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第2章 骨の谷
第21話 えっ!? 餌付けできるの!?
しおりを挟む【粉骨砕身】を使った日から6日程経った。
ここに来てからを数えると1週間だ。
まあ、7日を1週間と呼ぶ習慣がここにあるのか今のところ判らないがな。
何にせよ日付を忘れないために骨で作った板に、「正」の字を1画ずつガリガリっと刻む。
この簡易暦も自分の為だ。
地元の暦と帳尻を合わせるのに役立つだろうし、自分がいつ頃来たのかもハッキリする。
ま、それくらいだけどな。
「ふあ~~~~、んんーーっ」
板を無限収納に収めて、欠伸と一緒に背伸びを大枝の上でする。
この体にも随分馴染んだぞ?
食料調達でチョイチョイ森躄蟹を狩ってるから、外骨格でそれなりの装備も出来た。
けど、最近はレベルが上がり難くなったんだよ。
あれか?
どういう論理でレベルが上がってるのかは知らんが、格下を狩っても意味がねえのか? と思ってたりもするが、誰も教えてくれねえ。
あのヘンテコな字で書いてある本は相変わらず読めねえしな。
ん?
どれくらい上がったかって?
◆ハクト◆
【種族】兎人族:雪毛種
【性別】♂
【職業】骨法使い
【レベル】Lv516(↑413)
【状態】健康
【生命力】19842 / 19842(↑17454)
【魔力】19920 / 19920(↑17474)
【力】19772(↑17296)
【体力】19930(↑17569)
【敏捷】23083(↑18091+2065)
【器用】19769(↑17419)
【知性】20006(↑17652)
【ユニークスキル】
無限収納
骨法 Lv10
【アクティブスキル】
鑑定眼 Lv3(↑2)
【パッシブスキル】
回復強化 Lv5(↑3)
耐痛 Lv10
耐魅了Lv1
【称号】
【装備】
ベルト
ポーチ×2
ナイフ×2
手斧×1
解体用骨刀×1
森躄蟹の草摺
森躄蟹の籠手
森躄蟹の脛当て
森躄蟹の胸当て
【所持金】
0
こんな感じだな。
ピルルル
スピカが帰って来た。
「ああ、独り言だよ。誰かと話してたわけじゃない。というか居るわけ無いだろ?」
頭の上の小枝に乗って首を傾げる仕草はいつ見ても癒やされる。
その仕草に何か訊ねられているような気がして答えたら、機嫌よく小枝の上で歌い出した。この声が濁声じゃなくてほんと良かったよ。
まだスピカとは意思の疎通は難しい。
何となくは分かるが、機微は分らん。
お互いこの姿になってまた7日だ。
焦ったことはないだろうが、できればスピカの声が聞きたいと思うのは俺の我侭だろう。
ああ、そうそう。
この6日で変わったとことと言えば、湖の主と仲良くなったってことだな。
俺もびっくりさ。
湖の主が近くに居るお蔭であのおっかない剣魚が出てくることもないし、鬱陶しいカバやゴブリンエイプが出ることもない。
どうやってかは知らないが、湖の一部をウオーターベッドみたいにしてもらって昼寝することもある。
対価は俺が狩ってくる魔物の内臓さ。
『えっ!? 餌付けできるの!?』と思っちまったのはご愛嬌だろう。
今じゃあのでっかな口に直接入れてるくらいだ。
偶に甘噛みされて指を怪我することがあるが、すぐ治るから気にする程の事じゃない。
スピカの事も嫁だって紹介できたしな。
まあなんだ。湖の主が判ってるかどうかは別として、誰かにスピカを紹介するのは何か照れる。
人でもねえ相手に、何やってんだか。
あそうそう、飯の種を狩って、焼いて喰うだけじゃなくて、それなりに【骨法】の熟練度も上がったんだ。
◆骨法◆
Lv1:骨抜き(熟練度6)(↑4)
Lv2:骨飛礫(熟練度5)(↑4)
Lv3:骨接ぎ(熟練度5)(↑4)
Lv4:骨形成(熟練度4)(↑3)
Lv5:骨錬成(熟練度4)(↑3)
Lv6:骨融合(熟練度3)(↑2)
Lv7:骨爪(熟練度3)(↑2)
Lv8:骨譲渡(熟練度1)
Lv9:骨人形(熟練度1)
Lv10:粉骨砕身(熟練度1)
ああ、【粉骨砕身】はアレ以来使ってねえ。
というか、これに熟練度がある事自体どうかなっちまいそうだ。
俺が爺様たちから修めた骨法とは完全に別路線だからな。
正直モヤモヤが消えた訳じゃねえけど、これはこれ、それはそれと割り切ることにしたのさ。
どれもそうなのかまだ判らんが、スキルレベルが10から上に上がらない。
あくまで仮説だが、Lv10でカウンターストップなのかも知れん。
ピピッ ピピッ
枝から俺の胸の上に降りてくるスピカが、ぴょこぴょこと毛の中を機嫌よく跳びまわる。
枝葉の間から見える青空を雲が山の方に向かって流れているのが見えた。
「そう言えば、まだ山の方には行ってなかったな……」
ピッ
小さく肯く仕草に目尻が垂れる。可愛いな。
良いおっさんが小鳥と戯れるってシュール過ぎるが、ま、誰も見てないんだから問題ねえ。
「よっと」
ピッ
上半身を起こすとパタパタと俺の頭の上に来るスピカ。
「さて、スピカさんや。小川沿いに山の方に行ってみるかね?」
ピルルルーー
機嫌の良さそうな鳴き声に思わず眼を細めてしまう。
よっと。
大枝から飛び降りてもう一度大きく伸びをし、スピカを頭に乗せた俺は、流れていく雲の後を追って山へと足を踏み出したーー。
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