、きっとそうだわ。」
「えっ!聖騎士様が孤児院に遊びに来るの?」
「うん。忙しいからなかなか来てくれないけど、時間がある時に遊びに来てくれて、男の子達に剣術を教えてくれるんだよ。」
「そうだったのね…。知らなかったわ。」
窓の外を見てみると、聖騎士が数人いて、男の子達に剣術を教えているのが見える。
忙しくて滅多に来れないから、私が孤児院で手伝いを始めてから今日まで、偶然会わなかったのね……。
その後も室内で女の子達と過ごしていた私は、職員のマダムに呼ばれる。
「リーゼさん。そろそろお茶の時間だから、騎士様達にお茶を淹れてあげてくれる?
私みたいなオバさんより、若くて綺麗なリーゼさんがお茶を淹れてくれた方が、騎士様達は喜んでくれると思うのよ。」
このマダムの職員さんは、現場の職員をまとめているボスみたいな方だと思う。
「……滅相もないです。
私は、大人の魅力溢れるマダムの淹れてくれたお茶が大好きですし。」
「ふふっ……。お上手ねぇ。
リーゼさんは、仕事を一生懸命やってくれるし、子供達をすごく可愛がってくれるから、私は貴女に幸せな結婚をしてもらいたいのよ。貴女はきっと、いいお母さんになるわ。
独身の聖騎士様が沢山いるから、行ってきなさい。素敵な出会いがあるかもしれないわよ。」
おばちゃんがよく言いそうなセリフを言われてしまったなぁ。
「私、今は結婚願望はないので……」
「勿体ないこと言わないの!
お茶を頼んだわよ。
応接室で待ってもらっているから。」
「……分かりました。」
強引なマダムは最強で、断ることは許されないようだ。
そんな私がお茶の準備をして応接室に向かうと、聖騎士が数人、ソファーに座っていた。
チラッと見た感じ、みんな初めて見る人達のようだった。
お茶を淹れ終えた私は、すぐに子供達の所に戻る。
「リーゼさん、聖騎士様はどうだった?」
「お茶を出してすぐに退室してしまったので、特に話はしませんでしたわ。」
「もう!リーゼさんは若いのだから、もっと積極的に動かないとダメよ。」
そんな話をして、その日の孤児院のお手伝いは終わった。
しかしその翌日、また聖騎士達が孤児院にやって来たようだった。
「昨日来てくれたばかりなのに、今日もですか…。」
「男の子達が喜ぶから、時間がある時はよく来てくれるのよ。
忙しい時なんかは、全く来なくなるけどね。」
「騎士って仕事は、男の子達の憧れのお仕事だからね。」
職員達とそんな話をしていたら、マダムの職員さんに呼ばれる。
「リーゼさん。聖騎士様がリーゼさんを呼んでいるわよ。」
「……聖騎士様がですか?」
「あの方、聖騎士団で最年少で部隊長になったっていう、すごい方よね?
次期、騎士団長と言われていて、令嬢達に大人気だと噂で聞いたことがあるわ。
ふふっ……。リーゼさんたら、なかなかやるじゃないの!
騎士様を応接室に案内してあるから、早く行ってあげて。ゆっくり話をしてきていいからね。」
わざわざ応接室に案内しなくても……
玄関先でいいのに。
あのマダムは、ノリが良くて楽しい人だけど、お見合いオバさんみたいな人だなぁ。
応接室には、どことなく不安そうな表情をした、あの聖騎士様がいた。
「リーゼ……。やはり、君だったか。
昨日、ここに来た騎士達が、孤児院で美しい令嬢が働いていたと話していて、特徴がリーゼと一緒だったし、子供達が〝リーゼお姉ちゃん〟と呼んでいたと聞いて……。
もしかしたら、君かもしれないと思って、気になって来てしまった。
仕事を辞めたと聞いた……。私は、ずっと君を心配していたんだ。」
「騎士様……、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」
うーん……。気まずくて、何を話していいのか分からないなぁ。
「君が身分の高い後見人に引き取られたと聞いた。
私が聞いていいのか分からないが……、君は今どこにいるんだ?
今の生活は、君にとって幸せなのか?」
ただの客と店員という関係だったにも関わらず、この聖騎士は、私のことを真剣に心配してくれていたようだ。
そういえばあの時、おじ様と私が聖騎士団で噂話になっていると教えてくれたのも、心配して話してくれたのかもしれない。
この人は、やはり普通にいい人のように見える。
応援ありがとうございます!
13
お気に入りに追加
9,983
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。