君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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続きが気になる

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 金切り声を上げたと思ったら、逆上したアブスがペンを振り上げて私の方に向かって来た。



 ヤバい…!刺される……



 私がそう思った時…



「離せ!この女だけは許さない!」

 私に迫る直前で、アブスは振り上げた手をガシッと掴まれて抑え込まれていた。


 私を助けてくれたのは、隣に座っていた伯爵様…


 ではなく、私の最も信頼する護衛騎士のレイクス卿だった。


「子爵様。私の主人に危害を加えようとしたこの女を、縄で拘束することをお許し下さい。」

 レイクス卿が低い声と鋭い目つきで、子爵に確認を取っている。

「構わない。
 夫人、本当に申し訳ない。」

 狂った娘を悲しそうな目で見る子爵。

「離せ!この女のせいよ!私はこの女がいるから愛されないのよ!許さない。
 アラン様を1番愛しているのは私。私だけがアラン様の妻に相応しいのよ!
 アンタなんてさっさと消えろー!」

 狂って大声を上げるアブスは怖すぎる…
 目がイッてるから!

 鬼嫁として舐められないように、いつもならガツンと言い返すところだけど、流石に精神的に病んでいる人に言い返す気にはならないわ…。

 レイクス卿と他の騎士達は、さっとアブスを縄で拘束した。

「子爵様。先程から私の主人を罵倒し続けるこの女の口を塞いでもよろしいか?」

「…ああ。頼む。」

 アブスは煩すぎたため、猿轡をされてしまった。
 
「お嬢、大丈夫ですか?」

「ええ…。ありがとう。」

「いえ。私達が付いているので、お嬢は心配しないでください。」

 困った時のレイクス卿…。流石だわ。
 
 レイクス卿は、まだ私が幼かった頃には子守までしてくれていた護衛騎士だ。
 


「エレノア…、大丈夫か?」

「はい。大丈夫です。」

 アンタいたのね…。すっかり伯爵様の存在を忘れていたわ。


「アブス子爵。不貞をした上に、私の愛する妻に危害を加えようとするなんて、この女は異常だ。
 離縁後も私達に何かをしてくる可能性がある。子爵家でしっかり監視するようにしてくれ。」

 あー、はいはい。外野に向けての愛妻家アピールがまた始まったわ。

「そのつもりです。これ以上罪を重ねさせる訳にはいきませんから。
 領地に連れて帰って療養させるか、修道院に行かせるかは、家族で話し合って決めたいと思います。どちらにしても、もう社交の場には出しません。
 離縁届けのサインは、今はこんな感じで難しいので、後日届けるようにしてもよろしいですか?
 何から何まで本当に申し訳ありませんでした。」

「構わないが、出来るだけ早く頼みたい。」

 この伯爵様はそこまで急ぎで離縁したいのか。

「はい。出来るだけ急ぐようにいたします。」

「子爵様。御令嬢をお医者様に診せてあげて下さいませ。」

「はい…。そのように致します。
 夫人、本当に申し訳ありませんでした。」

 縄で拘束されたアブスは、謝り疲れたような子爵と涙目のババア、終始険しい表情でいた専属メイドのエマに連れられて帰って行った…。






「義姉さん、無事に済んで良かったね。」

 アブス達が帰った後、部屋の隅に待機していたギルに話しかけられる。
 裏方に徹していたギルは、アブスのあんな姿を見ても慌てる様子もなく、冷ややかに傍観していた。

「ギル…。義姉さんはね…、一瞬殺されるのかと本気で思って、いい歳して怯えてしまったのよ。
 ギルはいつも冷静ね。」

「そう…?私なりに義姉さんに危害を加えようとしたあの女には腹を立てているよ。
 でもあんな風になってしまったら、報復は出来ないからね。
 今日は手練れの騎士で義姉さんの周りを固めておいて良かったよ。」
 
「ありがとう…。ギルがいてくれて良かった。」

「そう言ってくれるなら、これからも義姉さんの側にいるから。」

「ふふっ!そんな風に言ってもらえて義姉さんは嬉しいけど、シスコンだって周りに勘違いされないように気を付けてよ。」

「シスコン?はあ?何でだよ!
 それより義姉さん…、随分とあの生々しい動画を真剣に観ていたようだったけど、続きが気になる?今から観る?」

 結構楽しんで観ていたのがバレてた?
 だって、昔よく見ていた昼ドラみたいだったんだもん。何となくドロドロしていたし。

「み、見ないわよ。
 でもあの動画のおかげで、無事に離縁出来そうだから本当に助かったわ。ありがとね!」





 その1週間後、アブスのサインが記入された離縁届がロジャース伯爵家に届くのであった。



「エレノア、アブス子爵家から離縁届が届いた。
 子爵からは謝罪の他に、慰謝料は2千万ユールを支払いたいという内容で手紙をもらった。
 あの女については、病気で修道院に入るのも難しい状態らしいから、これからは領地でずっと療養させることにしたらしい。
 これでいいだろうか?」

「よろしいと思いますわ。
 子爵家はそこまで裕福ではないでしょうから、2千万ユール支払って下さるだけマシだと思います。
 御令嬢はお気の毒でしたわね…。」

「あの女のことはもう忘れよう。
 子爵家にはそれに同意するという内容で手紙を出しておく。」

 嬉しそうな表情の伯爵様を見るのは久しぶりね。
 アブスという名の悪霊から解放されたのがよっぽど嬉しいみたい。

 ふふ!伯爵様が元気で何よりだわ。

 私の今後の計画のために、これからもずっと元気でいて下さいませ、伯爵様…。
 




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