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第16章
第15話 ご相談らしい 2
しおりを挟む「パトリシア…失敗したね」
「ええ、鑑定の採用人数が少な過ぎよね」
私の見通しが甘かったのかしら?
せいぜい応募してきても千人来るか来ないかで見積ってたし。
「…だけど三千とかあり得ない」
ぼそっと、そんな事を呟いてしまったらセルバスが私の言葉に反応した。
「へ?」
「あら、気付いた?」
「…まあ気付いたわね」
それでも多すぎよ。
街の人口は約一万弱。
街での警備の採用枠が五百人。
「人数がバカ」
「多いことには困らないだろ?」
「何を言ってますか!」
お、ガウェインが声を荒げるなんて珍しいわ。
「ガウェイン隊長、五月蝿い」
「し、失礼しました」
大声出したガウェインは私たち二人に頭を下げる。
「ですが、本当に!大変なんです」
まあそりゃ~大変か。
雇った鑑定士は十人。
その鑑定士達が三千人の鑑定するのは辛いわよね。
でも私の鑑定をあてにされても困るけれどねぇ………仕方ない。
「ガウェイン、応募してきた人達の履歴書は?」
「は、セルバス」
「分かってるわよ。はい、これが履歴書よ」
そう言いながら、セルバスがマジックバッグから書類をどさりとテーブルに置いた。
「あら、手回しが良いわね」
「まあ…なんと言うか、すみません」
済まなそうに言っても、ちゃんとあてにしてる所……完璧に私をあてにしてたわよね?これ。
「分かった。で、これを鑑定するのね」
どさりと、テーブルに置かれた書類を一枚つまみ上げて、セルバスの目の前でヒラヒラと振りながら確認する。
「ええ、お願いしたいのよ」
「……」
「パ、パトリシアこれを今からかい?」
「ええ、ルース。その様うよ、ねえ…ガウェイン?」
横目でチラリとガウェインとセルバスを見る。
「い、いえ。今からでしたらパトリシア様にご負担が。ですから明日からお願い出来ますでしょうか」
「…明日からね。分かったわ。やっておくわ。これ、振り分けたら連絡するわ」
「ありがとうございます」
「あの鑑定士たち本当使えなかったよの。存外、悪い人らでは無いのだけれどねぇ~」
そりゃそうよ、町に入れるんだから悪くはないでしょうよ。でも…使えなかったとは?
「そう…なのね。でも、なんで?」
「紙ベースじゃ、全く人を鑑定できないらしいわよ彼らは」
「えっ? マジですか?」
「マジよ」
「で、人を一人づつ鑑定してくれと頼んだらそれも嫌がったんです」
「へっ?」
「あいつら全員、逃げましたよ」
ああ、それで使えなかった!なのね。
「要は、人数が多くて怯んで逃げたって言うのが正解かしらね」
「なんか、違う。私はちゃんと…」
「ええ、パトリシア様はちゃんと鑑定士を見極めて、あれらを採用したのは存じ上げてます」
「だけどねぇ……人柄迄は鑑定出来ないものなのねぇ~と改めて分かったわ。ほら、あたしたちを決める時も一人居たじゃない?」
「ああ、居たわねぇ…」
碌でもない人が一人。
「でも、鑑定士の十人全員ってそれは…落ち込むわ」
「パトリシア、そう落ち込むな」
「ルース、でも…」
「まあ、応募人数が多いのも原因かと」
「そうよぉ~、街に住む三千もの人が、騎士に成りたいって応募してくるなんて、だあ~れも思わないでしょうし」
「まあ、そうなのかしら?」
「そうよぉ~これなんて見てよ……あら?これ、やだ!なにこれ…子どもが応募してるし」
「お、本当だ。これは…良く見直さないとだな」
「そうねぇ……はぁ~ごめんなさい。私も書類の判別するの手伝うわ」
「セルバス、いいわよ。これは私が鑑定するわ」
なんか、意地になってしまう。
けど…流石に子どもは採用しないけどね。
まあ子どもでも、何らかの仕事したいならなにかしら考えるけど。
「ではお任せ致します」
「それじゃ、私たちはこれで暇させて頂きます」
「ええ、おやすみなさい。二人とも」
「明日も宜しく頼む」
おやすみなさいと挨拶を交わし部屋に残った私とルース。
「はぁ~これは……参ったわねぇ。間違いなくこれは私のミスよねぇ」
「まあ、あの鑑定士を探して採用したのは僕達だからね。でもパトリシアだけのミスではないよ」
「でも、ルース」
「気にしたらいけないよ、パトリシア。これは僕のミスでもあるしね」
「………でも」
なんか悔しいわ。
「なら、いっそう応募人数枠増やす!」
「へ?」
「マジ?」
「マジよ!」
「まあ、それもいいかしら?ねぇガウェイン」
「それは……」
あら、ガウェインが悩み出したわ。
「ほ、ほら、もう時間も遅いよ。この話はまた後日改めよう。ね、パトリシア僕らはもう休もう」
「そ…そうね。休んで明日これを片付けるわ」
ルースが話を切り上げてしまったので、また改めて話をすることに。
でも、鑑定は明日でもやってしまおう。
採用人数はまたガウェインたちと話せば良いものね。
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