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16 30秒で支度しな!
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「良くぞ参られた、勇者殿。」
ビビアン達がライブハット城の謁見の間に入ると、そうそうに王が挨拶をしてきた。
玉座に座るのはアリエヘンの王と違い、まだ20代前半といった若い王様。
顔立ちも整っており、服装もエレガントな為、とてもスマートに見える。
つまりは、アリエヘン王と比べる事自体が、アリエヘン。
ふ~ん。良さそうな王ね。
と、一瞬思ったビビアンであったが、王の隣にいる紫色の髪をした二人の美女を見て、直ぐに不快な表情に変わった。
若い女を二人も侍らせてる姿は、到底ビビアンに許容できるものではない。
何よ、あの女の恰好。
ほぼ下着じゃない!
若い王ってのもダメね。
こんな奴の話、聞くまでもないわ。
ビビアンは謁見早々、王に落胆していた。
すると二人の女性の内、踊り子のようなエロい格好した美女がビビアンにウィンクをする。
目線があったビビアンは思わず目を伏せた。
何故目を伏せてしまったのか、自分でも上手く説明ができない。
ただわかるのは、自分がその女性と比べて、女性らしさという意味で劣等感を抱いてしまったという事。
……にも関わらず、なぜか向けられたその顔は、不思議と嫌ではなかった。
そしてビビアンが黙っていると、代わりにシャナクが王に挨拶を返す。
「これはこれは、ベンリー王子……いや、今は王でしたか。大層ご立派になられましたな。」
どうやらシャナクは、この王と知り合いらしい。
「おぉ。久しいなシャナク。お前に燃やされたケツは未だに火傷の痕が残っているぞ。それでそこにいるのは勇者殿で間違いないな?」
王は懐かしそうな笑みを浮かべて、シャナクに話しかける。
その言葉からも、二人の仲は悪くはないらしい。
シャナクもまた、弟子に久しぶりにあったかのように話を続けた。
「ほほぉ、そうですか。あの頃の王子はヤンチャでしたからな。今度魔法で治してあげましょうぞ。と、その前にご紹介を。こちらにあらせられるのは勇者ビビアン様でございます。」
シャナクの言葉に、王は頷く。
「やはりそうであったか。この度は長い旅路ご苦労で……。」
しかし、ベンリー王が言葉を続けようとした瞬間、ビビアンがそれを遮った。
「くだらない話は終わったかしら? 私が聞きたいのはサクセスの情報だけよ。無いならもう帰るわ。無駄話をしている時間はないの。」
ビビアンは、何故か王の隣にいる女性は気になったが、既に帰る気満々である。
「これは申し訳ない。はて? サクセスとは誰のことだったかな?」
ベンリーはアゴに指を当てて考え出した。
その姿を見て、ビビアンは深いため息を洩らす。
「もういいわ。帰るわよシャナク!!」
ビビアンはもうここに用はないと言った風に踵を返した。
しかしその時、ベンリーの隣にいる一人の女性がビビアンを止める。
その女性は、ウィンクをしてきた派手な女の方ではなく、修道服のようなものを着たもう一人の方だった。
「お待ちください勇者様。サクセスさんの事なら知っています。あなたが欲しい情報は全て持っています。まだ帰るのは早計かと。」
ビビアンは、その「サクセスさん」という言葉に、足を止めた。
それは、まるで本当にサクセスを知っているかのような物言い。
だが直ぐには信じない。
咄嗟に嘘をついていたのかもしれないから。
「嘘だったら承知しないわよ? 適当な事言って騙すようだったら……この国を壊すわ!」
ビビアンの全身から邪悪なオーラが湧き上がる。
それを見て「あわわわ……」と震えるシャナク。
しかしその女は、ビビアンを全く恐れる事なく話を続けた。
「それはお怖いですね。でも嘘ではありません。ご紹介が遅れましたが、私はマネアと申します。そして、勇者様が探していた占い師です。」
!?
ビビアンは、自分が占い師を探しているのを知っている事に驚いた。
「な、なんでアンタがそれを……?」
「それは当然です。占い師ですから。そして私は、ここであなたに会うためにこの国に来ました。」
マネアは、ジッとビビアンの事を見つめてそう答えると、しばらく二人はそのまま見つめ合う。
ビビアンは相手の目から、真実を見極めようとした。
嘘をついているなら、目を逸らすはず。
そう思って、キツい目で睨むように見ていたのだが、マネアが目を逸らす事はなかった。
嘘は言っていないようね。
そこでビビアンは初めて今の言葉を信じる。
「わかったわ。じゃあさっさとサクセスの場所を教えなさい。」
信じたからこそ、ビビアンは率直に聞いた。
今聞きたいのは、マネアが何者であるかではない。
サクセスの事だけだ。
そしてマネアは、ビビアンが最も欲していた情報を話し始める。
「サクセスさんは、現在ここより南方にあるヒルダームという国にいます。」
それを聞いた瞬間、ビビアンの顔が一瞬でパァッと明るくなった。
遂に判明したサクセスの居場所。
ビビアンにとって、これ程嬉しい情報はない。
そんなビビアンを前に、更にマネアは続ける。
「そしてそこで邪悪なる者との闘いを終え、今頃はマーダ神殿に向かって出発している頃でしょう。ヒルダームからマーダ神殿までは馬車で十数日。今から向かえば、丁度マーダ神殿で会えるのではないでしょうか。」
ビビアンは、あまりの喜びに発狂しそうになった。
だが逆に、嬉しすぎてフリーズしてしまう。
とはいえ、その顔は満面の笑み。
一方、それを隣で聞いていたシャナクもまた、かなりホっとしていた。
やっとか……。
やっと私はこの恐怖から解放されるのか……。
シャナクは心から安堵する。
「ありがとう! わかったわ、じゃあ早速マーダ神殿に向かうことにするわ。」
ビビアンはその喜びを抑えながらもお礼を言うと、早速マーダ神殿に向かおうと踵を返す。
その様子は、今にもスキップをしてしまいそうな程、軽やかなものだった。
しかし、そんなビビアンを再度マネアは引き止める。
話はまだ終わりではなかったのだ。
「お待ちください。その前に大事な事をお話しなければなりません。」
これにシャナクは焦る。
折角、ビビアンが上機嫌になったのに、その足取りを止めるという最悪な状況。
これは、普段なら間違いなく鉄拳制裁案件だ。
だがしかし、シャナクの不安は現実とはならない。
何故なら、ビビアンは今、過去類を見ないほどに上機嫌であったからだ。
それに一番欲しい情報をくれた相手の話だ、ビビアンとしても話を聞く価値がある。
故に、ビビアンは立ち止まった。
「いいわよ、聞くわ。話しなさい。」
ビビアンは振り返ると、そう口にする。
それを聞いたマネアは、重々しく話し始めた。
「現在マーダ神殿は、魔王軍に襲われている状況です。今はまだ持ち堪えていますが、長くは持たないでしょう。」
「それは本当なの!? サクセスが危ないじゃない!」
その話を聞いて焦るビビアン。
さっきマネアから、サクセスがマーダ神殿に向かっていると聞いた。
その話が本当なら、サクセスもそれに巻き込まれる可能性がある。
そんな不安に襲われるビビアンに対して、マネアは更に最悪な事を口にした。
「事実です。そして今、新たに二人の魔王がそこに向かおうとしております。もしもその魔王達が到着したら、マーダ神殿は直ぐに陥落するでしょう。その為、時間がありません。どうかお力をお貸しください。」
その願いは、切実な思いが込められている。
そしてそれを聞いたビビアンは……
「当然よ! 行くわよ、今すぐに! こうしてはいられないわ!」
サクセスが危ないと知り、居ても立っても居られなくなるビビアン。
さっきまでの上機嫌と打って変わって、その表情は焦りの色、一色となる。
しかしその時、ふとある事が気になった。
それは、サクセスがこの事を知っているかどうかという事。
もしも知っているならば、マーダ神殿には向かわないかもしれない。
そうであれば、マネアには悪いが向かうべきはヒルダームだ。
「……ねぇ。ところで、サクセスはその事を知っているの?」
ビビアンは率直にそう尋ねた。
だが予想と異なり、マネアは初めて曖昧な答えをする。
「魔王が来ることまではわかりませんが、マーダ神殿がモンスターに襲われていることは知っている可能性があります。」
「可能性? どう言う事?」
「申し訳ございません。占いは全てがわかる訳ではないのです。ただ、これだけは言えます。サクセスさんは必ずマーダ神殿に向かいます。」
それを聞いて、ビビアンは少し悩んだ。
しかし、嘘を言っているようにも見えない。
ならば信じるしかない。
「アタシ行くわ! マーダ神殿に!」
ビビアンはそう決断すると、そこに今度はベンリー王が話に入ってきた。
「援軍感謝する! それでは、余がマーダ神殿に行くために最速の馬車を用意しよう。その代わり、ここにいるマネアとミーニャも連れて行ってほしい。」
王は、二人の女性を指して言った。
どうやら、もう一人のセクシーな女性はミーニャというらしい。
ビビアンにとって、そんな事はどうでも良かったが、何故連れていかなければならないのか疑問だ。
とはいえ、今更二人増えたところで問題はないから、断るつもりもない。
それを条件に、足の速い馬車をもらえるならお釣りが来る。
だがしかし、一応確認だけはしておく。
二人がどの程度戦えるのかを。
実際戦ってもらうつもりはないが、せめて何かあった時に逃げられるくらいでなければ困るからだ。
「一応聞くけど、二人は戦えるの?」
その質問に、ベンリー王は自信満々に答える。
「もちろん。マネアは占い師でもあるが、高位の回復魔法が使える僧侶であり、ミーニャはこんな格好をしているが、スーパースターという上位職である。二人共戦力として申し分はないであろう。」
それを聞いてビビアンは疑問の表情を浮かべた。
僧侶は知っているが、スーパースターが何かわからない。
とはいえ、一国の王がそれだけ自信をもって言うなら、一応信頼してもいいだろう。
「スーパースター? 何よそれ。まぁいいわ。来たいなら勝手についてきなさい。それよりアンタ、早くその馬車を用意しなさいよ。」
王を相手に、アンタ呼ばわりのビビアン。
ここにきて、焦りが最高潮になったビビアンは、いつもの調子に戻っていた。
これには流石のベンリー王も苦笑いするしかない。
しかしこの時はまだ気づかなかった。
その苦笑いの表情が、青褪める事になるとは……。
「シャナク! 何ぼけっとしてんのよ! アンタも行くのよ!」
「は、はい! 仰せの前に!」
ビビアンの焦りからくる怒りは、黙って聞いていただけのシャナクになぜか飛び火する。
再び訪れるシャナクの不幸……。
だがしかし、そんな事を感じている暇はシャナクにはない。
早くしないと、殺される!
すぐさま走ってビビアンの下に向かうシャナク。
そんなシャナクの姿を見て、ベンリー王は驚いた。
ベンリー王にとって、シャナクは自分の知る限り最強の賢者。
そのシャナクが、あそこまで怯えている事に目を疑う。
だが、ベンリー王はふと目線をビビアンに移すと……
そこには、禍々しいオーラを放つ般若が立っていた。
あれ?
ここにいたのって魔王だっけ?
その疑問は、次の瞬間確信に変わる。
「馬車はどこよ! 早く用意しないとぶっ殺すわよ!」
その殺気は、ベンリー王の肝を凍らせた。
こ、怖すぎる……。
恐怖に震えるベンリー王。
そして……
今度はシャナクが叫ぶ。
「ベンリー王よ! 頼む! 30秒で支度してくれ! まだ死ぬ訳にはいかぬのだ!」
その必死な叫びに、ベンリー王はなんとか恐怖から立ち上がるも、余りに厳しい要求に弱音を洩らす。
「さ、流石に30秒では……。」
その言葉を聞き取ったビビアンは怒り狂った。
「泣き言いってんじゃないわよ!」
「ひぃぃい! た、ただいますぐに!」
顔を真っ青にさせたベンリー王は、そんな情けない声を上げると、真っ先に扉へ向かって駆け出した。
誰よりも早く部屋を出るベンリー王。
その姿は、とても一国を背負う王の姿ではなかった。
こうしてベンリー王の努力?により、ビビアンは城を出て直ぐに高速馬車を手に入れる。
そして、マネアとミーニャという新たな仲間と共に、マーダ神殿に向かうのであった。
新パーティ
マネア 僧侶 レベル38
ミーニャ スーパースター レベル29
ビビアン達がライブハット城の謁見の間に入ると、そうそうに王が挨拶をしてきた。
玉座に座るのはアリエヘンの王と違い、まだ20代前半といった若い王様。
顔立ちも整っており、服装もエレガントな為、とてもスマートに見える。
つまりは、アリエヘン王と比べる事自体が、アリエヘン。
ふ~ん。良さそうな王ね。
と、一瞬思ったビビアンであったが、王の隣にいる紫色の髪をした二人の美女を見て、直ぐに不快な表情に変わった。
若い女を二人も侍らせてる姿は、到底ビビアンに許容できるものではない。
何よ、あの女の恰好。
ほぼ下着じゃない!
若い王ってのもダメね。
こんな奴の話、聞くまでもないわ。
ビビアンは謁見早々、王に落胆していた。
すると二人の女性の内、踊り子のようなエロい格好した美女がビビアンにウィンクをする。
目線があったビビアンは思わず目を伏せた。
何故目を伏せてしまったのか、自分でも上手く説明ができない。
ただわかるのは、自分がその女性と比べて、女性らしさという意味で劣等感を抱いてしまったという事。
……にも関わらず、なぜか向けられたその顔は、不思議と嫌ではなかった。
そしてビビアンが黙っていると、代わりにシャナクが王に挨拶を返す。
「これはこれは、ベンリー王子……いや、今は王でしたか。大層ご立派になられましたな。」
どうやらシャナクは、この王と知り合いらしい。
「おぉ。久しいなシャナク。お前に燃やされたケツは未だに火傷の痕が残っているぞ。それでそこにいるのは勇者殿で間違いないな?」
王は懐かしそうな笑みを浮かべて、シャナクに話しかける。
その言葉からも、二人の仲は悪くはないらしい。
シャナクもまた、弟子に久しぶりにあったかのように話を続けた。
「ほほぉ、そうですか。あの頃の王子はヤンチャでしたからな。今度魔法で治してあげましょうぞ。と、その前にご紹介を。こちらにあらせられるのは勇者ビビアン様でございます。」
シャナクの言葉に、王は頷く。
「やはりそうであったか。この度は長い旅路ご苦労で……。」
しかし、ベンリー王が言葉を続けようとした瞬間、ビビアンがそれを遮った。
「くだらない話は終わったかしら? 私が聞きたいのはサクセスの情報だけよ。無いならもう帰るわ。無駄話をしている時間はないの。」
ビビアンは、何故か王の隣にいる女性は気になったが、既に帰る気満々である。
「これは申し訳ない。はて? サクセスとは誰のことだったかな?」
ベンリーはアゴに指を当てて考え出した。
その姿を見て、ビビアンは深いため息を洩らす。
「もういいわ。帰るわよシャナク!!」
ビビアンはもうここに用はないと言った風に踵を返した。
しかしその時、ベンリーの隣にいる一人の女性がビビアンを止める。
その女性は、ウィンクをしてきた派手な女の方ではなく、修道服のようなものを着たもう一人の方だった。
「お待ちください勇者様。サクセスさんの事なら知っています。あなたが欲しい情報は全て持っています。まだ帰るのは早計かと。」
ビビアンは、その「サクセスさん」という言葉に、足を止めた。
それは、まるで本当にサクセスを知っているかのような物言い。
だが直ぐには信じない。
咄嗟に嘘をついていたのかもしれないから。
「嘘だったら承知しないわよ? 適当な事言って騙すようだったら……この国を壊すわ!」
ビビアンの全身から邪悪なオーラが湧き上がる。
それを見て「あわわわ……」と震えるシャナク。
しかしその女は、ビビアンを全く恐れる事なく話を続けた。
「それはお怖いですね。でも嘘ではありません。ご紹介が遅れましたが、私はマネアと申します。そして、勇者様が探していた占い師です。」
!?
ビビアンは、自分が占い師を探しているのを知っている事に驚いた。
「な、なんでアンタがそれを……?」
「それは当然です。占い師ですから。そして私は、ここであなたに会うためにこの国に来ました。」
マネアは、ジッとビビアンの事を見つめてそう答えると、しばらく二人はそのまま見つめ合う。
ビビアンは相手の目から、真実を見極めようとした。
嘘をついているなら、目を逸らすはず。
そう思って、キツい目で睨むように見ていたのだが、マネアが目を逸らす事はなかった。
嘘は言っていないようね。
そこでビビアンは初めて今の言葉を信じる。
「わかったわ。じゃあさっさとサクセスの場所を教えなさい。」
信じたからこそ、ビビアンは率直に聞いた。
今聞きたいのは、マネアが何者であるかではない。
サクセスの事だけだ。
そしてマネアは、ビビアンが最も欲していた情報を話し始める。
「サクセスさんは、現在ここより南方にあるヒルダームという国にいます。」
それを聞いた瞬間、ビビアンの顔が一瞬でパァッと明るくなった。
遂に判明したサクセスの居場所。
ビビアンにとって、これ程嬉しい情報はない。
そんなビビアンを前に、更にマネアは続ける。
「そしてそこで邪悪なる者との闘いを終え、今頃はマーダ神殿に向かって出発している頃でしょう。ヒルダームからマーダ神殿までは馬車で十数日。今から向かえば、丁度マーダ神殿で会えるのではないでしょうか。」
ビビアンは、あまりの喜びに発狂しそうになった。
だが逆に、嬉しすぎてフリーズしてしまう。
とはいえ、その顔は満面の笑み。
一方、それを隣で聞いていたシャナクもまた、かなりホっとしていた。
やっとか……。
やっと私はこの恐怖から解放されるのか……。
シャナクは心から安堵する。
「ありがとう! わかったわ、じゃあ早速マーダ神殿に向かうことにするわ。」
ビビアンはその喜びを抑えながらもお礼を言うと、早速マーダ神殿に向かおうと踵を返す。
その様子は、今にもスキップをしてしまいそうな程、軽やかなものだった。
しかし、そんなビビアンを再度マネアは引き止める。
話はまだ終わりではなかったのだ。
「お待ちください。その前に大事な事をお話しなければなりません。」
これにシャナクは焦る。
折角、ビビアンが上機嫌になったのに、その足取りを止めるという最悪な状況。
これは、普段なら間違いなく鉄拳制裁案件だ。
だがしかし、シャナクの不安は現実とはならない。
何故なら、ビビアンは今、過去類を見ないほどに上機嫌であったからだ。
それに一番欲しい情報をくれた相手の話だ、ビビアンとしても話を聞く価値がある。
故に、ビビアンは立ち止まった。
「いいわよ、聞くわ。話しなさい。」
ビビアンは振り返ると、そう口にする。
それを聞いたマネアは、重々しく話し始めた。
「現在マーダ神殿は、魔王軍に襲われている状況です。今はまだ持ち堪えていますが、長くは持たないでしょう。」
「それは本当なの!? サクセスが危ないじゃない!」
その話を聞いて焦るビビアン。
さっきマネアから、サクセスがマーダ神殿に向かっていると聞いた。
その話が本当なら、サクセスもそれに巻き込まれる可能性がある。
そんな不安に襲われるビビアンに対して、マネアは更に最悪な事を口にした。
「事実です。そして今、新たに二人の魔王がそこに向かおうとしております。もしもその魔王達が到着したら、マーダ神殿は直ぐに陥落するでしょう。その為、時間がありません。どうかお力をお貸しください。」
その願いは、切実な思いが込められている。
そしてそれを聞いたビビアンは……
「当然よ! 行くわよ、今すぐに! こうしてはいられないわ!」
サクセスが危ないと知り、居ても立っても居られなくなるビビアン。
さっきまでの上機嫌と打って変わって、その表情は焦りの色、一色となる。
しかしその時、ふとある事が気になった。
それは、サクセスがこの事を知っているかどうかという事。
もしも知っているならば、マーダ神殿には向かわないかもしれない。
そうであれば、マネアには悪いが向かうべきはヒルダームだ。
「……ねぇ。ところで、サクセスはその事を知っているの?」
ビビアンは率直にそう尋ねた。
だが予想と異なり、マネアは初めて曖昧な答えをする。
「魔王が来ることまではわかりませんが、マーダ神殿がモンスターに襲われていることは知っている可能性があります。」
「可能性? どう言う事?」
「申し訳ございません。占いは全てがわかる訳ではないのです。ただ、これだけは言えます。サクセスさんは必ずマーダ神殿に向かいます。」
それを聞いて、ビビアンは少し悩んだ。
しかし、嘘を言っているようにも見えない。
ならば信じるしかない。
「アタシ行くわ! マーダ神殿に!」
ビビアンはそう決断すると、そこに今度はベンリー王が話に入ってきた。
「援軍感謝する! それでは、余がマーダ神殿に行くために最速の馬車を用意しよう。その代わり、ここにいるマネアとミーニャも連れて行ってほしい。」
王は、二人の女性を指して言った。
どうやら、もう一人のセクシーな女性はミーニャというらしい。
ビビアンにとって、そんな事はどうでも良かったが、何故連れていかなければならないのか疑問だ。
とはいえ、今更二人増えたところで問題はないから、断るつもりもない。
それを条件に、足の速い馬車をもらえるならお釣りが来る。
だがしかし、一応確認だけはしておく。
二人がどの程度戦えるのかを。
実際戦ってもらうつもりはないが、せめて何かあった時に逃げられるくらいでなければ困るからだ。
「一応聞くけど、二人は戦えるの?」
その質問に、ベンリー王は自信満々に答える。
「もちろん。マネアは占い師でもあるが、高位の回復魔法が使える僧侶であり、ミーニャはこんな格好をしているが、スーパースターという上位職である。二人共戦力として申し分はないであろう。」
それを聞いてビビアンは疑問の表情を浮かべた。
僧侶は知っているが、スーパースターが何かわからない。
とはいえ、一国の王がそれだけ自信をもって言うなら、一応信頼してもいいだろう。
「スーパースター? 何よそれ。まぁいいわ。来たいなら勝手についてきなさい。それよりアンタ、早くその馬車を用意しなさいよ。」
王を相手に、アンタ呼ばわりのビビアン。
ここにきて、焦りが最高潮になったビビアンは、いつもの調子に戻っていた。
これには流石のベンリー王も苦笑いするしかない。
しかしこの時はまだ気づかなかった。
その苦笑いの表情が、青褪める事になるとは……。
「シャナク! 何ぼけっとしてんのよ! アンタも行くのよ!」
「は、はい! 仰せの前に!」
ビビアンの焦りからくる怒りは、黙って聞いていただけのシャナクになぜか飛び火する。
再び訪れるシャナクの不幸……。
だがしかし、そんな事を感じている暇はシャナクにはない。
早くしないと、殺される!
すぐさま走ってビビアンの下に向かうシャナク。
そんなシャナクの姿を見て、ベンリー王は驚いた。
ベンリー王にとって、シャナクは自分の知る限り最強の賢者。
そのシャナクが、あそこまで怯えている事に目を疑う。
だが、ベンリー王はふと目線をビビアンに移すと……
そこには、禍々しいオーラを放つ般若が立っていた。
あれ?
ここにいたのって魔王だっけ?
その疑問は、次の瞬間確信に変わる。
「馬車はどこよ! 早く用意しないとぶっ殺すわよ!」
その殺気は、ベンリー王の肝を凍らせた。
こ、怖すぎる……。
恐怖に震えるベンリー王。
そして……
今度はシャナクが叫ぶ。
「ベンリー王よ! 頼む! 30秒で支度してくれ! まだ死ぬ訳にはいかぬのだ!」
その必死な叫びに、ベンリー王はなんとか恐怖から立ち上がるも、余りに厳しい要求に弱音を洩らす。
「さ、流石に30秒では……。」
その言葉を聞き取ったビビアンは怒り狂った。
「泣き言いってんじゃないわよ!」
「ひぃぃい! た、ただいますぐに!」
顔を真っ青にさせたベンリー王は、そんな情けない声を上げると、真っ先に扉へ向かって駆け出した。
誰よりも早く部屋を出るベンリー王。
その姿は、とても一国を背負う王の姿ではなかった。
こうしてベンリー王の努力?により、ビビアンは城を出て直ぐに高速馬車を手に入れる。
そして、マネアとミーニャという新たな仲間と共に、マーダ神殿に向かうのであった。
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困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
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