えっ!? そっち!? いや、骨法はそういう意味じゃ……。◇兎オヤジの見聞録◇

たゆんたゆん

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第1章 深淵の湖

第18話 えっ!? わ、微笑った!?

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 頭から1m程の両刃剣を生え出させた全長5mは越えようかという雷魚のような魚がたちが4匹、輪切りにしたカバの肉を陸上で喰っていたんだ――。

 「す、凄えな」

 凄いというのは、魚が陸上で平気に飯喰めしくってるってことの方だ。

 見た感じは雷魚っぽいんだが、頭の部分は凶悪だ。

 何だよあの切れ味。水中から狙われたら一溜りもねえだろ?

 《レベルが上がりました》

 《【耐魅了】のレベルが上がりました》

 そう思ってたら、アナウンスが聞こえた。

 ああ、止めは刺されたけど、ダメージは与えてたからな、その差額が入ったってことか?

 そこへ、ガサガサと茂みを切り分けて、森に消えた剣状の頭の雷魚が這い出てきた。



 ――凄え。



 って言うか、動き鈍いな。これいけるんじゃない?

 ◆深淵剣魚しんえんけんぎょ
 【種族】ソードスネークヘッド
 【性別】♂
 【レベル】223
 【状態】正常
 【生命力】11,007 / 11,007
 【魔力】10,960 / 10,960
 【力】10,378
 【体力】11,203
 【敏捷】10,587
 【器用】11,828
 【知性】10,476

 【ユニークスキル】
  狙撃Lv3

 【アクティブスキル】
  推進力Lv5

 【パッシブスキル】
  硬化Lv4

 【称号】
  ー

 狙撃ね。まあそうだろうな。

 眼を凝らすと雷魚に似た魚のステータスが浮かんできた。

 全部れてるってことは、俺のレベルも似たような当たりかな。

 レベルが上がったというアナウンスを聞いてもそのまま放ってるのが現状だ。

 レベルアップの痛みにも大分慣れたと言っていい。

 夜にでもまとめて見れば良いや、くらいの感覚しか無いから仕方ないだろう。

 ガタイがデカイが、陸上なんだからそこまで動きが素早くないはず。

 気を付けるべきはあの頭の先についてる剣の刃のようなやつだ。

 「【骨抜き】」

 解体用の短刀で首を3分の1程度切り、そこに手を突っ込んで骨を抜き出す。水中では敵わないだろうが、ここは陸だ。不用意に陸に上がったことを後悔すればいい。

 そんなことを内心呟きながら、俺は飯を喰うことに夢中になってる剣魚けんぎょさばいて骨抜きを済ませる。ついでに河馬カバの骨も回収だ。

 ……肉は流石に喰う気にならなかった。魚が喰いかけたやつだぜ?







 ゾクリッ






 突然辺りが水を打ったようにしんっと音を失う。魔獣や鳥獣たちの声が響き渡る森から音が消えた様に感じた。

 と同時に背中に悪寒が走り、毛の下でぞわっと鳥肌が立つ。



 「なん、だ――」 ピィッ!



 口の中がカラカラに乾くような感覚を味わいながら、刺さってくる視線の方向に顔をぎこちなく動かして俺は言葉を失った。頭の上でスピカの鳴き声が短く響く。



 ああ、あいつだ。



 この森の主っていうあの巨大な蟒蛇うわばみが、湖の遙か対岸から俺を・・・見詰めてるのが分かる。

 この嫌な感じと、遠目にでも判る鱗の色で間違いない。遠すぎて【鑑定眼】も作動しないが、俺は直感を信じる事にした。

 距離って……1キロくらい先じゃないのかよ?

 どういう視力してやがるんだ。いや、蛇って眼が悪かったんだっけ?

 「ちっ、このまま蛇に睨まれた蛙みたいに喰われるつもりは毛頭ないって、泳いでくるのかよ!?」

 湖に身を乗り出して湖面を蛇行する蟒蛇に思わず突っ込んでいた。

 このままじゃジリ貧だ。

 昨日見たいに逃げまわるのが関の山だぞ。考えろ。

 どうする? どうするのが正解なんだ?

 湖と言っても俺の中では眼の前に広がるのは奥行きがありすぎて、入り江とか海の一部なんじゃないかと思いそうになるが、潮の香りがないのでやっぱり湖なんだろう。

 ちょうど対角線を引く感じで湖を斜めに渡って来ようとする蟒蛇が3分の1程度距離を進んだ時だった――。

 突然、蟒蛇ごと水面が膨れ上がったかと思うと、あの巨体が宙を舞ったんだ!?



 「はぁっ!? 何だ!? 熱帯魚ベタ!? いや、デカすぎるだろ!?」



 湖面が爆発したかと思えるくらい盛大に水飛沫みずしぶきが飛び散り、真っ黒いあの熱帯魚と同じ姿をした巨大な・・・・・ベタに似た魚が弧を描いて水中に消える。

 ああ、間違いない。ありゃベタだ。

 娘にせがまれて熱帯魚飼った時に失敗したからよく覚えてる。

 グッピーとベタを同じ水槽に入れて飼おうとしたんだ。

 そしたら喧嘩っ早いベタが追っかけ回す、エビは喰い散らかす……。

 まあ店員さんに詳し説明を聞かずに適当に買った所為でもあるんだが、見た目に反して、闘魚っぷりはすごかった記憶がある。

 その時に買ったベラが娘の一目惚れで、クラウンテールという細いヒラヒラが一杯あるベラだったな。「わたしこれが良い!」って言う笑顔にやられたのを今でも思い出す。

 今のような真っ黒な体に、尾の方へ緋色のラインが混ざるか感じ。

 ……そう言えばさっきの巨大ベラも同じような色合いだったな。

 「おおう、相当怒ってるな……」

 蟒蛇うわばみが泳ぐのをやめて鎌首をもたげてる。良く沈まないもんだ。

 そんなことを考えてたら、また水面が膨らんで来た!

 ジャ――――――――――ッ!!!

 ここへ向けてみ付く蟒蛇。けど、それはおとりで、反対側から額の真ん中から1本の角を生やした真っ黒いベタが蟒蛇の胴に頭突きをぶちかます。

 おお、あれは痛そうだな。

 ベラはでかくなると角が生えるのか。



 ――っ!?



 その時、俺はあの巨大なベラと眼が合った気がしたんだが、更に眼を疑いたくなった。

 あろうことか、ベラの口元が上がった様に見えたんだ。

 えっ!? わ、微笑わらった!?





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