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1.プロローグ
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思えば俺はきっと我が家では不要な子供だったんだろう。
兄が一人、そしてその次に生まれたのが男女の双子。
兄は家を継ぐし、双子の姉は政略結婚に使える。
じゃあ双子の弟である俺は?
兄に何かがあった時の予備。
ただそれだけなんだと思う。
だからきっとそんな心ないことが言えたんだ。
「聖なる力が顕現した?嘘を吐くな!」
「本当です!実は今日凄い大怪我が綺麗に治ってびっくりして…」
俺がそうやって正直に力が顕現したことを報告した際、何故か父から叱責を受けた。
「聖なる力を持ってるのがエヴァンジェリンではなくお前だと?ふざけるな!どうせお前が腹の中でエヴァからその力を奪ったんだろう?!」
「そんな?!言い掛かりです!」
そんな話、聞いたこともない。
その後図書室で調べて、その力は女性特有の力ではないという記述も見つけたし、別におかしくはないと思ったのだけど……。
「ランスロット。聖なる力をエヴァンジェリンに返したか?」
「そんなこと、できるはずがないじゃないですか!」
返すも何もこれは俺自身の力だ。
その力を他者に譲渡するなんてできるはずがない。
完全に言い掛かりとしか言えないだろう。
なのに母まで一緒になって責めてきた。
「ランスロット!いい加減になさい!他人の力を奪って恥ずかしくないの?!」
「ですから、そんなことはしていません!」
「だっておかしいじゃないの!聖なる力は聖女の力。女性に顕現する力だと相場が決まっているのよ?!早く返しなさい!」
「確率的に女性に多いだけであって、男性に顕現することもあるって本には書いてありました!」
そう訴えても『嘘つき』『泥棒』『さっさと返せ』、そんな言葉を家族から投げつけられ、俺は泣いた。
そして『返せないならその力はエヴァのために使え』と言い放たれ、表向き聖なる力は姉が持っているように偽装されることとなった。
毎日俺は聖なる力を聖輝石という石に補充という形で入れさせられたのだ。
聖輝石────その名の通り聖なる力を蓄えておくことができる希少な石である。
そこに蓄えられた聖なる力は魔力がある人間なら誰でも取り出し使うことができる。
だから姉はそこに蓄えられた聖なる力を自分の力と偽り、様々な人の前で披露してその地位を盤石なものへと築き上げていった。
そして現在俺達は18才になったのだが……。
「ランスロット。私、王子にプロポーズされたの。だからもう貴方に頼る必要はなくなるわ。喜びなさい。お役御免、お払い箱よ」
満面の笑みでそんなことを言ってきた姉。
正直何故婚約が決まったら必要がなくなるのかがさっぱりわからなかった。
なのに『察しが悪いわね』と呆れたような顔で姉は俺へと言い放つ。
「王子妃になったら私はお城に上がるのよ?聖女の仕事なんてしなくて済むようになるってことくらい、理解できないかしら?」
「王子は『聖女』と結婚したいんだろ?エヴァンジェリンが好きとかじゃなく」
なら聖女としての力を示せないと困るんじゃないのかと思って言ったのに、そう言った途端一気に不機嫌になられて、『失礼なこと言わないで頂戴!』と思い切り平手打ちを食らった。
「王子は『聖女』ではなく私個人を望んでくださったのよ!ちゃんと『エヴァ愛してる、結婚してくれ』って言ってくださったもの!」
どうやら俺の勝手な杞憂だったらしい。
「全く姉の幸せも願えないなんて、どういうつもりだ?」
「そうよ!双子の姉の幸せを何だと思っているのかしら!」
「所詮盗人。元々性格が悪いんだろ」
しかもそんな感じで家族は言いたい放題だ。
俺は一応心配して言ったんだけどな。
「じゃあいざ聖女の力を示せって言われたらどうするんだよ?」
「そんなのこれまで通り、上手くやったらいいだけの話でしょう?」
「そうだ!お前がフォローしたらいいだけの話だ!」
「ちゃんと聖輝石に力を込めた物をエヴァが持っていれば問題はない」
「それにどうせそんなこと言われないわよ。王子妃に無理を言えば不敬罪だって言えば済む話なんだから」
さっきもう俺はお払い箱だって言わなかったか?
これまで通りフォローしろだなんて、舌の根も乾かないうちによく言うなと呆れてしまう。
「自分の存在意義を見出そうとしてそんなことを言い出すなんて愚かね。ランスロット。でも無駄よ。」
嘲るようにそう言ってくるエヴァンジェリン。
『お前の心配なんて必要ない』『お前の役割はもう終わったも同然』と言わんばかりの目を向けてくる両親と兄。
(これが家族のすることか?)
今まで利用するだけ利用してきてこれかといい加減腹が立った。
「もういい!皆好きにすればいいだろ?!」
どうして今までこんな家族に黙って従ってきたんだろう?
いつか『ありがとう』と言ってもらえるんじゃないかなんて、甘い考えを持っていた自分にも腹が立って仕方がなかった。
(もうこんな家知るか!俺だって好きにしてやる!)
俺はこの日とうとう理不尽に耐えきれなくなって、感情のままに家を飛び出した。
兄が一人、そしてその次に生まれたのが男女の双子。
兄は家を継ぐし、双子の姉は政略結婚に使える。
じゃあ双子の弟である俺は?
兄に何かがあった時の予備。
ただそれだけなんだと思う。
だからきっとそんな心ないことが言えたんだ。
「聖なる力が顕現した?嘘を吐くな!」
「本当です!実は今日凄い大怪我が綺麗に治ってびっくりして…」
俺がそうやって正直に力が顕現したことを報告した際、何故か父から叱責を受けた。
「聖なる力を持ってるのがエヴァンジェリンではなくお前だと?ふざけるな!どうせお前が腹の中でエヴァからその力を奪ったんだろう?!」
「そんな?!言い掛かりです!」
そんな話、聞いたこともない。
その後図書室で調べて、その力は女性特有の力ではないという記述も見つけたし、別におかしくはないと思ったのだけど……。
「ランスロット。聖なる力をエヴァンジェリンに返したか?」
「そんなこと、できるはずがないじゃないですか!」
返すも何もこれは俺自身の力だ。
その力を他者に譲渡するなんてできるはずがない。
完全に言い掛かりとしか言えないだろう。
なのに母まで一緒になって責めてきた。
「ランスロット!いい加減になさい!他人の力を奪って恥ずかしくないの?!」
「ですから、そんなことはしていません!」
「だっておかしいじゃないの!聖なる力は聖女の力。女性に顕現する力だと相場が決まっているのよ?!早く返しなさい!」
「確率的に女性に多いだけであって、男性に顕現することもあるって本には書いてありました!」
そう訴えても『嘘つき』『泥棒』『さっさと返せ』、そんな言葉を家族から投げつけられ、俺は泣いた。
そして『返せないならその力はエヴァのために使え』と言い放たれ、表向き聖なる力は姉が持っているように偽装されることとなった。
毎日俺は聖なる力を聖輝石という石に補充という形で入れさせられたのだ。
聖輝石────その名の通り聖なる力を蓄えておくことができる希少な石である。
そこに蓄えられた聖なる力は魔力がある人間なら誰でも取り出し使うことができる。
だから姉はそこに蓄えられた聖なる力を自分の力と偽り、様々な人の前で披露してその地位を盤石なものへと築き上げていった。
そして現在俺達は18才になったのだが……。
「ランスロット。私、王子にプロポーズされたの。だからもう貴方に頼る必要はなくなるわ。喜びなさい。お役御免、お払い箱よ」
満面の笑みでそんなことを言ってきた姉。
正直何故婚約が決まったら必要がなくなるのかがさっぱりわからなかった。
なのに『察しが悪いわね』と呆れたような顔で姉は俺へと言い放つ。
「王子妃になったら私はお城に上がるのよ?聖女の仕事なんてしなくて済むようになるってことくらい、理解できないかしら?」
「王子は『聖女』と結婚したいんだろ?エヴァンジェリンが好きとかじゃなく」
なら聖女としての力を示せないと困るんじゃないのかと思って言ったのに、そう言った途端一気に不機嫌になられて、『失礼なこと言わないで頂戴!』と思い切り平手打ちを食らった。
「王子は『聖女』ではなく私個人を望んでくださったのよ!ちゃんと『エヴァ愛してる、結婚してくれ』って言ってくださったもの!」
どうやら俺の勝手な杞憂だったらしい。
「全く姉の幸せも願えないなんて、どういうつもりだ?」
「そうよ!双子の姉の幸せを何だと思っているのかしら!」
「所詮盗人。元々性格が悪いんだろ」
しかもそんな感じで家族は言いたい放題だ。
俺は一応心配して言ったんだけどな。
「じゃあいざ聖女の力を示せって言われたらどうするんだよ?」
「そんなのこれまで通り、上手くやったらいいだけの話でしょう?」
「そうだ!お前がフォローしたらいいだけの話だ!」
「ちゃんと聖輝石に力を込めた物をエヴァが持っていれば問題はない」
「それにどうせそんなこと言われないわよ。王子妃に無理を言えば不敬罪だって言えば済む話なんだから」
さっきもう俺はお払い箱だって言わなかったか?
これまで通りフォローしろだなんて、舌の根も乾かないうちによく言うなと呆れてしまう。
「自分の存在意義を見出そうとしてそんなことを言い出すなんて愚かね。ランスロット。でも無駄よ。」
嘲るようにそう言ってくるエヴァンジェリン。
『お前の心配なんて必要ない』『お前の役割はもう終わったも同然』と言わんばかりの目を向けてくる両親と兄。
(これが家族のすることか?)
今まで利用するだけ利用してきてこれかといい加減腹が立った。
「もういい!皆好きにすればいいだろ?!」
どうして今までこんな家族に黙って従ってきたんだろう?
いつか『ありがとう』と言ってもらえるんじゃないかなんて、甘い考えを持っていた自分にも腹が立って仕方がなかった。
(もうこんな家知るか!俺だって好きにしてやる!)
俺はこの日とうとう理不尽に耐えきれなくなって、感情のままに家を飛び出した。
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