君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

文字の大きさ
2 / 125

私はエレノア十九歳

しおりを挟む
 目覚めると、私が実家から連れてきたメイドのミサとリリーが泣きそうな顔をしていた。

「奥様! 大丈夫ですか?」
「ああ……良かった」

 私が小さな頃から家族のように一緒に過ごしてきた二人。
 結婚することが決まったら、二人とも一緒に来たいと言ってくれた、私の優しい姉のような存在だ。
 あーあ。あの初夜の日にあの男に言われたことを知ったら、この二人は悲しむだろうな……

「奥様、まだ痛みますか? 三日間も目覚めなくて心配していたのです」
「大丈夫よ。水が飲みたいわ」

 リリーがすぐに水をくれる。ああ、水が美味しい!

「旦那様をお呼びしましょうか?」
「ミサ、気分が悪くなりそうだから呼ばなくていいわ」
「しかし、奥様が目覚める前に旦那様が何度もこちらの部屋にいらしたのです。とても心配そうにしていましたわ。目覚めたことくらいはお知らせした方がいいのでは?」
「……知らせなくていいのよ」

 顔だけ男に一途な恋をしていたはずの私の反応に戸惑う二人。
 前世の記憶が戻った今、あの男の顔すら見たいとも思わない。
 
 私、エレノアは十九歳。夜会で出会った、顔だけはカッコいいロジャース伯爵二七歳に、ちょっと優しくされただけでコロッと落とされ、私に激甘の両親を説得して結婚までしてしまった元伯爵令嬢。
 こちらから縁談の話は持っていったのは悪かったが、あんな態度を取るくらいなら縁談を断って欲しかった。

 ロジャース伯爵家は、亡くなった前伯爵夫妻の多額の借金で没落寸前だった。対してエレノアの実家は商売で成功している大金持ちの伯爵家。エレノア自身も金儲けの好きな両親に刺激され、投資などで成功して個人資産を沢山持つ令嬢だった。

 そんな金持ちエレノアは、相手が貧乏なことは全く気にしていなかった。
『お金は私が持っているから大丈夫。愛があれば、貧乏なんて関係ないわ』と言っていたのだ。
 頭の中がお花畑の過去のエレノアをぶっ飛ばしてやりたい……

 お金は大切よ! 前世アラフォーだった私は、不景気とか就職氷河期を体験してるんだからね。
 エレノアは金儲けの才能はあるのに、男を見る目は全くなかったようだ。

 しかし、あの見た目だけの男にあんなことを言われて、頭の中がお花畑のエレノアは余程ショックだったらしい。
 それで前世のアラフォーのおばちゃんの記憶が戻るなんて……
 なんで結婚しちゃってから記憶が戻るかなぁ?
 もっと前に記憶が戻っていたら、あんな見た目だけのビンボー男なんて相手にしないのに!
 
 ああ、神様ぁー!どうして今なのよぉぉ。
 気分を落ち着かせるために水で喉を潤す。

「お水は美味しいけど気分は最悪ね。これからはちょっとした戦いが始まるけど、二人ともよろしくね!」
「戦いですか……?」

 リリーが不思議そうな目を向けている。

「戦いに備えて、今から忘れ物を取りに実家に行きたいのだけど、いいかしら?」
「奥様、目覚めたばかりでそれはいけませんわ」
「そうですわ。無理はしないで下さいませ」

 ミサもリリーも過保護だからそう言ってくると思った。
 しかし前世の記憶が戻ったした私は、体中からパワーがみなぎっている。怒りからくるパワーがメラメラと!

「私は元気よ。どうせ移動は馬車だから大丈夫!
 実家のタウンハウスまで三十分くらいだし、ついでに実家で療養してくるわ」

 私はいつでも出掛けることが出来るようにと、自分の馬車を持って嫁入りしていた。
 急に出掛けるからと、誰にも文句は言わせないわよ!

 実は貧乏伯爵家には、ボロい馬車に疲れ切った年寄りの馬、ヨボヨボのおじいちゃんの御者しかいなかったから、私の実家から最新の豪華な馬車と立派な馬、優秀な馬丁に御者も連れてきたのだ。
 いくら大ベテランだからって、あんな腰の曲がった爺さんに御者をさせるなんて信じられないよ。馬車の高齢者講習があったら、絶対に引っかかってると思うんだよね。
 恐らく貧乏伯爵家では、安い給料しか払えないから若い人は働きに来てくれないのだと思われる。
 ああ……、この伯爵家のことを考えたら涙がいっぱい溢れちゃう。

 目覚めたばかりだが、すぐに行動したくてしょうがなかった私は、戦いに備えて準備をすることに決めたのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ! ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。

クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。 そんなある日クラスに転校生が入って来た。 幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新不定期です。 よろしくお願いします。

婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい

神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。  嘘でしょう。  その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。  そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。 「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」  もう誰かが護ってくれるなんて思わない。  ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。  だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。 「ぜひ辺境へ来て欲しい」  ※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m  総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ  ありがとうございます<(_ _)>

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。

クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」 平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。 セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。 結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。 夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。 セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。 夫には愛人がいた。 愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される… 誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...