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第4章 ここから始まる勇者様?

三十五日目② 木工ギルドにて

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 依頼内容の書かれた書類に目を通し、問題が無いとみんなも判断してくれた。
 ということで契約書にサインをして、正式に薬師ギルドの指名依頼を受けることにした。

 依頼自体は完成品の納品の為、素材はこちらで準備することとのこと。
 その辺は優しくないな。
 まあ、足りなきゃ買えばいいけど、ここはやっぱり採取して作らないと面白みがないよね。

 それと報酬の内訳はこうなっていた。

——————
 
報酬:金貨440枚
・簡易薬物作業台……1200 ×20 =24000=金貨240枚
・精製水蒸留装置……1000 ×20 =20000=金貨200枚

——————

 うん、やっぱり良く分からない。
 これに月額5%入るんだから、かなりやばいことになりそうだ。

「カイト。これってつまり、薬師ギルドからの定期収益ってこと?」

 デイジーが言っていることが、一番的確に状況を説明してくれている。
 ぶっちゃけて言えばそうなんだよね。
 まだ俺のレシピが充実していないから、回復ポーション(低)までしか作れない。
 これでレシピを増やすと、収益はかなり上がってくると思う。
 正直回復ポーション(低)でも大分稼げそうだけど……

「キャサリンさん、とりあえず今日は休養日なんで、明日から対応しますね。」
「わかったわ。薬師ギルドにもそう伝えておくわ。」



 俺たちは次の目的地の木工ギルドへと向かった。
 木工ギルドも、東区職人街の一角になり、実はそんなに遠くは無かったりする。
 歩いて10分くらいだろうか、木工ギルドらしき建物が見えてきた。
 正直、木工ギルドというよりは木材加工所といっても過言じゃない見た目をしていた。
 裏手は大きな倉庫兼加工場となっているみたいで、大工職人やらその他職人がひっきりなしに出入りしていた。
 これまた冒険者ギルドとは全然違う雰囲気を醸し出していた。

 木工ギルドの会館に入ると、木材のいい匂いがしてきた。
 なんというか、ものすごく落ち着く匂い。
 中で働く人も人族だけじゃなく、ドワーフに獣人族、エルフ族まで働いていた。
 それに合わせてかわからないけど、訪れる人も千差万別だ。
 本当に人種の坩堝だった。

 受付に向かうと、エルフ族と思われる女性が対応をしてくれた。
 エルフ族と言ってもほとんど見た目は俺たちと変わらなかった。
 違うとすれば容姿端麗とちょっと耳がとんがっていることくらいか?
 ただ、なんだかんだ言ってエルダもデイジーも美人さんだから、どぎまぎすることはなかった。
 耐性が付いてきたのかも知れない。

「いらっしゃいませ。当館館のご利用は初めてでしょうか?」
「そうですね、初めてです。」
「では身分証を見せていただけますか?」

 受付から身分証の提示を求められたので、冒険者証を提出した。
 俺の名前を見るなり、すぐに上司に確認を取っていた。
 まさかそれって偽物とか?!

 しばらくすると、受付嬢も戻ってきて無事に冒険者証を返却してもらえた。

「いや~、持ったまま席を立ったから、一瞬焦ったよ。本物で間違いないですよね?」
「はい、申し訳ありません。確認が取れましたので問題はありません。それでは本日の御用件をお伺いできますでしょうか?」
「えっと、家の増改築をしたいと思いまして、設計と見積もりをお願いできますか?」

 俺は本題を話し始めると、受付嬢は驚いた顔をしていた。
 どうやら俺の顔が幼く見えたらしく……いや、若造だけどさ。
 そのため、ちょっとした家具の購入か、素材納品とかと思ったようだ。
 増改築となると、それなりの金額になるからだ。
 受付嬢からは訝しむ視線を投げかけられていた。

「かしこまりました。では設計担当をお呼びしますので、そちらのテーブルでお待ちください。」

 指差された方には、応接セットのようなテーブルと椅子が準備されていた。
 おそらくこれも、木工職人による手作業なのだろうか。
 商品展示を兼ねているのかもしれないな。

「ねぇ、ポール。この椅子と机、いいと思わない?」
「確かにな。座り心地も良いし、触り心地もいいな。」

 デイジーとポールは自室に置く家具を見ていた。
 端から見ると、新婚夫婦が家具を選んでるようにしか見えないな……
 まさか……

「カイト、変な勘繰りはしないの。」
「うっ……」

 俺が変な事を考えてるのを察したのか、エルダに耳を思いっきり引っ張られた。
 なんでみんなにばれるんだろうか……

「でも確かにこの机と椅子もいいわね。って、金額書いてた……。うん、見なかったことにするわ。」

 エルダが一瞬にして値札から目をそらした。
 俺もそっと見てみたけど、さすがに手を出す気にはなれなかった。
 今のままでも十分すぎるからだ。
 もし住人が増えたときに改めて考えよう。

 しばらくすると、奥の階段から知っている人が降りてきた。

「おうおうおう、会議以来かの、カイトの坊主。」
「ご無沙汰しています、エドワードさん。」

 降りてきた人はこの木工ギルドのギルドマスター、エドワード・ブラウンその人だった。
 相変わらず細マッチョで良い体をしている。
 これで、もうすぐ70歳だっていうんだから、理不尽だ。

「で、カイトの坊主、今日は家の増改築だって?どこの家だ?」
「はい、職人街にある、鍛冶場付きの一軒家です。」
「もしかして、シャバズの紹介か?」
「そうですね、紹介してもらいました。」

 それを聞くと、エドワードさんは何やら考え込んでしまった。

「よし、まずは俺が話を聞こう。」

 そう言うと、エドワードさんは俺たちの前に座ったのだった。
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