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第4章 杜の都
第265話 えっ!? それってもう毒じゃね?
しおりを挟むあれから3日経った。
城?
知らん。
片付けは大変だっと思うぜ?
離宮と王城の死体処理と絨毯の染み抜きな。
でもよ、俺がやった事でもねえし、城で働いてる奴らの仕事取っちまうと御飯の食い上げだろ? いや、2体には心当たりがあるがまあ誤差の内だろう。
城の公式発表は、第8王子と第4王妃の急逝。
城の中に潜んでいた鬼に王が襲われそうになったのを、2人が身を挺して守り、殺されちまったって言うのが都の住民に伝えられた美談だ。そこに居合わせた大臣たちも鬼に殺されたという処理な。
ちゃんと城働きの連中の口留めが出来てるのかは疑問だが、そいつらも命が惜しけりゃ口を滑らすこともねえだろう。
んな面倒臭え事は御偉いさんたちに任せて、俺たちはこっそり都からオサラバさ。
もう1回"聖域"に連れて行ってもらって、プラム、プルシャン、マギー、青い小鳥と合流し、海まで出て海岸沿いを北上するという計画だった。
ああ、「だった」だ。
食糧とか旅の必需品や不足分は、4日前、俺が伎芸神殿の女神像を補修してる内に仕入れてもらってるから問題ねえ。
何種類か新しくハーブを仕入れたとか言ってたな。塩も問題ないらしい。
"聖域"で3人と1羽にも会え、「良し行くか」となったんだがな。
「あ、これ落ち葉だから持ってって良いよ」って周りに落ちてる"世界樹"の葉っぱを大量に集めることになり、一緒に来てたイケメン司教と百合趣味護衛騎士と一緒に集めた集めた。
生葉の方が薬効は強いらしいが、落ち葉でも十分効果があるんだと。
因みに、「死んだ奴に煎じて飲ませたら生き返るのか?」って聞いてみたんだが、「ないない」って大笑いされちまったわ。
ああ、そうかよ。
どうでも良い時にやる気を出す【鑑定眼】さんの説明によるとだな。
【世界樹の落ち葉】
その葉は、枯れていたとしても薬効が高く、調合薬として重宝される。
"聖域"に長くあったこともあり、浄化作用も高い。
単体では効果が薄いが、他の薬に混ぜることで飛躍的に薬効を高める。
お茶として飲むことも可能。
茶殻でも、薬効は落ちるが調合薬として使える。
但し、飲み過ぎに注意。
こんなんが出てたわ。本当、俺のスキルなら俺の任意で使えるようにしやがれって思ったね。毎度毎度思う事だが、思っても改善しないのが現実だ。
んで、マギーがそれならとお茶を淹れてくれてな。
そのお茶も【鑑定眼】さんが調べてくれたよ。
どうなってやがる?
【世界樹茶】
苦みがあり、口の中をさっぱりさせる。肉料理に合う。
血圧を下げ、軽い状態異常を回復させる。
浄化作用があるので、軽度の呪いにも効果あり。
飲み過ぎると、頭痛、嘔吐、眩暈の軽度中毒症状がでる。
中度中毒症状になると、呼吸困難、意識混濁が現れる。
重度中毒症状になると、痙攣が始まり、最悪の場合、死に至る。
えっ!? それってもう毒じゃね?
って思っちまったわ。
「用法容量を守り正しくお使いください」ってキャッチコピーが勝手に頭の中を流れたね。結果を見た瞬間、思わず口の中に含んでた茶をパトリックに向けて吹き出しちまったよ。
怒られたがな。
いや、すまん。
調合で薬効が出るって漢方みたいだと思ったね。
察しの通り、この葉っぱを集めるのに丸3日かかってな、出るのが遅くなっちまったんだわ。まあ、ここでしか手に入らないものかもしれんだろ?
俺はどうでも良かったんだが、ヒルダとマギーがダメだって言うもんだからよ。気が済むまで集めたって訳だ。嫁の機嫌はこういう時にダメだって言っちまったらお仕舞いだぜ? 機嫌を直してもらうのにどんだけ気を遣わねえといけねえか……。
苦い経験から学んだのさ。
いや、3日間落ち葉ばっかり拾ってたんじゃねえぞ?
落ち葉は丸1日で殆ど集めたんだが、マリアやパトリックが言うには、ここにしかない薬草があるとか言うんだぜ? それに後2日使っちまったって訳よ。
落ち葉も葉っぱ。薬草も葉っぱ。葉っぱ葉っぱ葉っぱっぱ。
色々と何を採ったか説明してくれたんだが、覚えてるのはこれくらいだ。
【止血草】
傷薬の材料。単体ではあまり効果がない。薬草。
【流血草】
傷薬の材料。弱毒性。この草を食べ過ぎると、出血死の危険が高まる。毒草。
【火蛇草】
解毒薬の材料。この草に触れると赤く腫れる。毒草。
【幻痺草】
解毒薬の材料。麻痺に効く。食べると幻覚や麻痺症状が出る。毒草。
【夜酔草】
解毒薬の材料。二日酔い、毒性の一時的な失明に効く。食べると嘔吐、失神、昏睡症状が出る。毒草。
【金華木の実】
胃腸薬の材料。消化不良、胸焼け、下痢に効く。食べ過ぎると下痢症状が出る。
【銀華木の実】
解熱、化膿止めの材料。食べると呼吸困難症状が出る。毒実。
【吸魔草】
魔力回復薬の材料。単体ではあまり効果がない。薬草。
【蛇蔦の根】
魔力回復薬の材料。食べると蕁麻疹、幻覚症状が出る。毒根。
【蒼葛の根】
鎮痛薬の材料。食べると、内臓が爛れ喀血症状が出る。毒根。
【妖姫の花】
傷薬と媚薬の材料。食べると興奮状態になる。食べた量で持続時間が異なる。
【蠍蛾の花】
魔力回復薬の材料。食べると強い麻痺、呼吸困難が出る。失明の後遺症が出ることもある。毒花。
見ての通り、ヤバいもんばっかりだ。
いや、俺には見分けは付かんね。どれもこれも同じ雑草に見えるもんな。
流石に根っこと花と実くらいの区別は付くぞ? 葉っぱじゃねえのも判る。
莫迦にすんな。
【鑑定眼】さんが俺の任意で使えるんなら見分けるのは楽だろうが、相変わらず俺の言う事は聞きやしねえ。本当、どうかしてる。
これを調合して作るんだと。いや、俺には調合の技術なんてねえよ。他にも薬を作るには欠かせない水や動物の血とか、鉱物とかあるんだと。俺にはさっぱり分からん世界さ。
奥が深い話だ。
まああれだ。この世界の薬学に詳しかねえが、傷薬や魔力回復薬にはお世話になってる。超不味いがな。薬効を出すって事は、"毒を以て毒を制す"って事なんだろうぜ?
んな事もあって、俺らが"聖域"を出ようとしたらよ。
「ああ、北の関所前まで送ってあげるよ」って言われて、有無を言わさず気が付いたら関所が見える森の中に放り出されてたのさ。
何故だかそれまで一緒に居たパトリックとリサも一緒にだ。
おいっ!?
聞けば、王都から徒歩で1ヶ月の距離って言うじゃねえかよ。どうすんだ?
「丁度、魔法公国の公都悟りの都に行く計画を立てていたので良かったですよ」
という事らしい。
然様か。
パトリックによると、関所を抜けた先には砂海って呼ばれる大砂漠があるんだと。
俺らの目的地はその砂海の何処かにある水場だ。そこに弱った"世界樹"生えてるらしい。砂漠に生えてるって十分弱りそうなもんだがな?
だから、2人と俺たちは関所を出たらお別れだ。
パトリックたちは砂海に入らず、山と砂海の際を抜けて深淵の森の横を周り、北上すると教えてくれた。早くて3ヶ月、状況如何では4ヶ月は掛かる旅になるらしい。
勿論、馬で、だ。徒歩なら6ヶ月半以上かかると笑われたよ。
良く分からんが、パトリックとリサは関所で馬を貰えるらしい。
司教特権? ああ、神殿の権威ね。
まあ、それなりに楽な旅ができるなら良いんじゃね?
どの道、砂漠じゃ馬は食料になっても使い物にはならん。俺らには不要だ。駱駝なら話は別だろうが、俺はまだこの世界に来て砂漠特有の動物を見たことがない。そもそも、駱駝が居るのかどうかも分からねえ。
「お~~い、ハクト~~ッ! 置いてくよ~~!」
パトリックと立ち話をしていると、関所近くでプルシャンとプラムが手を振るのが見えた。随分と先に行ったな。
青い小鳥が、先頭を行く女性陣の上をくるくると飛んでいるのも見える。ありゃあ、早く来いってことだろう。
「プルシャンさんに怒られますね」
「そうだな」
絵になるようにクスリと笑うパトリックを横目に、俺もふっと鼻で笑う。
砂海に近いせいか、森の中を吹き抜ける風が埃っぽい。よく見ると、草木の葉の表面に埃が積もって白くなってるようだ。
『いってらっしゃい! じゃ、頼んだからね!』
ザワリと風もないのに樹々が揺れたかと思うと、鬱陶しい奴の能天気な声が後ろから来た。あいつの根っこはここまで来てねえらしい。
パトリックにも聞こえたんだろう、振り返って深々とお辞儀してやがる。
「おう、行ってくらあ!」
俺は森に背を向けたまま声に応えるように手を振った――。
第4幕 了
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