チート装備のヤンデレ女勇者〜追放された幼馴染を探すのは、魔王を倒すより難しい〜

キミちゃん

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38 デスバトラー

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「ここは? いや、私は今まで何を……?」


 シャナクは気が付くと、マーダ神殿の町の外に来ていた。

 鬱蒼と生い茂る木々に囲まれたその場所。

 正確な位置は把握できないが、そこが森の中であるという事だけは理解する。

 そして、木々の間から光が差し込んでいないところを見るに、日は落ちている事が予想され、それは自分の記憶から既に半日は経過している事を意味する。


 その状況にシャナクが困惑していると、突然後ろの木の影から聞き覚えのある声が聞こえた。


「ココココ……コンバンワ。お元気かしらねぇ~え?」

「その声は!?」

 
 肩をビクッと震わせ、振り返るシャナク。

 するとそこにいたのは、やはりマーダ神殿に到着する前に現れた

 
  八天魔王が一人、大魔導士ゲルマニウム


であった。


 直ぐに戦闘態勢に入るシャナク。

 魔王相手では、一瞬の隙が命取りだ。
 
 ましてや、今は勇者もいなければ、仲間もいない。

 その状況判断の速さから、シャナクは呪文を唱える。


 【メラメラゾーン】


 しかし、シャナクの持つ杖から発射された巨大な火の玉は、ゲルマに届くことなく直前で霧散した。


「何っ!?」


 一瞬何が起こったのかわからず、シャナクは持っている杖に目を向けると、その様子を見て魔王は不適な笑みを浮かべる。


「んふぅ、そんなに怖がらなくていいのよん。私は大魔導士。あなた程度の魔法が通じるはずないのよぉん。」


 当たり前の事の様に告げる魔王。

 それを聞いたシャナクは、さっきから汗が止まらない。


 これは、まずいですぞ……。
 しかし、なぜ私は一人でここに?
 いや、それは後だ。まずはここから逃げ出さねば。


 そう思うシャナクであったが、逃げる隙が全く見当たらない。

 当然、今自分がいる位置も正確に把握できなければ、目の前の魔王が一人とも限らない。

 そして例え魔王が一人であっても、今の自分では到底太刀打ちできる相手ではなかった。


「貴様! 一体私に何の用だ!? 私ごとき倒したところで、お前にとっては何も変わらないぞ。」

「ココココ……これは面白い事を。あなたはとても重要よぉん。大魔王様にも言われているしねぇ~え。それにね、私はあなたを殺す気はないわよぉん。だからおびえないでねぇん。」


 殺す気はないだと!?
 ますます意味がわからぬ。
 いや……これはチャンスか?
 このまま会話をして、隙を見て逃げるしかない。


「どう……いうことだ?」

「んふふふん。あなた……勇者が嫌いでしょぉん? わかるわよぉぉ、見ていたからねぇーえ。本当に酷い女よねぇ。」


 シャナクを挑発するゲルマ。

 その目は面白そうに笑って見える。


「黙れ! 貴様に勇者様の何がわかる! それに私は好き嫌いで動く程、子供ではない!」

「あら、やだわねぇ~え。意地っ張りなんだからぁん。まぁいいわよん。じゃあ単刀直入に言うわねぇん。あなた……魔王軍に入りなさい。これは命令よぉぉ。」


 その言葉にシャナクは流石に激怒した。


「ふざけるな! 誰が魔王軍になど入るものか! これでも私はアリエヘン国筆頭王宮魔導士、賢者シャナクであるぞ! 見くびるでない!」


 そう叫ぶと同時に爆裂呪文を唱える。


 【ギガナゾン】


 その魔法を選択したのは、魔王を倒す為ではない。

 爆発に乗じて逃げるつもりであった。

 しかし不思議なことに、今度は魔法自体が発動しない……。


「なぜだ! なぜ魔法が発動せぬ!?」

「んふふふ、口ではそう言ってても体は正直なのよねぇん。まぁ時間もないし、あなたとのお話もお・わ・り。それではシモベになりなさぁぁい【邪印】」


 困惑するシャナクを前に、魔王は【邪印】という謎の呪文を唱えると、指先をシャナクに向けた。


 するとシャナクの体全体が紫色に発光し、闇のオーラに包まれる。


「ぐあぁぁぁ! な、なにをした! 私に何をしたぁぁぁぁ!」


 突然襲い来る激痛にシャナクは叫んだ。


「んふん、もうすぐ楽になるわよぉん。ほぉら、いい感じよぉぉ。」


 その言葉と同時に、シャナクの体が二倍ほどの大きさに膨れると、バリバリっと服が破れ落ち、漆黒の翼と角が二本生える。


「ゆ、ゆうしゃさまぁぁぁぁぁ!!」


 その言葉を最後にシャナクは完全に沈黙した。


 変わり果てた姿となったシャナクを見て、ご満悦そうに笑みを浮かべる魔王ゲルマニウム。


「ココココ……いい感じよぉん。そうねぇ、あなたに名前をつけてあげるわねぇ~え。デスバトラーっていうのはどうかしらねぇ~?」


 魔王がそう言うと、沈黙していたシャナクは顔をあげて即座に跪いた。


「は! 良き名でございます、ゲルマニウム様! ありがたき幸せ!」


 その顔は先ほどまで向けていた激しい怒りの表情ではなく、完全に忠誠を誓った相手にする顔である。


「ンフン、可愛い子ねぇん。あら、もう時間よぉ。それじゃあ、あなたに最初の任務を与えるわ~ん。……あいつらを殺しなさい!」


 突然魔王は、森の東方を指差して命令した。


 目が慣れていなかった頃は分からなかったが、今のシャナク……いや、デスバトラーには東側に何があるか見えていた。

 デスバトラーの目に映るのは、東に広がる大平原と、そこから馬に乗ってこちらに向かっている十人程の兵士達。


 この時デスバトラーは知らないが、今そこに向かっているのは魔法戦士ブライアンとその仲間達である。

 彼は、マーダ神殿からフラフラと街の外に出て行った男がいると聞きつけて、探しに来ていたのだった。


 視線を魔王に戻すと、頭を下げて敬礼するデスバトラー。


「は! 必ずや殺してみせましょう!」


 デスバトラーはそう言うと、兵士達の方に向かって飛んでいく。


「んふふふふ、期待しているわよぉん。まぁあなたの本当の仕事はこれからだけどねぇん。ワクワクするわぁねぇ~え……。ココココ……。」


 ゲルマは楽しそうに邪悪な笑みを浮かべると、再びその場から闇に消えるのであった……。
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