極道恋事情

一園木蓮

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紅椿白椿

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 次の日、鐘崎と紫月の二人は一之宮道場にて父親たちに完成の報告を行った。また、鐘崎組の組員たちへの披露目は次の大安の日に決められた。
「お陰様で紫月の白椿が完成しました。ご尽力賜りました綾乃木さんはじめ、深いご理解をくださった親父たちに心から感謝を申し上げます」
 二人は打診の時と同様に黒紋付き姿で揃って頭を下げた。
「おめでとう、遼二、紫月」
「綾乃木君にもたいへん世話になって、私たちからも感謝を申し上げるよ」
 僚一と飛燕もまた準礼装の着物姿で、綾乃木は彫師の作務衣姿でそれぞれ祝いと感謝を交わし合った。
 一之宮家の客間は純和風の畳敷きの間、いずれも和装の五人が揃うと荘厳な雰囲気である。
 紫月が肩に背負った白椿が披露されたところで僚一と飛燕から祝いの品が贈呈された。
「飛燕と俺からの祝いの気持ちだ。お前たち夫婦のこれからが、より一層幸多きものになるよう祈っている」
 黒塗りの大きな盆の上には平たい和紙の包みが二つ、一目で着物であろうことが分かった。
「開けてみろ」
 驚きと感激で互いの顔を見合わせている息子たちに僚一と飛燕が包みを開けてみろと促す。
「ありがとうございます」
 包みを解くと揃いの紋付き袴が現れて、二人は驚きに目を見張ってしまった。
「お前たちが今身につけている紋付きとは少々趣きを変えてな」
「肩の家紋は鐘崎家のもので変わりはないが、背中の方に俺たち父親の思いを込めたんだ」
 そう言われて背中の紋を確かめると、そこには椿の花が染められていた。しかも二人の刺青と同じ形の花だ。
「遼二のには白椿、紫月のは紅椿だ」
 つまり互いの椿を互いの背中に背負って、生涯共に歩いていけという意味だ。
 なめらかな漆黒の絹地に浮かび上がる紅椿の周りには白い絹地、白椿の周りには赤い絹地で丸くくり抜かれていて、ここでもそれぞれの椿を包み込むのは互いの色が使われている。僚一と飛燕の深くあたたかい思いが充分に込められているものだった。
「親父……ありがとうございます……! お二人のお気持ちに恥じないよう精一杯歩んでいきます!」
「二人で生涯大切にいたします!」
 鐘崎と紫月は感激に打ち震える思いで再び丁寧に頭を下げた。
 ――と、ここで僚一が『入って来てくれ』と声を掛け、後ろを振り返ると、襖の向こうからなんと周と冰が顔を出したのにまたまた驚かされた。
「氷川!」
「冰君も……!」
 周ら二人もシックな和服姿というのにも驚きだ。きっと大切なこの日の為にとそんな出立ちを選んでくれたのだろう友に、胸が熱くなる思いでいた。
「実はな、その紋付き袴はいわば引き出物でいうところの引き菓子のような物なんだ。本当の祝いはこっち――」
 僚一の言葉と共に今度は源次郎が現れて、しかもその手には先程の着物が乗っていた盆よりも更に大きな桐箱が抱えられている。いったい何が入っているのだろうと思うほどに仰々しいくらいの立派な箱だ。つまりこちらがメインの祝いと言いたいのだろうことだけは何となく分かったものの、鐘崎と紫月にとってはサプライズに次ぐサプライズの連続に、互いに顔を見合わせながら瞳をパチパチとさせられてしまうほどだった。
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