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第二章 間違いが、正解を教えてくれる。
休み大ボケ! てへぺろ間宮陸人。
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「みゃーちゃん、本当に行くつもりなの?」
銀田の心配をよそに、久しぶりに早起きした俺は、1週間ぶりの出社のため、銀田宅の玄関で革靴に足を通していた。
「ったりめーだろ! そもそも失恋ごときで1週間も会社休むってのが、すでに社会人失格なんだよ」
「だって、みゃーちゃん大熱出してたじゃない」
「んなの、とっくに回復してるっつーの、子供じゃあるまいし」
「ほんとうに??」
その言葉と同時に、ザギンの骨張った手が、俺のおでこに当てられて、思わずビクンッと震えてしまう。
「っだ、大丈夫だわ、おかげさまで」
熱を出してからの1週間、ザギンは、一度も俺に触れてこなかったので、久しぶりの人肌に背中がゾワリとした。
もう条件反射に近い。ザギンにめちゃくちゃに抱かれた、あの夜を、どうやら俺の身体はまだ忘れられずにいるようだった。
変な気持ちを切り替えるために、俺は、玄関を出るとすぐさま、会社に連絡を入れた……入れようとした。
「…………あれ?」
耳元には、永遠に電話が鳴る音が聞こえるだけで、待てど暮らせど繋がらない。
なんだ、なんだ? 1週間も社会人投げ出してたから、休みボケして連絡先間違えたか?
まさか間違えて、山田に電話しちまってるんじゃ!?
なんせ、たろさんとスマホを交換しているものだから、電話番号も手入力しているのだ。
一瞬で青ざめ、慌ててスマホ画面を確認するも、そこには、やはり見慣れた自分の会社の番号が表示されている。
あれえー? おっかしいなぁー……そう思いつつも、銀田の言う通りにエレベーターに乗り、タワマンのエントランスに向かうと、確かに銀田の言う通り、何のお咎めもなくスムーズに外に出ることができた。
入るのは大変な割に、出るのはあっけないほど簡単だなんて、なんだか拍子抜けしてしまう。
それにしても…………。
俺は、明るい空の下で、初めてタワマンの姿をちゃんと拝むことができたわけだが……。
自分が、このタワマンの最上階の部屋で1週間も過ごしていただなんて、にわかには信じがたかった。
「……ふーーーぅ……」
思わず腹の底からため息をついて、歩き出そうとすると、目の前の道路の遊歩道を、華やかな着物で着飾った女の子たちが、楽しげに歩いているのが目に入った。
わぁーっ! 着物なんて久しぶりに見たなぁー……さすが都会、何でもない日にも着物を着る女の子がいるなんてなぁー……。
「…………ん?」
はたと、思うところあって、俺は慌ててスマホを手に取った。
スマホ画面は、1月1日を表示していた。ご丁寧にも、日付の下には「明けましておめでとうございます!」の表示までされている。
「さすがは、たろさん、スマホまで気が利くぅー!」
まさか親友のスマホに壊れていて欲しいと思う日が来るとは思ってもみなかった。
俺は思わずしゃがみ込んで頭を抱えていたが、すっくと立つと、今出てきたばかりのタワマンの玄関ドアを引き返した。
すると、すぐさま、先ほどは丁寧にお辞儀をしてくれたコンシェルジュが、まるで初めて会ったかのような警戒の視線を向けてきたではありませんか。
………………なっ、なして?
俺は仕方なく、銀田に電話を掛けるのだった。
5分も立たずに、銀田がエントランスに現れた。最初に会ったときは、随分とスマートな歩き方に見えたが、今、目の前の銀田は、気を抜くとうっかりスキップでもしかねないというような、端からみても明らかに浮き足立って見える。
……シッポが、シッポが見えるぞオイ……。
「みゃーちゃん、みゃーちゃん、どうしたの? 何か忘れ物でもした??」
「なーーにが忘れ物じゃーボケ! おっまえ、今日が元旦だって何で言わねーんだよ!」
まぁ、これはただの八つ当たりである。
「えっ……えっ!? 言われてみれば元旦だったね! みゃーちゃん、明けましておめでとう! 今年もよろしくね!」
「…………いや、ちがくて」
「…………えっ!?」
「…………」
…………なるほど。
そもそもコイツには、三が日は一般的に仕事は休みだって常識が無えのか……?
まぁ、タワマンの最上階にいたら、毎日がお正月みたいなもんだろうしな、ははははは!
そんなこんなで、結局、俺はそれから会社の正月休み明けまで、また銀田の部屋で過ごすことになってしまったのである。
もちろん、自分のアパートに帰ることだって、できたんだけど、何だか正月くらい、パーッと派手に過ごしてもいいかな、なんて魔が差したのだ。
それに、実家に帰るのも、一人で過ごすのも、何だか山田のことばかり考えてしまいそうで……俺は多分、銀田のことを都合良く利用してしまった。
その分、手を出されても恨みっこなしにしようと思っていたのに、やっぱり銀田は一度も俺に、触れてはこないのだった。
銀田の心配をよそに、久しぶりに早起きした俺は、1週間ぶりの出社のため、銀田宅の玄関で革靴に足を通していた。
「ったりめーだろ! そもそも失恋ごときで1週間も会社休むってのが、すでに社会人失格なんだよ」
「だって、みゃーちゃん大熱出してたじゃない」
「んなの、とっくに回復してるっつーの、子供じゃあるまいし」
「ほんとうに??」
その言葉と同時に、ザギンの骨張った手が、俺のおでこに当てられて、思わずビクンッと震えてしまう。
「っだ、大丈夫だわ、おかげさまで」
熱を出してからの1週間、ザギンは、一度も俺に触れてこなかったので、久しぶりの人肌に背中がゾワリとした。
もう条件反射に近い。ザギンにめちゃくちゃに抱かれた、あの夜を、どうやら俺の身体はまだ忘れられずにいるようだった。
変な気持ちを切り替えるために、俺は、玄関を出るとすぐさま、会社に連絡を入れた……入れようとした。
「…………あれ?」
耳元には、永遠に電話が鳴る音が聞こえるだけで、待てど暮らせど繋がらない。
なんだ、なんだ? 1週間も社会人投げ出してたから、休みボケして連絡先間違えたか?
まさか間違えて、山田に電話しちまってるんじゃ!?
なんせ、たろさんとスマホを交換しているものだから、電話番号も手入力しているのだ。
一瞬で青ざめ、慌ててスマホ画面を確認するも、そこには、やはり見慣れた自分の会社の番号が表示されている。
あれえー? おっかしいなぁー……そう思いつつも、銀田の言う通りにエレベーターに乗り、タワマンのエントランスに向かうと、確かに銀田の言う通り、何のお咎めもなくスムーズに外に出ることができた。
入るのは大変な割に、出るのはあっけないほど簡単だなんて、なんだか拍子抜けしてしまう。
それにしても…………。
俺は、明るい空の下で、初めてタワマンの姿をちゃんと拝むことができたわけだが……。
自分が、このタワマンの最上階の部屋で1週間も過ごしていただなんて、にわかには信じがたかった。
「……ふーーーぅ……」
思わず腹の底からため息をついて、歩き出そうとすると、目の前の道路の遊歩道を、華やかな着物で着飾った女の子たちが、楽しげに歩いているのが目に入った。
わぁーっ! 着物なんて久しぶりに見たなぁー……さすが都会、何でもない日にも着物を着る女の子がいるなんてなぁー……。
「…………ん?」
はたと、思うところあって、俺は慌ててスマホを手に取った。
スマホ画面は、1月1日を表示していた。ご丁寧にも、日付の下には「明けましておめでとうございます!」の表示までされている。
「さすがは、たろさん、スマホまで気が利くぅー!」
まさか親友のスマホに壊れていて欲しいと思う日が来るとは思ってもみなかった。
俺は思わずしゃがみ込んで頭を抱えていたが、すっくと立つと、今出てきたばかりのタワマンの玄関ドアを引き返した。
すると、すぐさま、先ほどは丁寧にお辞儀をしてくれたコンシェルジュが、まるで初めて会ったかのような警戒の視線を向けてきたではありませんか。
………………なっ、なして?
俺は仕方なく、銀田に電話を掛けるのだった。
5分も立たずに、銀田がエントランスに現れた。最初に会ったときは、随分とスマートな歩き方に見えたが、今、目の前の銀田は、気を抜くとうっかりスキップでもしかねないというような、端からみても明らかに浮き足立って見える。
……シッポが、シッポが見えるぞオイ……。
「みゃーちゃん、みゃーちゃん、どうしたの? 何か忘れ物でもした??」
「なーーにが忘れ物じゃーボケ! おっまえ、今日が元旦だって何で言わねーんだよ!」
まぁ、これはただの八つ当たりである。
「えっ……えっ!? 言われてみれば元旦だったね! みゃーちゃん、明けましておめでとう! 今年もよろしくね!」
「…………いや、ちがくて」
「…………えっ!?」
「…………」
…………なるほど。
そもそもコイツには、三が日は一般的に仕事は休みだって常識が無えのか……?
まぁ、タワマンの最上階にいたら、毎日がお正月みたいなもんだろうしな、ははははは!
そんなこんなで、結局、俺はそれから会社の正月休み明けまで、また銀田の部屋で過ごすことになってしまったのである。
もちろん、自分のアパートに帰ることだって、できたんだけど、何だか正月くらい、パーッと派手に過ごしてもいいかな、なんて魔が差したのだ。
それに、実家に帰るのも、一人で過ごすのも、何だか山田のことばかり考えてしまいそうで……俺は多分、銀田のことを都合良く利用してしまった。
その分、手を出されても恨みっこなしにしようと思っていたのに、やっぱり銀田は一度も俺に、触れてはこないのだった。
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