39 / 50
39 シャナクの記憶
しおりを挟む
マーダ神殿の街より出た、総勢12名もの兵士達が今、西の大森林方向へ馬に乗って駆けている。
街の駐屯地にて警戒待機していたその部隊は、町の者より、一人の男がフラフラと外に出て行ってしまったとの報告を受け、その男の捜索に向かった。
先の勝利により、この辺りの魔物は落ち着いたとは故、未だ予断の許さない状況には変わりない。
そんな中、その先頭を颯爽と走るは、ライブハット最高戦力のブライアン。
その後ろに続く、彼が率いるその部隊は、
【ベンリー特戦隊】
と呼ばれるライブハット国の精鋭部隊であり、当然隊長はブライアンである。
ちなみに部隊は四人一組の三パーティで構成されており、同構成は
パラディン 三名
バトルマスター 三名
賢者 三名
レンジャー 二名
魔法戦士 一名
と、全て上級職業で固められ、かつ、バランスの取れた編成だった。
「隊長! 森から何かが出てきます! 止まって下さい!」
そう声を上げたレンジャーの一人は、索敵スキルの効果範囲に入る為、ブライアンを追い抜くと……次の瞬間に氷漬けにされてしまう。
「アトス!? 全軍止まれ!!」
ブライアンは、全軍を停止させて馬から降りると、森から飛んできた何かが高速で接近してきた。
目の前に降りてきたそれは、今までに出会った事がないモンスター。
人と同じ二足歩行で、人に近い顔。
一見すると人に見えなくもないが、そうでは無い事は直ぐにわかる。
何故なら目の前のそれは、頭に二本の角を生やし、背中には巨大な漆黒の翼があった。
俗にいう、悪魔と呼ばれる強力なモンスターだとブライアンは推測する。
「モロチャ! すぐにアトスに回復魔法をかけて下がるでござる! 各自戦闘態勢! 補助魔法も忘れるな!」
すぐさまブライアンは全パーティに指示を飛ばした。
モロチャと呼ばれた賢者は、直ぐにアトスの下に駆け付けて【エクスヒーリング】をかけると、もう一人の賢者は、直ぐにパーティを強化させる為に補助魔法を唱える。
ブライアン達は精鋭部隊と呼ばれるだけはあり、その行動は早い。
ーーがしかし、何故か補助魔法は発動しない。
発動したのは、最初に唱えたエクスヒーリングだけであった。
その答えはすぐにわかる。
賢者たちが魔法を使おうとしている間、そのモンスターが何もしていないはずがなかったのだ。
そのモンスターは腕を前に差し伸ばすと、ある闇魔法を唱えていたのである。
それは魔族のみが使える闇魔法で、一定エリア内の魔法をかき消す【カースフィールド】と呼ばれる魔法だった。
「馬鹿な! 全員馬に乗れ! マーダ神殿に戻るでござる!」
長年の経験からか、ブライアンの全身が警笛を鳴らしている
ーー目の前の敵と戦ってはならないと。
故にその判断は早かった。
……しかし
「逃がすわけがありませんよ。あなた達の行動は全てわかりますからね。キィェェェェェェ!!」
そのモンスターは、まるで人間のような丁寧な言葉遣いで話し始めると、突然【おたけび】をあげた。
すると、ブライアン達が乗っていた馬が全て気絶して倒れる。
「なに!? お前は一体何者だ? まさか……お前が魔王でござるか?」
その規格外の強さと理知的な話し方から、ブライアンは目の前にいる者を魔王だと推測するも
……それを即座に否定される。
「いえいえ、私などを魔王様と一緒にされるなど恐れ多い事でございます。私の名前はデスバトラー。魔王様の手下に過ぎませんよ。」
その言葉にブライアン達は恐怖した。
魔王とは、今目の前にいるこいつよりも強いのかと……。
だがそんな事よりも、ブライアンは決断をしなければならない。
この情報を持ち帰る為、半分が囮となり、残り半分を逃すか。もしくは、全員で蜘蛛の子を散らす様に逃げていくか。
どちらをとっても、自分だけは足止めをする事になるだろう。
少しでも生存率を上げる為、ブライアンは方針を早く決めなければならない。
だがどういう訳か、目の前の敵は雄叫びをあげた後、一向に攻撃してこず、こちらの質問に丁寧に答えてくれている。
それならば、せめて逃げる前にもう少し情報を探る事に決めた。
そして後にブライアンは後悔する。
この時の判断が大きく間違っていた事に……。
「お前は魔王に命じられて単身でマーダ神殿を襲いにきたでござるか? だが残念だったでごさる。あそこには勇者様率いる最強パーティがいる。吾輩達を倒したところで、お前だけじゃ勇者様には勝てないでござるよ。」
あえて勇者の名前を出しつつ、情報を探るブライアン。
すると意外な事に、デスバトラーはそれを首肯しつつ、欲しい情報を話してくれた。
「わかっていますともそのくらい。私はただ魔王様にあなた達を殺すように言われただけです。あなた達を殺したら、すぐに魔王様のところに戻りますとも。」
その言葉を聞いてブライアンは理解すると同時に、覚悟を決める。
自分がこの場でデスバトラーを抑えている間に、仲間全員を逃すと。
「皆の者きけぇーーい! 全員ここから走って逃げろ! 吾輩が時間を稼ぐでござる!」
ブライアンはそう叫ぶと同時にデスバトラーに襲い掛かるが、それよりも早く、デスバトラーが口から黒いの炎を吐き出した。
その黒い炎は想像を絶する威力であり、付近一帯を一瞬で炭に変えてしまう。
「ぎゃあぁぁぁぁ!」
「た、たすけてくれぇーー!」
「燃える! 俺の体が燃えるぅぅ!」
なんとその一撃により、ブライアン以外の全員が一瞬で全滅してしまった。
だがブライアンだけは、ライブハット国の秘宝【フレイムアーマー】のお蔭で軽傷で済む。
この鎧は炎の効果を打ち消し、そのダメージを激減させるのだが、それでもこの黒き炎の前では全てを防ぐ事は叶わなかった。
全身に大火傷を負うブライアン。
だが、それでも姿形を残さず、一瞬で骨まで溶かされた他の仲間に比べれば、軽傷とも言えよう。
「逃がすはずがないでしょう? 先ほど言いましたよね? あなた達を全員殺すと。どうやら一人は殺し損ねましたがね。」
まるで当然の事のように言い放つデスバトラー。
さっきから饒舌に話していたのは、どうせ死ぬ者達とわかっていたからである。
そして唯一生き残ったブライアンは、全身に走る痛みを堪えて立ち上がった。
「きっさまぁ! よくも仲間達を! お前だけは絶対に許さんでござる!」
仲間達の死に、激情に駆られたブライアンは特攻する。
ブリザック斬り!
敵が炎を放った事から、氷が弱点だと判断したブライアンは、氷属性の斬撃を放った。
ーーがしかし、デスバトラーはいとも簡単にその剣を片手で受け止める。
「ふむ、いい判断ですね。しかし、弱い。その程度の攻撃に魔法を使うまでもない。」
そういうと、デスバトラーは右手拳でブライアンの腹部を殴り飛ばした。
「ガッはァァ!」
その一撃で内蔵をやられたブライアンは、口から大量の血を吐き出す。
「弱い。弱いですねぇ。それでもライブハットに名を轟かす魔法戦士ですか? これでは話になりませんね。」
「な、なぜ、それを……。」
突然自分の事を話したデスバトラーに、ブライアンは驚いた。
しかし、どういう訳か話した本人であるデスバトラーが困惑している。
「はて? なぜ私はあなたの事を知っているのでしょうね? うーん。よくわかりませんが、まぁどうでもいい事です。後で魔王様に聞いてみる事にしましょう。」
デスバトラーは自分に人間の頃の記憶が残っている事に気付いていない。
まだシャナクの記憶がその中にあると。
そして困惑している隙に、ブライアンは何かを袋から取り出すと、そっと宙に放つ。
それは、誰もが知るアイテム
【キマイラの翼】
だった。
すると、突然上空にキマイラが現れると、その背にブライアンが飛び乗る。
それを見て初めて焦るデスバトラー。
デスバトラーは知っている。いや、覚えていると言った方が正しい。記憶の中にある、そのアイテムと現れたものが何であるかを。
幽世とこの世界を行き来するその生物は、キマイラと呼ばれる幻獣。
これに乗られると、乗った者もまた幽世に身を置く為、攻撃が届かなくなるのだ。
故にそうなると手出しができない。
まさかここに来て、勇猛なブライアンが逃げるとは夢にも思わなかった。
「しまった! 王国戦士長ともあろう方が、死んだ仲間を置いて逃げるというのですか?」
デスバトラーは叫ぶも、それをブライアンは血の涙を流して睨みつけている。
デスバトラーが言うように、本来ブライアンは死んでしまったとはいえ、仲間を置いて逃げるような男ではない。
だがそれ以上に、この危機をマーダ神殿に伝えなければならないという責任感が、彼に逃げることを選択させた。
ここで自分が死んでは、マーダ神殿……いや、人類にとって大きな脅威となるこの事を伝える事が出来なくなる。
そうなれば死んだ仲間もまた、死んだ事実も知られず、弔われる事もないだろう。
故に、逃げる事を選択したブライアン本人が、一番自分の行動に怒りを覚えていた。
「お前は……お前だけは絶対に吾輩の手で倒すでござる!」
その言葉を残して、キマイラはマーダ神殿の町に飛んで行った。
そして残されたデスバトラーは、まるで人間の様にがっかりと肩を落とす。
「困りましたね……これではまた叱られてしまいます。まぁでも、いつもの事ですね。」
シャナクの頃の記憶から、怒られることには慣れていると感じるデスバトラー。
デスバトラーは生まれたばかりであり、怒られたことはないにも関わらず、その矛盾には気づかない。
こうしてなんとか逃げ延びたブライアンは、マーダ神殿の町の広場に落とされると、その場に倒れ込んで慟哭を上げていた。
「う、うおぉぉぉぉぉ! 吾輩は! 吾輩はぁぁ!」
自分の判断が遅かったばかりに、仲間を全員失ってしまったブライアン……
すまない! すまないでごさるよ!
吾輩が不甲斐ないせいで……お前達は……。
あいつだけは絶対に許さぬ!
この手で必ず、奴だけは倒してみせるでござるよ!
そう強く心に誓うのであった。
街の駐屯地にて警戒待機していたその部隊は、町の者より、一人の男がフラフラと外に出て行ってしまったとの報告を受け、その男の捜索に向かった。
先の勝利により、この辺りの魔物は落ち着いたとは故、未だ予断の許さない状況には変わりない。
そんな中、その先頭を颯爽と走るは、ライブハット最高戦力のブライアン。
その後ろに続く、彼が率いるその部隊は、
【ベンリー特戦隊】
と呼ばれるライブハット国の精鋭部隊であり、当然隊長はブライアンである。
ちなみに部隊は四人一組の三パーティで構成されており、同構成は
パラディン 三名
バトルマスター 三名
賢者 三名
レンジャー 二名
魔法戦士 一名
と、全て上級職業で固められ、かつ、バランスの取れた編成だった。
「隊長! 森から何かが出てきます! 止まって下さい!」
そう声を上げたレンジャーの一人は、索敵スキルの効果範囲に入る為、ブライアンを追い抜くと……次の瞬間に氷漬けにされてしまう。
「アトス!? 全軍止まれ!!」
ブライアンは、全軍を停止させて馬から降りると、森から飛んできた何かが高速で接近してきた。
目の前に降りてきたそれは、今までに出会った事がないモンスター。
人と同じ二足歩行で、人に近い顔。
一見すると人に見えなくもないが、そうでは無い事は直ぐにわかる。
何故なら目の前のそれは、頭に二本の角を生やし、背中には巨大な漆黒の翼があった。
俗にいう、悪魔と呼ばれる強力なモンスターだとブライアンは推測する。
「モロチャ! すぐにアトスに回復魔法をかけて下がるでござる! 各自戦闘態勢! 補助魔法も忘れるな!」
すぐさまブライアンは全パーティに指示を飛ばした。
モロチャと呼ばれた賢者は、直ぐにアトスの下に駆け付けて【エクスヒーリング】をかけると、もう一人の賢者は、直ぐにパーティを強化させる為に補助魔法を唱える。
ブライアン達は精鋭部隊と呼ばれるだけはあり、その行動は早い。
ーーがしかし、何故か補助魔法は発動しない。
発動したのは、最初に唱えたエクスヒーリングだけであった。
その答えはすぐにわかる。
賢者たちが魔法を使おうとしている間、そのモンスターが何もしていないはずがなかったのだ。
そのモンスターは腕を前に差し伸ばすと、ある闇魔法を唱えていたのである。
それは魔族のみが使える闇魔法で、一定エリア内の魔法をかき消す【カースフィールド】と呼ばれる魔法だった。
「馬鹿な! 全員馬に乗れ! マーダ神殿に戻るでござる!」
長年の経験からか、ブライアンの全身が警笛を鳴らしている
ーー目の前の敵と戦ってはならないと。
故にその判断は早かった。
……しかし
「逃がすわけがありませんよ。あなた達の行動は全てわかりますからね。キィェェェェェェ!!」
そのモンスターは、まるで人間のような丁寧な言葉遣いで話し始めると、突然【おたけび】をあげた。
すると、ブライアン達が乗っていた馬が全て気絶して倒れる。
「なに!? お前は一体何者だ? まさか……お前が魔王でござるか?」
その規格外の強さと理知的な話し方から、ブライアンは目の前にいる者を魔王だと推測するも
……それを即座に否定される。
「いえいえ、私などを魔王様と一緒にされるなど恐れ多い事でございます。私の名前はデスバトラー。魔王様の手下に過ぎませんよ。」
その言葉にブライアン達は恐怖した。
魔王とは、今目の前にいるこいつよりも強いのかと……。
だがそんな事よりも、ブライアンは決断をしなければならない。
この情報を持ち帰る為、半分が囮となり、残り半分を逃すか。もしくは、全員で蜘蛛の子を散らす様に逃げていくか。
どちらをとっても、自分だけは足止めをする事になるだろう。
少しでも生存率を上げる為、ブライアンは方針を早く決めなければならない。
だがどういう訳か、目の前の敵は雄叫びをあげた後、一向に攻撃してこず、こちらの質問に丁寧に答えてくれている。
それならば、せめて逃げる前にもう少し情報を探る事に決めた。
そして後にブライアンは後悔する。
この時の判断が大きく間違っていた事に……。
「お前は魔王に命じられて単身でマーダ神殿を襲いにきたでござるか? だが残念だったでごさる。あそこには勇者様率いる最強パーティがいる。吾輩達を倒したところで、お前だけじゃ勇者様には勝てないでござるよ。」
あえて勇者の名前を出しつつ、情報を探るブライアン。
すると意外な事に、デスバトラーはそれを首肯しつつ、欲しい情報を話してくれた。
「わかっていますともそのくらい。私はただ魔王様にあなた達を殺すように言われただけです。あなた達を殺したら、すぐに魔王様のところに戻りますとも。」
その言葉を聞いてブライアンは理解すると同時に、覚悟を決める。
自分がこの場でデスバトラーを抑えている間に、仲間全員を逃すと。
「皆の者きけぇーーい! 全員ここから走って逃げろ! 吾輩が時間を稼ぐでござる!」
ブライアンはそう叫ぶと同時にデスバトラーに襲い掛かるが、それよりも早く、デスバトラーが口から黒いの炎を吐き出した。
その黒い炎は想像を絶する威力であり、付近一帯を一瞬で炭に変えてしまう。
「ぎゃあぁぁぁぁ!」
「た、たすけてくれぇーー!」
「燃える! 俺の体が燃えるぅぅ!」
なんとその一撃により、ブライアン以外の全員が一瞬で全滅してしまった。
だがブライアンだけは、ライブハット国の秘宝【フレイムアーマー】のお蔭で軽傷で済む。
この鎧は炎の効果を打ち消し、そのダメージを激減させるのだが、それでもこの黒き炎の前では全てを防ぐ事は叶わなかった。
全身に大火傷を負うブライアン。
だが、それでも姿形を残さず、一瞬で骨まで溶かされた他の仲間に比べれば、軽傷とも言えよう。
「逃がすはずがないでしょう? 先ほど言いましたよね? あなた達を全員殺すと。どうやら一人は殺し損ねましたがね。」
まるで当然の事のように言い放つデスバトラー。
さっきから饒舌に話していたのは、どうせ死ぬ者達とわかっていたからである。
そして唯一生き残ったブライアンは、全身に走る痛みを堪えて立ち上がった。
「きっさまぁ! よくも仲間達を! お前だけは絶対に許さんでござる!」
仲間達の死に、激情に駆られたブライアンは特攻する。
ブリザック斬り!
敵が炎を放った事から、氷が弱点だと判断したブライアンは、氷属性の斬撃を放った。
ーーがしかし、デスバトラーはいとも簡単にその剣を片手で受け止める。
「ふむ、いい判断ですね。しかし、弱い。その程度の攻撃に魔法を使うまでもない。」
そういうと、デスバトラーは右手拳でブライアンの腹部を殴り飛ばした。
「ガッはァァ!」
その一撃で内蔵をやられたブライアンは、口から大量の血を吐き出す。
「弱い。弱いですねぇ。それでもライブハットに名を轟かす魔法戦士ですか? これでは話になりませんね。」
「な、なぜ、それを……。」
突然自分の事を話したデスバトラーに、ブライアンは驚いた。
しかし、どういう訳か話した本人であるデスバトラーが困惑している。
「はて? なぜ私はあなたの事を知っているのでしょうね? うーん。よくわかりませんが、まぁどうでもいい事です。後で魔王様に聞いてみる事にしましょう。」
デスバトラーは自分に人間の頃の記憶が残っている事に気付いていない。
まだシャナクの記憶がその中にあると。
そして困惑している隙に、ブライアンは何かを袋から取り出すと、そっと宙に放つ。
それは、誰もが知るアイテム
【キマイラの翼】
だった。
すると、突然上空にキマイラが現れると、その背にブライアンが飛び乗る。
それを見て初めて焦るデスバトラー。
デスバトラーは知っている。いや、覚えていると言った方が正しい。記憶の中にある、そのアイテムと現れたものが何であるかを。
幽世とこの世界を行き来するその生物は、キマイラと呼ばれる幻獣。
これに乗られると、乗った者もまた幽世に身を置く為、攻撃が届かなくなるのだ。
故にそうなると手出しができない。
まさかここに来て、勇猛なブライアンが逃げるとは夢にも思わなかった。
「しまった! 王国戦士長ともあろう方が、死んだ仲間を置いて逃げるというのですか?」
デスバトラーは叫ぶも、それをブライアンは血の涙を流して睨みつけている。
デスバトラーが言うように、本来ブライアンは死んでしまったとはいえ、仲間を置いて逃げるような男ではない。
だがそれ以上に、この危機をマーダ神殿に伝えなければならないという責任感が、彼に逃げることを選択させた。
ここで自分が死んでは、マーダ神殿……いや、人類にとって大きな脅威となるこの事を伝える事が出来なくなる。
そうなれば死んだ仲間もまた、死んだ事実も知られず、弔われる事もないだろう。
故に、逃げる事を選択したブライアン本人が、一番自分の行動に怒りを覚えていた。
「お前は……お前だけは絶対に吾輩の手で倒すでござる!」
その言葉を残して、キマイラはマーダ神殿の町に飛んで行った。
そして残されたデスバトラーは、まるで人間の様にがっかりと肩を落とす。
「困りましたね……これではまた叱られてしまいます。まぁでも、いつもの事ですね。」
シャナクの頃の記憶から、怒られることには慣れていると感じるデスバトラー。
デスバトラーは生まれたばかりであり、怒られたことはないにも関わらず、その矛盾には気づかない。
こうしてなんとか逃げ延びたブライアンは、マーダ神殿の町の広場に落とされると、その場に倒れ込んで慟哭を上げていた。
「う、うおぉぉぉぉぉ! 吾輩は! 吾輩はぁぁ!」
自分の判断が遅かったばかりに、仲間を全員失ってしまったブライアン……
すまない! すまないでごさるよ!
吾輩が不甲斐ないせいで……お前達は……。
あいつだけは絶対に許さぬ!
この手で必ず、奴だけは倒してみせるでござるよ!
そう強く心に誓うのであった。
0
あなたにおすすめの小説
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる