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突然の訪問
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結婚して一ヶ月以上が経過した。
旦那様と会話をしたり、夕食を共にすることに慣れてきたと思う。
特別な会話をするわけではないけど、妻である私を気遣ってくれているのは分かるので、公爵家での生活には何の不満も持っていない。
むしろ、こんな穏やかな生活を送らせてくれる旦那様には感謝している。
今の生活に慣れてきて、気がかりになったのは社交のことだった。
公爵夫人としてこのままのんびりした生活をしていていいのかと不安になってしまう。
たとえお飾りの妻だとしても、王都にいるなら最低限の社交をしなくてはならないはずなのに、旦那様は何も言ってこないので、ずっと心に引っかかっていた。
一人で夜会に行く旦那様を見ると申し訳ない気持ちになってしまうし、これ以上、見て見ぬ振りをしているのも辛い。
気になった私は、夕食時に旦那様に聞いてみることにした。
「旦那様。まだ領地の邸のリフォームは終わりませんか?」
「思ったよりも時間がかかっているようだ。
アリエルは領地に行きたがっているようだが、今の時期は領地よりも王都の方が暖かくて過ごしやすい。
君は幼い頃、体が弱くてよく風邪をひいていたらしいから、今の時期はここで生活した方がいいだろう。」
旦那様はこうやって、昔の私のことをよく知っているかのような話をする。
でも私達がどんな関係だったのかの話はしてくれないし、私自身も聞きにくくて聞けないでいる。
「そうですか……。お気遣いありがとうございます。
ところで、王都で生活しているのに私は社交をしなくてもいいのでしょうか?」
「社交は無理をしなくてもいい。
君は病で療養中ということになっている。実際に結婚してからしばらくの間、体調不良で臥せっていただろう?
今は無理をして欲しくないんだ。」
「分かりました……」
最近の旦那様は穏やかな口調で話をしてくれる。
そして、婚約していた頃の旦那様とは別人のような優しい目で私を見てくれるのだ。
でも、何だろう? 旦那様のこの態度の変化が気になるし、何かが引っ掛かる。
冷たい態度をとられたあの頃のことは忘れられないし、また何かの拍子にあのような態度を取られるのではと思ってしまうのだ。
本当にこのままの関係でいいのかと疑問に思ってしまいスッキリしない。
王都の邸で静かな毎日を過ごしていたある日、急な来客が訪れる。
「奥様、お客様がいらしております。」
「メイド長、来客の予定なんて入っていたかしら?」
「いえ。先触れもなく突然いらっしゃいました。
奥様の妹君でしたので応接室にお通ししましたが、どういたしましょうか?」
「……義妹が一人で来たの?」
「ええ。護衛は外で待たせているようですが、お一人でいらっしゃったようです。」
忙しいはずのヴィーが何の用かしら?
アンナはヴィーが来たと聞いた瞬間に、顔が険しくなるし……
「せっかく来てくれたのだから会うわ。
お茶をお願いね。」
「畏まりました。」
アンナに急ぎで身支度をしてもらい、応接室に向かう。
久しぶりに会ったヴィーは、疲れがあるのか目の下がくぼみ、やつれていた。
「ヴィー、どうしたの?
何だか疲れた顔をしているように見えるわ。具合が悪いのなら休まないとダメよ。」
私はただヴィーの体を心配して声を掛けたつもりだった。しかし、こんな私から体の心配をされることでヴィーのプライドは傷付いたらしい。
「……私は不幸な結婚をしたお義姉様に心配されるほど、そこまで具合が悪そうに見えるかしら?
疲れていても具合が悪くても……、私はやらなくてはいけないのよ。王太子妃になるためには、頑張らなければいけないの。
お義姉様の代わりに私はやってあげているのよ!」
ヴィーは余裕がないのか感情を剥き出して叫んでいる。
美しくて華やかで、いつも笑顔だったヴィーのこんな姿は初めて見た。
〝お義姉様の代わりに~〟と言われたら、私は何も言い返せない。
好きな人を諦めて、醜聞まみれの義姉の代わりに王太子殿下の婚約者になったヴィーに申し訳なくて、何も言えなくなってしまう。
「……そうよね。ごめんなさい。
私の代わりに大変な思いをさせてしまっているのよね。」
「お義姉様。素敵なドレスにアクセサリーまで着けて大切にされているように見えますが、勘違いなさらないでね。
公爵家のお飾りの夫人なのだから、綺麗にするのは当たり前です。
それに引きこもっているお義姉様は知らないようですが、シールズ公爵様は夜会に素敵な方といらしてますわよ。
お義姉様みたいな人は社交には出せないでしょうし、公爵様は本当に大切な方と夜会に出たいのでしょうね。
お義姉様は可哀想だわ。いくら貴族が政略結婚が当たり前と言っても、夫から全く愛されないなんて。」
「…………」
私には社交は無理をしなくていいと言っていたけど、そういうことだったのね……
旦那様のお飾りの妻であることは理解していたけど、嘘はついて欲しくなかった。
旦那様と会話をしたり、夕食を共にすることに慣れてきたと思う。
特別な会話をするわけではないけど、妻である私を気遣ってくれているのは分かるので、公爵家での生活には何の不満も持っていない。
むしろ、こんな穏やかな生活を送らせてくれる旦那様には感謝している。
今の生活に慣れてきて、気がかりになったのは社交のことだった。
公爵夫人としてこのままのんびりした生活をしていていいのかと不安になってしまう。
たとえお飾りの妻だとしても、王都にいるなら最低限の社交をしなくてはならないはずなのに、旦那様は何も言ってこないので、ずっと心に引っかかっていた。
一人で夜会に行く旦那様を見ると申し訳ない気持ちになってしまうし、これ以上、見て見ぬ振りをしているのも辛い。
気になった私は、夕食時に旦那様に聞いてみることにした。
「旦那様。まだ領地の邸のリフォームは終わりませんか?」
「思ったよりも時間がかかっているようだ。
アリエルは領地に行きたがっているようだが、今の時期は領地よりも王都の方が暖かくて過ごしやすい。
君は幼い頃、体が弱くてよく風邪をひいていたらしいから、今の時期はここで生活した方がいいだろう。」
旦那様はこうやって、昔の私のことをよく知っているかのような話をする。
でも私達がどんな関係だったのかの話はしてくれないし、私自身も聞きにくくて聞けないでいる。
「そうですか……。お気遣いありがとうございます。
ところで、王都で生活しているのに私は社交をしなくてもいいのでしょうか?」
「社交は無理をしなくてもいい。
君は病で療養中ということになっている。実際に結婚してからしばらくの間、体調不良で臥せっていただろう?
今は無理をして欲しくないんだ。」
「分かりました……」
最近の旦那様は穏やかな口調で話をしてくれる。
そして、婚約していた頃の旦那様とは別人のような優しい目で私を見てくれるのだ。
でも、何だろう? 旦那様のこの態度の変化が気になるし、何かが引っ掛かる。
冷たい態度をとられたあの頃のことは忘れられないし、また何かの拍子にあのような態度を取られるのではと思ってしまうのだ。
本当にこのままの関係でいいのかと疑問に思ってしまいスッキリしない。
王都の邸で静かな毎日を過ごしていたある日、急な来客が訪れる。
「奥様、お客様がいらしております。」
「メイド長、来客の予定なんて入っていたかしら?」
「いえ。先触れもなく突然いらっしゃいました。
奥様の妹君でしたので応接室にお通ししましたが、どういたしましょうか?」
「……義妹が一人で来たの?」
「ええ。護衛は外で待たせているようですが、お一人でいらっしゃったようです。」
忙しいはずのヴィーが何の用かしら?
アンナはヴィーが来たと聞いた瞬間に、顔が険しくなるし……
「せっかく来てくれたのだから会うわ。
お茶をお願いね。」
「畏まりました。」
アンナに急ぎで身支度をしてもらい、応接室に向かう。
久しぶりに会ったヴィーは、疲れがあるのか目の下がくぼみ、やつれていた。
「ヴィー、どうしたの?
何だか疲れた顔をしているように見えるわ。具合が悪いのなら休まないとダメよ。」
私はただヴィーの体を心配して声を掛けたつもりだった。しかし、こんな私から体の心配をされることでヴィーのプライドは傷付いたらしい。
「……私は不幸な結婚をしたお義姉様に心配されるほど、そこまで具合が悪そうに見えるかしら?
疲れていても具合が悪くても……、私はやらなくてはいけないのよ。王太子妃になるためには、頑張らなければいけないの。
お義姉様の代わりに私はやってあげているのよ!」
ヴィーは余裕がないのか感情を剥き出して叫んでいる。
美しくて華やかで、いつも笑顔だったヴィーのこんな姿は初めて見た。
〝お義姉様の代わりに~〟と言われたら、私は何も言い返せない。
好きな人を諦めて、醜聞まみれの義姉の代わりに王太子殿下の婚約者になったヴィーに申し訳なくて、何も言えなくなってしまう。
「……そうよね。ごめんなさい。
私の代わりに大変な思いをさせてしまっているのよね。」
「お義姉様。素敵なドレスにアクセサリーまで着けて大切にされているように見えますが、勘違いなさらないでね。
公爵家のお飾りの夫人なのだから、綺麗にするのは当たり前です。
それに引きこもっているお義姉様は知らないようですが、シールズ公爵様は夜会に素敵な方といらしてますわよ。
お義姉様みたいな人は社交には出せないでしょうし、公爵様は本当に大切な方と夜会に出たいのでしょうね。
お義姉様は可哀想だわ。いくら貴族が政略結婚が当たり前と言っても、夫から全く愛されないなんて。」
「…………」
私には社交は無理をしなくていいと言っていたけど、そういうことだったのね……
旦那様のお飾りの妻であることは理解していたけど、嘘はついて欲しくなかった。
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