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2.変声期? まさか!
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率直な第一印象が意外さを伴い、口を突いて出た。
そしてまたもやびっくりする。声が、自分の声とは全然違う。私はハスキーボイスで、強く意識して話さない限り、きついかすれ声になってしまう。それが、たった今口から流れでたのは、柔らかくて色っぽさが滲んでいて、それでいてどこか冷たさも含んでいる――とにかく、私自身の声とは掛け離れている。
私の内に、嫌な予感が沸き起こった。
創作の中では頻繁に起きる、しかし現実にはあり得ないはずの事態が、この身に降り懸かった?
一応、考えられるのは、大きく分けて三つ。
1.壮大なドッキリ:これはなさそう。お金が掛かっているし、声を変えさせるなんて簡単にはできないだろうし、そもそも目的が分からない。一会社員にすぎない、二十代半ばの女(日本人)を引っ掛ける意味、ある?
2.意識を失っている間に、改造人間手術を施された。ばるべく現実的かつ平たく言えば、超大がかりな整形手術になるけど、可能性はやっぱり低そう。1と同じくお金が掛かっているし、悪の組織に狙われる覚えもない。
となると、あとは……いやいや、可能性の低さなら最後のが最もあり得ないんですけど!
3.異世界だか過去だか未来だか外国だか分からないけれども、転生した(させられた)? うーん、簡単に完全否定するのを、今置かれた我が身の異常さが拒むのよね。
とにかく何か手掛かりを得なくちゃ。
まずは顔を見たい。今の自分の顔を。
ドレスのあちこちをまさぐってみたけれども、持ち物は一切手応えなし。スマートフォンもコンパクトミラーもない。
衣服以外で身に付けているのはアクセサリーの類とハンカチ二枚ぐらいかしら。どれも高価そうに見えるけど、真贋も含めて私には値打ちを断定できない。婚約指輪の類はしていないようだ。薬指には痕すらない。代わりに、小指をリングが飾っている。何と両手ともだ。左手の小指には丸くて赤い小さめの石が着いたリング、右手小指には金色の光るシンプルな輪っかがそれぞれある。
と、ここに来て、不意に思い起こしたことがあった。
少し前に第三巻まで読み終えたあの小説で、両手の小指に指輪をはめる風習を描いていた。多分、作者の創作した風習――物語に出て来るある一族が広めたという習わし・しきたりだった。それぞれの小指に付けるリングの組み合わせにより、意中の相手へのサインとか、神様と将来の結婚相手を天秤に掛けているのだとか、色々設定されていたけれども、詳しくは覚えていない。
それに、そう、さっき視界に捉えた肖像画、見覚えがある気がしたのは、あの小説の挿絵にあった物と似ていたから?
確かタイトルは……ああ、だめ。気が急いているせいなのか、思い出せそうで思い出せない。記憶にもやが掛かっている。
まあいいわ。タイトルなんて後回しでかまわない。最優先は、顔の確認に尽きる。本当に転生してしまったのか。小説世界の登場人物に。主要キャラクターの顔なら一通り覚えている。あとは鏡が欲しい。だめ元で、右小指の金のリングに顔を映してみようと試みたが、さすがに細くて役に立たなかった。
鏡がこの世界で高価な代物かどうか分からないけれども、これだけ大きくて立派なお屋敷だし、どこかにあるだろう。万が一、見付からなければ、窓ガラスか水鏡に頼ることになる。
しかし、身体の自由がまだ利かない。依然として身体のあちらこちらから痛みを感じている。その上、左足首がじんじんして、見ると張れ始めている。いや~な痛さがじわりじわりと断続的に強まっていく。あーあ、恐らくポールの上で跳ねている最中か落下したときに挫いたんだろうなぁ。歩けるかな。後ろには階段、前方にはソファやテーブル、さらに壁際には所々、壺を載せた台やら西洋騎士が着そうな鎧一式が立っているから、それらを手掛かりに、移動できるかもしれない。鏡の在処がはっきりすればいいのだけれど。
それとも、いっそ思い切って、声を張り上げてみるのはどうかしら?
そしてまたもやびっくりする。声が、自分の声とは全然違う。私はハスキーボイスで、強く意識して話さない限り、きついかすれ声になってしまう。それが、たった今口から流れでたのは、柔らかくて色っぽさが滲んでいて、それでいてどこか冷たさも含んでいる――とにかく、私自身の声とは掛け離れている。
私の内に、嫌な予感が沸き起こった。
創作の中では頻繁に起きる、しかし現実にはあり得ないはずの事態が、この身に降り懸かった?
一応、考えられるのは、大きく分けて三つ。
1.壮大なドッキリ:これはなさそう。お金が掛かっているし、声を変えさせるなんて簡単にはできないだろうし、そもそも目的が分からない。一会社員にすぎない、二十代半ばの女(日本人)を引っ掛ける意味、ある?
2.意識を失っている間に、改造人間手術を施された。ばるべく現実的かつ平たく言えば、超大がかりな整形手術になるけど、可能性はやっぱり低そう。1と同じくお金が掛かっているし、悪の組織に狙われる覚えもない。
となると、あとは……いやいや、可能性の低さなら最後のが最もあり得ないんですけど!
3.異世界だか過去だか未来だか外国だか分からないけれども、転生した(させられた)? うーん、簡単に完全否定するのを、今置かれた我が身の異常さが拒むのよね。
とにかく何か手掛かりを得なくちゃ。
まずは顔を見たい。今の自分の顔を。
ドレスのあちこちをまさぐってみたけれども、持ち物は一切手応えなし。スマートフォンもコンパクトミラーもない。
衣服以外で身に付けているのはアクセサリーの類とハンカチ二枚ぐらいかしら。どれも高価そうに見えるけど、真贋も含めて私には値打ちを断定できない。婚約指輪の類はしていないようだ。薬指には痕すらない。代わりに、小指をリングが飾っている。何と両手ともだ。左手の小指には丸くて赤い小さめの石が着いたリング、右手小指には金色の光るシンプルな輪っかがそれぞれある。
と、ここに来て、不意に思い起こしたことがあった。
少し前に第三巻まで読み終えたあの小説で、両手の小指に指輪をはめる風習を描いていた。多分、作者の創作した風習――物語に出て来るある一族が広めたという習わし・しきたりだった。それぞれの小指に付けるリングの組み合わせにより、意中の相手へのサインとか、神様と将来の結婚相手を天秤に掛けているのだとか、色々設定されていたけれども、詳しくは覚えていない。
それに、そう、さっき視界に捉えた肖像画、見覚えがある気がしたのは、あの小説の挿絵にあった物と似ていたから?
確かタイトルは……ああ、だめ。気が急いているせいなのか、思い出せそうで思い出せない。記憶にもやが掛かっている。
まあいいわ。タイトルなんて後回しでかまわない。最優先は、顔の確認に尽きる。本当に転生してしまったのか。小説世界の登場人物に。主要キャラクターの顔なら一通り覚えている。あとは鏡が欲しい。だめ元で、右小指の金のリングに顔を映してみようと試みたが、さすがに細くて役に立たなかった。
鏡がこの世界で高価な代物かどうか分からないけれども、これだけ大きくて立派なお屋敷だし、どこかにあるだろう。万が一、見付からなければ、窓ガラスか水鏡に頼ることになる。
しかし、身体の自由がまだ利かない。依然として身体のあちらこちらから痛みを感じている。その上、左足首がじんじんして、見ると張れ始めている。いや~な痛さがじわりじわりと断続的に強まっていく。あーあ、恐らくポールの上で跳ねている最中か落下したときに挫いたんだろうなぁ。歩けるかな。後ろには階段、前方にはソファやテーブル、さらに壁際には所々、壺を載せた台やら西洋騎士が着そうな鎧一式が立っているから、それらを手掛かりに、移動できるかもしれない。鏡の在処がはっきりすればいいのだけれど。
それとも、いっそ思い切って、声を張り上げてみるのはどうかしら?
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