チート装備のヤンデレ女勇者〜追放された幼馴染を探すのは、魔王を倒すより難しい〜

キミちゃん

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「良くぞ参られた、勇者殿。」


 ビビアン達がライブハット城の謁見の間に入ると、そうそうに王が挨拶をしてきた。

 玉座に座るのはアリエヘンの王と違い、まだ20代前半といった若い王様。

 顔立ちも整っており、服装もエレガントな為、とてもスマートに見える。

 つまりは、アリエヘン王と比べる事自体が、アリエヘン。


 ふ~ん。良さそうな王ね。


と、一瞬思ったビビアンであったが、王の隣にいる紫色の髪をした二人の美女を見て、直ぐに不快な表情に変わった。

 若い女を二人も侍らせてる姿は、到底ビビアンに許容できるものではない。


 何よ、あの女の恰好。
 ほぼ下着じゃない!
 若い王ってのもダメね。
 こんな奴の話、聞くまでもないわ。


 ビビアンは謁見早々、王に落胆していた。


 すると二人の女性の内、踊り子のようなエロい格好した美女がビビアンにウィンクをする。


 目線があったビビアンは思わず目を伏せた。


 何故目を伏せてしまったのか、自分でも上手く説明ができない。

 ただわかるのは、自分がその女性と比べて、女性らしさという意味で劣等感を抱いてしまったという事。


……にも関わらず、なぜか向けられたその顔は、不思議と嫌ではなかった。


 そしてビビアンが黙っていると、代わりにシャナクが王に挨拶を返す。


「これはこれは、ベンリー王子……いや、今は王でしたか。大層ご立派になられましたな。」


 どうやらシャナクは、この王と知り合いらしい。


「おぉ。久しいなシャナク。お前に燃やされたケツは未だに火傷の痕が残っているぞ。それでそこにいるのは勇者殿で間違いないな?」


 王は懐かしそうな笑みを浮かべて、シャナクに話しかける。

 その言葉からも、二人の仲は悪くはないらしい。

 シャナクもまた、弟子に久しぶりにあったかのように話を続けた。


「ほほぉ、そうですか。あの頃の王子はヤンチャでしたからな。今度魔法で治してあげましょうぞ。と、その前にご紹介を。こちらにあらせられるのは勇者ビビアン様でございます。」


 シャナクの言葉に、王は頷く。


「やはりそうであったか。この度は長い旅路ご苦労で……。」

 
 しかし、ベンリー王が言葉を続けようとした瞬間、ビビアンがそれを遮った。


「くだらない話は終わったかしら? 私が聞きたいのはサクセスの情報だけよ。無いならもう帰るわ。無駄話をしている時間はないの。」


 ビビアンは、何故か王の隣にいる女性は気になったが、既に帰る気満々である。


「これは申し訳ない。はて? サクセスとは誰のことだったかな?」


 ベンリーはアゴに指を当てて考え出した。

 その姿を見て、ビビアンは深いため息を洩らす。

 
「もういいわ。帰るわよシャナク!!」


 ビビアンはもうここに用はないと言った風に踵を返した。

 しかしその時、ベンリーの隣にいる一人の女性がビビアンを止める。

 その女性は、ウィンクをしてきた派手な女の方ではなく、修道服のようなものを着たもう一人の方だった。


「お待ちください勇者様。サクセスさんの事なら知っています。あなたが欲しい情報は全て持っています。まだ帰るのは早計かと。」


 ビビアンは、その「サクセスさん」という言葉に、足を止めた。

 それは、まるで本当にサクセスを知っているかのような物言い。


 だが直ぐには信じない。
 咄嗟に嘘をついていたのかもしれないから。


「嘘だったら承知しないわよ? 適当な事言って騙すようだったら……この国を壊すわ!」


 ビビアンの全身から邪悪なオーラが湧き上がる。


 それを見て「あわわわ……」と震えるシャナク。


 しかしその女は、ビビアンを全く恐れる事なく話を続けた。


「それはお怖いですね。でも嘘ではありません。ご紹介が遅れましたが、私はマネアと申します。そして、勇者様が探していた占い師です。」


 !?


 ビビアンは、自分が占い師を探しているのを知っている事に驚いた。


「な、なんでアンタがそれを……?」

「それは当然です。占い師ですから。そして私は、ここであなたに会うためにこの国に来ました。」


 マネアは、ジッとビビアンの事を見つめてそう答えると、しばらく二人はそのまま見つめ合う。


 ビビアンは相手の目から、真実を見極めようとした。


 嘘をついているなら、目を逸らすはず。


 そう思って、キツい目で睨むように見ていたのだが、マネアが目を逸らす事はなかった。


 嘘は言っていないようね。


 そこでビビアンは初めて今の言葉を信じる。


「わかったわ。じゃあさっさとサクセスの場所を教えなさい。」


 信じたからこそ、ビビアンは率直に聞いた。

 今聞きたいのは、マネアが何者であるかではない。

 サクセスの事だけだ。
 
 
 そしてマネアは、ビビアンが最も欲していた情報を話し始める。


「サクセスさんは、現在ここより南方にあるヒルダームという国にいます。」


 それを聞いた瞬間、ビビアンの顔が一瞬でパァッと明るくなった。


 遂に判明したサクセスの居場所。

 ビビアンにとって、これ程嬉しい情報はない。

 そんなビビアンを前に、更にマネアは続ける。


「そしてそこで邪悪なる者との闘いを終え、今頃はマーダ神殿に向かって出発している頃でしょう。ヒルダームからマーダ神殿までは馬車で十数日。今から向かえば、丁度マーダ神殿で会えるのではないでしょうか。」

 
 ビビアンは、あまりの喜びに発狂しそうになった。

 だが逆に、嬉しすぎてフリーズしてしまう。


 とはいえ、その顔は満面の笑み。


 一方、それを隣で聞いていたシャナクもまた、かなりホっとしていた。


 やっとか……。
 やっと私はこの恐怖から解放されるのか……。


 シャナクは心から安堵する。


「ありがとう! わかったわ、じゃあ早速マーダ神殿に向かうことにするわ。」


 ビビアンはその喜びを抑えながらもお礼を言うと、早速マーダ神殿に向かおうと踵を返す。

 その様子は、今にもスキップをしてしまいそうな程、軽やかなものだった。

 しかし、そんなビビアンを再度マネアは引き止める。

 話はまだ終わりではなかったのだ。


「お待ちください。その前に大事な事をお話しなければなりません。」


 これにシャナクは焦る。

 折角、ビビアンが上機嫌になったのに、その足取りを止めるという最悪な状況。

 これは、普段なら間違いなく鉄拳制裁案件だ。

 だがしかし、シャナクの不安は現実とはならない。

 何故なら、ビビアンは今、過去類を見ないほどに上機嫌であったからだ。

 それに一番欲しい情報をくれた相手の話だ、ビビアンとしても話を聞く価値がある。


 故に、ビビアンは立ち止まった。


「いいわよ、聞くわ。話しなさい。」


 ビビアンは振り返ると、そう口にする。
 
 それを聞いたマネアは、重々しく話し始めた。
 
 
「現在マーダ神殿は、魔王軍に襲われている状況です。今はまだ持ち堪えていますが、長くは持たないでしょう。」


「それは本当なの!? サクセスが危ないじゃない!」


 その話を聞いて焦るビビアン。

 さっきマネアから、サクセスがマーダ神殿に向かっていると聞いた。

 その話が本当なら、サクセスもそれに巻き込まれる可能性がある。


 そんな不安に襲われるビビアンに対して、マネアは更に最悪な事を口にした。


「事実です。そして今、新たに二人の魔王がそこに向かおうとしております。もしもその魔王達が到着したら、マーダ神殿は直ぐに陥落するでしょう。その為、時間がありません。どうかお力をお貸しください。」


 その願いは、切実な思いが込められている。

 そしてそれを聞いたビビアンは……


「当然よ! 行くわよ、今すぐに! こうしてはいられないわ!」


 サクセスが危ないと知り、居ても立っても居られなくなるビビアン。


 さっきまでの上機嫌と打って変わって、その表情は焦りの色、一色となる。


 しかしその時、ふとある事が気になった。
 
 それは、サクセスがこの事を知っているかどうかという事。

 もしも知っているならば、マーダ神殿には向かわないかもしれない。

 そうであれば、マネアには悪いが向かうべきはヒルダームだ。


「……ねぇ。ところで、サクセスはその事を知っているの?」


 ビビアンは率直にそう尋ねた。
 
 だが予想と異なり、マネアは初めて曖昧な答えをする。


「魔王が来ることまではわかりませんが、マーダ神殿がモンスターに襲われていることは知っている可能性があります。」

「可能性? どう言う事?」

「申し訳ございません。占いは全てがわかる訳ではないのです。ただ、これだけは言えます。サクセスさんは必ずマーダ神殿に向かいます。」


 それを聞いて、ビビアンは少し悩んだ。
 
 しかし、嘘を言っているようにも見えない。

 ならば信じるしかない。


「アタシ行くわ! マーダ神殿に!」


 ビビアンはそう決断すると、そこに今度はベンリー王が話に入ってきた。


「援軍感謝する! それでは、余がマーダ神殿に行くために最速の馬車を用意しよう。その代わり、ここにいるマネアとミーニャも連れて行ってほしい。」


 王は、二人の女性を指して言った。

 どうやら、もう一人のセクシーな女性はミーニャというらしい。

 ビビアンにとって、そんな事はどうでも良かったが、何故連れていかなければならないのか疑問だ。

 とはいえ、今更二人増えたところで問題はないから、断るつもりもない。

 それを条件に、足の速い馬車をもらえるならお釣りが来る。

 だがしかし、一応確認だけはしておく。

 二人がどの程度戦えるのかを。

 実際戦ってもらうつもりはないが、せめて何かあった時に逃げられるくらいでなければ困るからだ。


「一応聞くけど、二人は戦えるの?」


 その質問に、ベンリー王は自信満々に答える。


「もちろん。マネアは占い師でもあるが、高位の回復魔法が使える僧侶であり、ミーニャはこんな格好をしているが、スーパースターという上位職である。二人共戦力として申し分はないであろう。」


 それを聞いてビビアンは疑問の表情を浮かべた。

 僧侶は知っているが、スーパースターが何かわからない。

 とはいえ、一国の王がそれだけ自信をもって言うなら、一応信頼してもいいだろう。


「スーパースター? 何よそれ。まぁいいわ。来たいなら勝手についてきなさい。それよりアンタ、早くその馬車を用意しなさいよ。」


 王を相手に、アンタ呼ばわりのビビアン。

 ここにきて、焦りが最高潮になったビビアンは、いつもの調子に戻っていた。
 
 これには流石のベンリー王も苦笑いするしかない。

 しかしこの時はまだ気づかなかった。

 その苦笑いの表情が、青褪める事になるとは……。


「シャナク! 何ぼけっとしてんのよ! アンタも行くのよ!」

「は、はい! 仰せの前に!」
  

 ビビアンの焦りからくる怒りは、黙って聞いていただけのシャナクになぜか飛び火する。

 再び訪れるシャナクの不幸……。

 だがしかし、そんな事を感じている暇はシャナクにはない。
 

 早くしないと、殺される!


 すぐさま走ってビビアンの下に向かうシャナク。


 そんなシャナクの姿を見て、ベンリー王は驚いた。

 ベンリー王にとって、シャナクは自分の知る限り最強の賢者。

 そのシャナクが、あそこまで怯えている事に目を疑う。


 だが、ベンリー王はふと目線をビビアンに移すと……


 そこには、禍々しいオーラを放つ般若が立っていた。


 あれ? 
 ここにいたのって魔王だっけ?


 その疑問は、次の瞬間確信に変わる。


「馬車はどこよ! 早く用意しないとぶっ殺すわよ!」


 その殺気は、ベンリー王の肝を凍らせた。


 こ、怖すぎる……。


 恐怖に震えるベンリー王。


 そして……


 今度はシャナクが叫ぶ。


「ベンリー王よ! 頼む! 30秒で支度してくれ! まだ死ぬ訳にはいかぬのだ!」


 その必死な叫びに、ベンリー王はなんとか恐怖から立ち上がるも、余りに厳しい要求に弱音を洩らす。


「さ、流石に30秒では……。」


 その言葉を聞き取ったビビアンは怒り狂った。


「泣き言いってんじゃないわよ!」

「ひぃぃい! た、ただいますぐに!」


 顔を真っ青にさせたベンリー王は、そんな情けない声を上げると、真っ先に扉へ向かって駆け出した。


 誰よりも早く部屋を出るベンリー王。

 その姿は、とても一国を背負う王の姿ではなかった。


 こうしてベンリー王の努力?により、ビビアンは城を出て直ぐに高速馬車を手に入れる。

 そして、マネアとミーニャという新たな仲間と共に、マーダ神殿に向かうのであった。



 新パーティ
 マネア   僧侶      レベル38
 ミーニャ  スーパースター レベル29
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