ANGRAECUM-Genuine

清杉悠樹

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小話 ホノカ(31ー32の間)

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「セオドール、このランプ持ってくねー」
「え、お揃いのパジャマの他に、そのランプまで持っていくんですか?」
 お泊り準備をしているホノカを椅子に座り眺めていたセオドールは驚きの声をあげた。

 場所はホノカとセオドールの寝室。新年祝賀行事を途中で抜け、城から帰ってきたホノカ達。
 いつもならホノカはセオドールと一緒に眠るのだが、今日ホノカはエマさんと同じ部屋に泊まるという。アンナお義母さんの提案にホノカも即座に力強く頷いた為、今晩はセオドールとは別々に眠ることになったのだ。

 その提案を聞いたとたん難色を示したセオドールに、エマさんには聞こえないようホノカは夫に諭した。
「だって、あんな禿げたエロ爺に押し倒されそうになったんだよ?絶対に怖かったに決まってるしっ!私だったら、泣いて泣いて眠れないよ。そんなことがあった夜に一人になるなんて絶対に嫌。セオドールにくっついて離れないよっ。でもエマさんはレナート兄さんと婚約したとはいえ、まだ一緒の部屋には出来ないでしょ?だからエマさんを一人にしないために私が一緒に居てあげるの」
 そう言われてはセオドールも駄目と言えるはずもなかった。

 ホノカがエマさんと客室で夕食を済ませ、この部屋に隣接する浴室でさっさと入浴を済ますと、最近お気に入りの猫パジャマを手に取り、もう一つ新品のピンクのパジャマも手にしていた。
 着替えがないエマさんに貸すことはセオドールにも予想が付いた。が、マギ課で試作品として作られた発光石ランプもで持っていこうと言い出したことに少し驚いた。
 中に使われている魔法石が高いことはホノカも知っている筈だが、三種もの魔力を貯めた特別な石だ。よってホノカが思っているよりとても高価なランプであることは間違いない。セオドールは怖くてレナートに値段のことは敢えて聞いていない。
 そんな高価なものが何故あるのかといえば、試作品を作った本人が気に入ったから。石の魔力か無くなれば魔力を追加することが出来るのは、今のところホノカ一人だけというのも理由だ。

「あ、ホノカ。少し待ってください」
 高価なランプとパジャマを手にし、早くもドアから出ていこうとするホノカを呼び止めた。
「なあに?」
「忘れ物です」
「えっ、忘れ物?」
 椅子から立ち上がりドアの傍に立つホノカへと歩み寄ったセオドールは、両手に荷物を持ったままのホノカの無防備な唇に己のそれを軽く合わせた。

「よい夢を」
「あ、あ、ああああ、ありがと、セオドール。それじゃあ行ってきます」
 軽いキスに照れまくりながらホノカは客室へと行ってしまった。

 その晩、夫婦の寝室の寝台の上には、一人寝が案外寂しかったらしく聖獣である犬のマートルを抱きかかえて眠る男の姿があったらしい。
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