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第4章 旅の仲間
第44話 えっ!? こんなとこにあったの!?
しおりを挟むあれから7日過ぎた。
ヒルダと一緒に寝起きするようになって分かったことだが、どうやらこの惑星は地球に比べてでかいらしい。
というのも、1年が385日だと聞いたからだ。
時間を計る物は大きな街にあるらしいが、個人で持ち運べる類の物じゃないらしい。
オマケに、1年は13ヶ月なんだと。
季節は5季。水、火、地、風、氷。
思ってた通りだが、7日を1週間とは呼ばねえらしい。ま、そうだよな。
水の月が春に当たる。区分は3ヶ月。
火の月が夏に当たる。区分は2ヶ月。
地の月が秋だ。区分は3ヶ月。
風と、氷が冬なんだが、風の方が寒さが緩いらしい。3ヶ月と2ヶ月の計5ヶ月だ。
月の日割りは30日の日もあれば、29日、28日もある。
ここら辺は流石異世界だな、と納得することにした。「そりゃねえだろ!?」と言ったところでどうにもならんからな。こんなもんだと切り替えた方が余分なストレスを溜め込まずに済む。
へ、ホームレスで俺の頭も柔らかくなったもんだぜ。
あ~なんだ。7日もヒルダと一緒に居る訳だが、男女の関係は生まれてねえ。
良く分からん幻覚は見たが、あれっきりだったしな。
スピカの居るとこで言うと怒られるから言わねえが、骨には……なあ?
ザニア姐さんに頼んだ例の画像は、何故だか昭和の肖像写真を臭わせる出来で頭の中へ送られて来た。そこに集中すれば浮かび上がってくるという、良く分からん機能付きだ。
ああ、勿論カラーだぞ?
あと、丸太小屋の作り方みたいな情報もいつの間にか刷り込まれてたな。
ん? そりゃそうだ。田舎の掘っ立て小屋作るくらいの知識しかねえ俺が、ログハウスが作れるはずもねえ。作ったこともな。それなのに、「こうすりゃ良いんじゃねえか?」って体が動くんだからよ。
明らかに、姐さんたちの誰かの仕業だろうさ。
まあ、誰か判らねえから、取り敢えず上に向かってぱふぱふと柏手を打って、頭を下げておいた。礼を言っとけば間違いねえだろう。
で、今何してるかって言うと、ログハウス用に伐り出した木の皮を剥いで、ヒルダに乾燥してもらってる。
結構な本数だけどよ、改めて魔法って凄えなって思ったぜ。
何でも、火魔法の第5位階にある【熱結界】とかいう魔法で余分な水分を飛ばせるんだと。
最初は魔力がねえから、俺と同じようにぶっ倒れたけどな。
ん? ああ、ヒルダが食いしん坊なもんでよ、あれだけあった森ザリガニや森ワニとかの肉が底を突いちまったからさ、一緒に狩りに出んだわ。そしたら、まあ2人とも仲良くレベルアップして痛みで転げまわったという……。
えっ!? 骨でも痛いの!?
って驚いたのは内緒だ。突っ込んでもねえ。
俺と同じ【耐痛】のスキルが生えたのは、ラッキーだったけどな。
そんな訳で、魔力が増えた今、随分助かってるって話だ。
それと並行して、女神たちの立像を作成してる。こっちはログハウスよりも気を遣う。
全部骨粘土だけで作ってやろうかと思ったんだが、そう言えば硬い木があるんだからと、それを芯にして作ることにしたのさ。
何か仏像の中にもそういう作り方の物があった気がしたってのもある。
まあ、そんなにでかい立像を作る気はねえ。身の丈くらいが精一杯さ。
あ~、細工の腕が気になる?
へへへ。こう言っちゃ何だが。こう見えても俺は美大の出だ。
よくある、「実家は継ぎたくねえ!」という反骨心から畑違いの美大へどうにか入って、前の嫁さんと出逢ったって訳。ああ、実家に帰るってことになったら、豪い剣幕で怒られたがな。
だから、素人よりかは技術はあると思うぞ?
あ? 柔道整復師の資格?
んなもん、親父のコネで入った養成所でぱぱっとよ。
それにしても……。と、ふと手を止めて足元に転がるツルハシや利鍬に視線を落とす。
洞窟の内壁を骨粘土で作った掘削用の道具で削ると、さくさく削れるんだよ。伐採の時といい、これといい、あんまり知られない方が良いんじゃなかろうか。そんな事を考えながら午前中は作業に没頭した――。
◆◇◆
午後からは、骨の谷を出て湖へ行くことにした。
あいつにヒルダを紹介して、ドラゴンの内臓を喰わせてやろうかと思ってな。
ああ、餌付けできた莫迦でかい闘魚のことさ。
んで、出掛けるたびに襲われるのも面倒だから、軍隊骸骨の出る古戦場を避けるように北回りのルートで久し振りに湖へ向かってるところだ。
俺だけなら何とでもなるが、流石にヒルダが居ると話は違ってくる。魔力切れで飲み込まれちまうだろうさ。あの時と種族が違ってるから、見逃してもらえると考える方が大甘だってことくらい俺にも判る。
枯れ木みたいな立木林と、そうじゃない青々と葉を茂らせたの雑木林の境目が見えてきた。ということは古戦場を抜けたみたいだな。
「主君、どうやら骸骨共は山の方までは巣を伸ばしてないようだな」
「……だな」
ニカッと口を開けて話し掛けてくるヒルダへ適当に相槌を打ちながら、俺はある物に目を奪われてた。
山葡萄?
品種改良されて綺麗な房になっている葡萄がこの世界にあるとも思えねえ。なら、消去法で毒のある野葡萄か、食べれる山葡萄のどっちかだろうさ。
まだ小さな房だが、蔦から伸びる房は、緑や赤い色をしてる。
もっと良く見てやろうと思ったら、【鑑定眼】が思い出したように仕事しやがった。
【胡椒の蔓】
その実は、香辛料、調味料として重宝される。
深淵の森に自生している所為で、含有魔力が高い。
冷え・嘔吐止め・吐瀉止め・魚毒の解毒薬として用いられる。
えっ!? こんなとこにあったの!?
こうして俺たちは、生の胡椒を手に入れた。
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