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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!

21.レオナルド皇王のお願い Side.ディオ

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今日はミラルカからレオナルド皇王とローズマリー皇女がやってきた。

ローズマリー皇女とは昔からよく顔を合わせていた間柄だけど、恋愛対象として見たことは一度もなく、俺はロクサーヌしか見ていなかったから、敢えて言うなら妹のような人…だろうか?

ディアとは違って、楚々とした佇まいの姫君。
性格も控えめで、成長と共に夫を立ててくれそうな古風な賢妻と言った印象が強くなった。

家臣達の中でも彼女の評判は良い方だ。
ただ懸念事項があるとすれば、うちの変態率の高さに彼女がついてこられるのかと言う点。

そう言った点で貴族達の中ではシェリル公爵令嬢を推す声も多かった。
彼女の父親はそこそこ…いやハッキリ言おう。ドMだ。
そのため彼女は変態に対して耐性はあるし、変態に対して寛容。
まず問題なく王宮に馴染める。
そんな彼女にとっての誤算は、俺に嫌われたと言う点に尽きる。
ロクサーヌに対して嫌がらせをしたことを俺は絶対に許す気はない。

そしてヴィオレッタ王女だが、彼女は変態に対する適応能力に優れていると思う。
彼女は面白いことが大好きで、よくロキ父様のところに遊びに来ていたから。

ロクサーヌにフラれた後、俺がシェリル公爵令嬢を嫌っていると言うこともあって、ローズマリー皇女かヴィオレッタ王女のどちらかが正妃として迎えられるのだろうと周囲は認識し始めた。
俺もきっとそうなるのだろうと思っていたのに、思いがけずルーセウスと結婚することができて幸せだった。

だから…俺達の仲を応援してくれるヴィオレッタ王女との婚約は早々見直す気はないのだけど────。




「ディオ王子。単刀直入に言う。ローズマリーと婚約してほしい」
「すみませんが既にヴィオレッタ王女と婚約しているので、お断りさせていただきます。アンシャンテの心象を悪くするようなことを安易にできるとは陛下もお思いにはならないでしょう?」
「それはまあその通りなんだけど、側妃ならいいだろう?」
「いえ。特に必要とは思っていませんので」
「そこを何とか!ディオ王子も知ってるとは思うけど、ローズマリーはずっとディオ王子を好きだったんだ。でも健気にロクサーヌ嬢との仲も見守っていた。二人を邪魔したこともなかったし、そう言った意味でも側妃には向いてると思う!」

それはまあ確かにその通りではある。
シェリル公爵令嬢とは違って彼女はロクサーヌを攻撃することもなかったし、俺とロクサーヌの時間を邪魔することなく挨拶だけして帰る日もあった。
健気といえばその通りではある。

「もちろんルーセウス王子との仲だって応援できるよ!どうかな?」

ここでそれを持ち出すのか。
なるほど。
カリン父様の意見も一理あった。
でも…。

「レオナルド陛下。私も戴冠を控えて忙しい身です。そこを考慮していただけないでしょうか?」
「でもだからこそ戴冠式でお披露目もできて一石二鳥!正妃と側妃を迎えるって公表できるから、国民も安心できるし、幸先はいいよ!」

それはその通り。
だからこそそこでルーセウスとヴィオレッタ王女をお披露目するのだ。
そこに追加は必要ない。

「そこは若輩者ながら色々考えていますので、どうぞお気遣いなく」

サラッと流そうとしたけど全然引いてもらえない。

「まさかとは思うけど、シェリル公爵令嬢を迎えようなんて考えてないよね?」
「そこは大丈夫です」
「本当に?」
「はい。婚約者はヴィオレッタ王女だけですよ」

ルーセウスとは結婚済みだから夫であって婚約者じゃないし、嘘は言っていない。

「……ディオ王子」
「はい」
「私がお気に召しませんか?」

ホロホロと涙を流しながら訴えてくるローズマリー皇女。
華奢な見た目でこれをされてしまうと良心が痛むからやめてほしい。

「すみません」
「お慕い…しているのです」
「繊細な貴女にここの王宮は似合いませんよ。ここは変態の巣窟ですから」

ハッキリ言った。
これなら引き下がるだろうと。
でもレオナルド皇王はそこに食いついてくる。

「何?そこがネックだったの?!」
「え?ええ、まあ」
「それなら全然問題ないよ!ローズマリーはこう見えて図太いから!」
「お父様」

レオナルド皇王をローズマリー皇女が嗜めるが、その勢いは止まらない。

「なんだ。そうだったのか。それならもっと早く言ってくれれば良かったのに!そういうことならすぐに婚約の書類を整えてくるよ!」
「いえ。レオナルド陛下。落ち着いていただけますか?」
「そうとわかれば話は早い!ローズマリー!帰って婚約準備だ!」

マズイ。ここで行かせたら取り返しがつかなくなる。
そう思った時にはシュッと麻酔針を首筋へと放っていた。

キンッ!

流石レオナルド皇王。
すぐに気づいてあっさり剣でいなしてくる。
この人の飛び道具に対する反射神経は本当に凄いなといつも感心してしまう。
まあ目的は当てることじゃないから構わないのだけど。

「ディオ王子?」
「冷静になっていただけましたか?」

ニコリと微笑むとジッとこちらを見て、次いで足元に落ちた針へと目をやり、コクリと頷いてくれる。

「勝手なことをなさるなら、次はこれで取り押さえさせていただきますので」

ロープ状の暗器を手に笑みを向けると、『そういうところはロキそっくり!』と言われた。
本当の親子じゃないのにおかしいな?
裏稼業の者達の教育がそうさせるんだろうか?
不思議だ。

「改めて言いますが、婚約の件はお断りさせていただきます」
「わかった。でも長期戦になっても諦める気はないから」
「そうですか」

まあ戴冠式でルーセウスの件が公になれば諦めざるを得ないだろうし、今引いてもらえるなら取り敢えずはそれでいい。
そう思ったのだけど…。

「取り敢えず手始めに、ローズマリーが変態の中でも大丈夫だって証明させてほしい」

先を見据えての提案がレオナルド皇王の口から飛び出した。

「そう仰られても、彼女には難しいのでは?」
「本当に大丈夫だから!ね?ローズマリー」
「はい、お父様。ディオ王子。お疑いでしたら暫く王宮への滞在を許可いただけませんか?それ次第で側妃の話を是非ご検討いただきたく」

すごく断り辛い流れで話を持ち出された。
多分ここで断ってもそう簡単に諦めてもらえないのは明白。
じゃあ受けるのかとなると話は別だ。
変に期待をもたせたくはない。

「それは私の一存ではお答え致しかねます。公務等で忙しい中ローズマリー皇女にあまり時間を取れるとも思えませんし」

困ったようにそう口にすると、レオナルド皇王は少し考えてロキ父様達への交渉は自分がすると言い、滞在期間はその際に相談してみると言い出した。

「公務の邪魔をする気はもちろんないから、10日前後で上手く調整してくるよ!」
「そうですか」

もうそこまで言うのなら任せようか?
ダメならロキ父様がバッサリ断るだろうし、その方がいいかもしれない。

なんとか帰ってもらえたけど、先のことを考えると溜息しか出なくて、ルーセウスに癒されたい気持ちばかりが膨らんでしまったのだった。



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