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新人魔女の魔力暴発計画(5)

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「リッカ様。今日もここで特訓をするのですか?」

 いつの間にかリッカの影から出てきた使い魔のフェンが、リッカの足に身体を擦りつけながら問いかけてきた。そうだった。フェンの魔法の特訓もしてやりたいと思っていたのだ。リッカはしゃがみ込みフェンを優しく撫でる。

「今日は、リゼさんに言われた魔道具の作成に集中したくてここへ来たの。きっと作成には時間がかかるわ。その間フェンは暇でしょう? だから、一人で魔法の特訓をしてみない?」

 リッカの提案にフェンは驚いた顔をした。フェンは、使い魔としてリッカのために尽くしたいと考えている。そのため、主人であるリッカから離れるつもりなどなかったのだが、一人での特訓も悪くないと思えた。リッカと一緒に居たい気持ちと、強くなるための特訓とを秤にかけ、フェンは後者を選んだ。

 リッカは頷くと、足下の土に小さな魔方陣を描いていく。

「今、特訓相手を出すから」

 リッカの言葉に、フェンはじっと魔方陣を見つめる。魔法陣を描き終えたリッカが、魔法陣に手をかざすと、魔方陣がぼんやりと発光し始めた。リッカが魔力を流しているのだ。

「〈従者土塊セバンツーチ〉」

 リッカが魔法を唱えると魔法陣が激しく輝きだした。しばらくすると、魔法陣の中心がこんもりと盛り上がり始める。やがて、せりあがった部分から土の塊がポロリと落ちたかと思うと、一握りの土の塊がもぞもぞと動き始めた。

 その様子を、リッカとフェンはじっと見守る。土の塊は、やがて人のような形へと変化していき、そして出来上がったのは土人形だった。大きさはリッカの足首ほどまでしかない。

 フェンが土人形を見つめていると、土人形はキョロキョロと周囲を見渡すように身体を動かした。どうやらちゃんと動くようだ。リッカは満足そうに頷くと、使い魔のフェンに向き直る。

「これは、ゴーレム。本来は、荷物を運んだり、周囲の警戒をさせたり、外で活動する時のお手伝い要員に使うの。でも、自由に動き回ることができるから、フェンの特訓相手に丁度いいと思うわ」

 リッカはそう言うとゴーレムに指示を出す。すると、ゴーレムはリッカの指示通りフェンの前に立ちふさがった。

 フェンはジッとゴーレムを見つめ、攻撃を仕掛けてくるように促すために低く唸って威嚇する。しかし、ゴーレムは仁王立ちの姿を崩さない。

「その子は自分からは無闇に攻撃したりしないの。攻撃よりは防御型。だから、フェンが攻撃するまでは動かないと思うわ」
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