つれづれなるおやつ

蒼真まこ

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だましあいコンビニスイーツ

朝の憂鬱とスイーツ

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「もう朝かぁ……。会社、行きたくない……」

 好きなものを食べて、楽しい海外ドラマを見て十分に満足したら、明日も元気に出社できるはず……。

 と思っていたのに。

 朝日が昇って、朝が来て。今日も一日始まると思うと、どうしてこんなにも憂鬱なんだろう。

 普段なら、ここまで出社に対する拒否反応はでない。会社に行くことはすでに習慣化してるし、頑張って働いて月に一回お給料をもらえるのは喜びでもあるし。

「昨日やらかしちゃったもんなぁ……」

 書類の不備のせいで迷惑をかけた同じ部署の人たちには、すでにお詫びしてある。「気にしないで」とは言ってもらえたけれど。

「だからといって、けろっとした顔で出社しにくいよね……」

 昨日は皆の前で、神澤部長にこってり叱られた。怒られて当然だと思うし、反省もしてる。

「本当は皆、心の中では怒ってるのかも。ああ、会社に行きたくないよ……」

 体調不良でもないのに、会社に行きたくないという理由で仕事を休めば、かえって迷惑になることはよくわかっている。私の分の仕事を誰かが負担しなくてはいけないのだから。

「ここでグズグズ言っててもしかたないっ! 頑張って今日もお仕事だ」

 仕事でミスをしたなら、頑張って働いて、仕事で信頼を取り戻すしかない。

 自分に気合を入れてベッドから飛び降りると、洗面台に直行し、冷たい水で顔を洗った。ひんやりとしたお水のおかげで、すっきり目覚めた気がする。
 手早く身支度を済ませると、朝食を摂るためキッチンへと向かった。
 朝はしっかり食べていくタイプだ。朝食は一日の始まりに必要なものだと思うから。

「うーん、何食べよう?」

 いつもなら、トーストに目玉焼き、ヨーグルトが定番だ。でも目玉焼きは昨夜食べたところだし、パンもご飯も麺類もストックがなかった。
 昨夜、サンピースで食パンも買うつもりだったのに、買い忘れてしまったのだ。スイーツを何にするか悩んでいたせいで。

「昨日買ったシュークリームならあるんだけどな。でも朝からシュークリームって……」

 いくら甘いものが大好きでも、朝からスイーツはちょっと気が引けるし、胃にもたれたらどうしようって心配もある。
 けれど簡単に食べられそうなものは他にはなかった。ぐずぐずしてたら遅刻してしまう。

「いいや。シュークリームで朝食にしておこう。カロリーの分、しっかり働くってことで」

 お供にインスタントのブラックコーヒーを用意して、サンピース特製のシュークリームの包みをばりっと開封した。

「いただきます!」

 柔らかいけれど、適度に弾力があるシュークリームの皮にかぶりついた。中からカスタードクリームとホイップクリームが、おはようと言わんばかりに飛び出てくる。
 カスタードクリームとホイップクリーム。種類の違うクリームなのに、本当に相性がいいったら。

「ん~。朝でもやっぱり美味しいっ!」

 甘さ控えめだからか、朝一番でも美味しくいただくことができた。極上のクリームの味わいとブラックのコーヒーは文句のない相性で、ぺろりと平らげてしまった。

 本当はもっとゆっくり、味わいながら食べたかったけれど、ベッドで悶々と悩んでいたせいで時間がない。
 でも大好きなサンピースのシュークリームのおかげで、少しだけ元気が出た気がする。

 うん、今日も頑張れそうだ。

「だけどやっぱり甘いものは、落ち着いた時間に食べたいね。今度から朝食のストックはちゃんと用意しておこう」

 準備不足な自分を戒めながら、自宅のアパートを飛び出し、会社へと向かった。

「おはようございます。昨日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 オフィスに入ると、朝の挨拶と共に昨日の失態を改めて詫びた。

「下村さん、おはよう。昨日はよく眠れた?」
「ドンマイ、ドンマイ。失敗は誰にでもあるからさ」
「部長にだいぶ怒られてたから心配してたんだよ。大丈夫?」

 予想に反して、同じ部署の人たちは私のことを温かく迎えてくれた。

 あれ。昨日のこと、怒ってないの? 
 
「神澤部長が早めに対処してくれたからね」
「そうそ。怒り方はちょっと酷かったけど」
「あの言い方はちょっとナイよね~」

 皆の前で、神澤部長にこってり叱られたせいだろうか。多くの人は私のことを心配してくれていた。

「今日も仕事はたくさんあるから、頑張ろうね」

 先輩の中野さんに声をかけられ、私は元気よく返事をした。

「はい、今日も頑張って働きます!」


 

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