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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!

36.俺の妃が優秀過ぎる件

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無事にゴッドハルト到着!
二人きりの時間が終わって少し残念に思っていたら、母から思い切り往復ビンタを食らった。
叩かれるなんて一体いつ以来だろう?
メチャクチャ効いた。
でもディオの前でカッコ悪い姿は見せたくなかったから、余裕があるように見栄を張る。
全然平気だと。
嫁の前でくらいカッコつけさせてほしい。

そんな俺を心配そうに見て、ディオは誤解を解くべくきちんと挨拶してくれて、賢妻っぷりを発揮。
荷物を部屋に置くとすぐに執務室へと移動し、俺が頬を冷やしている間にサクサク机の上に積まれていた書類に目を通して仕分けてくれた。

「ルーセウス。ちょっと見てもらえるかな?」
「ああ」
「俺の基準で仕分けたから意見を聞かせて欲しい。これは王太子の判断が問われるもので、こっちが王太子妃の裁量でも良さそうなものにしてみた。こっちは単純に不備があったから差し戻し分として……これは?」

どれどれ?

「ああ、そっちは前にディオが色々教えてくれたやつを俺なりにゴッドハルトで形にしたくて、試行錯誤してる分。勉強中だからどこがどう拙いのか考えてて…(そのまま行き詰まってる感じだな。言えないけど)」
「そうか。それなら後で一緒に考えよう」

ホワッとした顔で微笑まれてウグッと胸が鷲掴みにされる。
可愛過ぎて襲いたくなるからやめてほしい。

「取り敢えず夜はルーセウスに襲われたいから、サクサク片付けよう」
「え?!」

(聞き間違いか?!)

俺の願望が幻聴として聞こえたのかと思ってディオを見ると、良い笑顔で言い放たれた。

「ルーセウス。仕事が溜まったらそれに時間を取られて二人の時間がそれだけ減るんだ。気合いを入れてさっさと片付けてイチャイチャしよう?」

どうやら幻聴ではなかったらしい。
うちの嫁が俺を乗せにかかる。

「はい。まずはコレ。ルーセウスは軍備関係は詳しそうだし、任せてもいいかな?後、過去の資料も見せてもらえたら嬉しい。それに合わせて俺もこっちを判断していくから」
「わかった」
「こっちの書類が終わったら、優先順位的にこっち。その間にこっちの書類を片付ける予定だけど、もしわからない事が出てきたら相談させてほしい」

頼りにしてると言われて俄然やる気が出る。

「それが終わったらお茶でも飲みながらこっちの勉強中って言っていた案件を一緒に見ようか。他にも改善案が必要になりそうな案件もありそうだから、一緒に考えよう。ルーセウスと話してると色々アイデアが出そうだし、普段こういうことは中々できないから凄く嬉しい」

(嫁が優秀過ぎる!)

知らなかった。
仕事ってこんなに楽しいものだったのか。
ディオとやったら三倍以上の速さで仕事が終わったし、いつもより理解度が上がった。
そういう事だったのかと目から鱗が落ちまくったし、問題点なんかも自分なりにわかってきて、それを口にしたら更にそこから議論もできて勉強にもなった。

ディオの凄いところはそこだけじゃなく、ちゃんとガヴァムから持ってきた仕事もこなして、ツンナガールで各所に連絡取りつつ指示出しもしているところ。
自国のことも疎かにしないところは本当に尊敬する。

しかも『ガヴァムからです』と届けられた資料の束を確認して、晩餐前の報告時にそれを元に父のところであれこれ活用アドバイスまでしてくれた。
どれだけ凄いんだ。
本当に俺には勿体ないくらいできた嫁だと思う。
よく落とせたな、俺。
自分で自分を褒めてやりたい。

(一生大事にする!!)

骨抜きになってる?
しょうがないだろう?
ディオが好き過ぎてどうしようもないんだから。
ディオを女達が取り合うのはしょうがないと思うんだ。
寧ろディオをフったロクサーヌ嬢がすごい。
一体何が不満だったんだ?
いや。もしかして凄過ぎてダメだったパターンか?
気後れしてしまった可能性はなくもないな。
そこでシェリル嬢からの嫌がらせもあって、身を引いたってところかもしれない。

でもそれがなかったら俺はディオとこういう仲にはなれていなかったってことだし、人生何がどう転ぶかわからないものだ。

父は俺の不足を全部補ってくれるスペシャルな嫁と言うけど、そんな色眼鏡は必要ない。
ディオがすごいのはちゃんとわかってるけど、ディオは俺なんかに癒しを求めるくらいいつも頑張ってるんだ。
俺はそのまんまのディオが好きで、ディオもそのままの俺を好きでいてくれる。
俺達はそうやって、これからも自然体で一緒にいながら笑い合っていきたいんだ。
だから絶対に────。

「別れる気はないから」

晩餐後に呼び出されて、『お前には勿体ないから、別れるのも視野に入れたらどうだ』と言われても冗談じゃない。
何がなんでもディオを手放す気はない。

「好きあってるのに、どうして別れないといけないかがわからない。絶対に嫌です」
「ルーセウス。でも二人とも王太子なのよ?しかもディオ王子はもうすぐガヴァムの王になるんでしょう?遠距離婚だと支えてあげられないじゃない」
「もちろんいつでも側では支えてあげられないけど、ツンナガールだってあるし、ワイバーンで飛んでいけばすぐだから」

たった二日だ。問題はない。

「側妃だって迎える予定だし、問題はないはず。何がダメなのか教えてもらいたいくらいだ」
「それはそうだけど、ディオ王子のお相手だって側妃より正妃になりたいって思うでしょう?」
「ヴィオレッタ王女は側妃でちゃんと納得してくれてる。それにディオが好きなのは彼女じゃなく、この俺だから!」
「…………」
「自信満々ね。どうしたらそこまで言い切れるのかが謎だわ」
「どう言われようと、ディオは俺の事が大好きだから!」
「えっと…特にどこら辺が好きって言ってくれてるのかしら?」
「癒されるとよく言われるけど、そこだけじゃなくて全部好きって感じだからなんとも…」
「……明日本人に直接聞いてみるわ。癒し系からかけ離れてる貴方に癒されるなんて、ナイナイ。絶対ないわー」

どうやら母的に俺の言葉は信じられなかったようだ。
本当なのに。




それから部屋へと帰り、待ってくれていたディオを腕の中に閉じ込め、ソファーに座りながら先程のことを話す。

「何の話かと思ったら、ディオは俺には勿体ないから別れも視野にとか、冗談じゃない。絶対別れない!」

ギュッと抱き締めて頬擦りしたら、腕の中で一瞬固まってたディオの肩から力が抜けた。

「ん。ルーセウスはやっぱりルーセウスだな。全くブレないからすごく安心する」

そう言いながらキスされて、ちょっとドキッとなった。

「明日はマリアンヌ妃に認めてもらえるように頑張るよ」
「俺が言うからディオは────」

何もしなくていいと言いたかったのに、スイッと人差し指で唇を押さえられ、口を噤まざるを得なくなる。

「ルーセウス。これは俺の問題だから」
「違っ…!」
「違わない。大丈夫。ちゃんと話せばわかってもらえるから。それより……」

そう言いながらディオがツイッと俺の方へと顔を近づけ、そのまま抱きつきながらキスをしてきた。

「ん…ふ……っ」

徐々に深くなっていくキスがたまらなく気持ちいい。
俺としかキスはしてないはずなのに、ディオはキスが上手過ぎないか?

「ディオ。俺以外とキスしてないよな?」
「してないよ」
「本当に?俺が知らないところで練習とかもしてないか?」
「ふふっ。してないと言えばしてないし、してると言えばしてるのかな?」
「え?!」

どこか艶美に微笑んで、ディオは秘め事を話すようにそっと耳元で囁いてくる。

「チェリーの茎を舌で結べたら…って聞いた事はないかな?あれ、やり始めたら癖になっちゃって、仕事中にたまにやってるんだ」
「ブホッ…」

ちょっと待ってくれ。
めちゃくちゃツボにハマった。
あんなに手際よくサクサク書類を片付けながら、口をモグモグさせて俺とのキス練習?
想像するだけですごく可愛い!見てみたい!

「ああもう、可愛い!ディオ!今すぐ抱きたい!ベッドに連れて行っていいか?」
「行儀が悪いって言わないところがルーセウスらしい」

そしてクスリと笑って思いがけないことを言われた。

「ルーセウス。ここで抱かれたい」

ここ?
今いるのはベッドじゃない。
ソファーだ。

「ここって、ソファーか?」
「そう。このままここでルーセウスの膝の上に乗りながら繋がりたいなと思って。ダメかな?」

(不意打ち過ぎる…!)

待ちくたびれてもう待てないと誘惑されて、思わず破顔してしまう。
でもおねだり自体は嬉しいから、断るなんてことはしない。
当然OKだ!

「わかった。じゃあここで愛し合おうか」

サクッとそう答えたら凄く嬉しそうに微笑まれて、『ルーセウスのそういうところが凄く好き』って言われながら柔らかく唇を塞がれた。



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