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もしかしたら、ちょうどこちらに向かうマーティーと入れ違いになってしまうかもしれない。
そんなことを考えながらやってきたのだったが、どうやらそんな心配は必要なかったらしい。
というのも、彼の屋敷に到着してみれば、あっさりと使用人が、マーティは家にいると告げたからである。
アリスは使用人の後ろをついて歩きながらも、怒りに口をへの字に曲げていた。
約束の時間に遅れた上に、まだ家を出てもいないなんて!
彼に会ったら、開口一番何て言ってやろうかと考えていたのだったが、そんな考えは、急に聞こえてきた怒鳴り声に驚いて、飛んで行ってしまった。
使用人も足を止めて、目を見開いている。
それから戸惑いつつも
「少々お待ちください」
とアリスに声をかけると、ノックをしようと扉に手を伸ばしたが、そこでまた大声が聞こえてきた。
「ディアス伯爵の手紙に書いてあることは本当なのか!
ネリー嬢との婚約破棄をしたというのは、どういうことだ!?」
アリスはビクリと肩を揺らした。
単に大声に驚いたから、ばかりではない。
この声の主は、マーティの父、エドウィン男爵だと気が付いたからである。
穏やかに微笑む彼しか見たことがなかったから、まさかこんなに声を荒げることがあるなんて、と茫然としてしまう。
なにしろ使用人もノックを躊躇う程の剣幕なのである。
「だって、それはネリーの方から言ってきたんだから、仕方ないじゃないか!」
次に聞こえてきたのはマーティの声だ。
彼もかなり興奮しているのが伝わってくる。
どうやら親子で言い合いをしているらしい。
そしてその話の内容は、明らかに自分に関わることだ、と思い当たると、アリスはごくりと喉をならした。
「とにかく、後でちゃんと話すって!
とにかく今は、アリスの家に行かないと、約束の時間が……」
アリスの名前までもが飛び出してきたものだから、使用人は、これ以上立ち呆けているわけにはいかないと思ったのだろう。
慌ててノックをすると、男爵のイライラした声が返ってきた。
「なんだ!後にしてくれ」
しかし使用人はそれには答えずに扉を開くと、怒りに顔を赤くした男爵とマーティが、同時にこちらに顔を向けた。
そして、ギョッとして目を見開いた。
これにはさすがのアリスも気まずくて。
「お、お邪魔します……」
と、弱々しい微笑みを浮かべながら、お辞儀をするしかなかったのである。
そんなことを考えながらやってきたのだったが、どうやらそんな心配は必要なかったらしい。
というのも、彼の屋敷に到着してみれば、あっさりと使用人が、マーティは家にいると告げたからである。
アリスは使用人の後ろをついて歩きながらも、怒りに口をへの字に曲げていた。
約束の時間に遅れた上に、まだ家を出てもいないなんて!
彼に会ったら、開口一番何て言ってやろうかと考えていたのだったが、そんな考えは、急に聞こえてきた怒鳴り声に驚いて、飛んで行ってしまった。
使用人も足を止めて、目を見開いている。
それから戸惑いつつも
「少々お待ちください」
とアリスに声をかけると、ノックをしようと扉に手を伸ばしたが、そこでまた大声が聞こえてきた。
「ディアス伯爵の手紙に書いてあることは本当なのか!
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アリスはビクリと肩を揺らした。
単に大声に驚いたから、ばかりではない。
この声の主は、マーティの父、エドウィン男爵だと気が付いたからである。
穏やかに微笑む彼しか見たことがなかったから、まさかこんなに声を荒げることがあるなんて、と茫然としてしまう。
なにしろ使用人もノックを躊躇う程の剣幕なのである。
「だって、それはネリーの方から言ってきたんだから、仕方ないじゃないか!」
次に聞こえてきたのはマーティの声だ。
彼もかなり興奮しているのが伝わってくる。
どうやら親子で言い合いをしているらしい。
そしてその話の内容は、明らかに自分に関わることだ、と思い当たると、アリスはごくりと喉をならした。
「とにかく、後でちゃんと話すって!
とにかく今は、アリスの家に行かないと、約束の時間が……」
アリスの名前までもが飛び出してきたものだから、使用人は、これ以上立ち呆けているわけにはいかないと思ったのだろう。
慌ててノックをすると、男爵のイライラした声が返ってきた。
「なんだ!後にしてくれ」
しかし使用人はそれには答えずに扉を開くと、怒りに顔を赤くした男爵とマーティが、同時にこちらに顔を向けた。
そして、ギョッとして目を見開いた。
これにはさすがのアリスも気まずくて。
「お、お邪魔します……」
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