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6.悪役令嬢は耳ざとい
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『ふうん……色々と聞きたいことが増えました』
やっぱり。私のいた世界について、知りたくなるのが当然よね。どうやったらうまく伝わるだろうと算段を考える。あるいは聞かれても後回しにしてもらい、現在私、というかノアル・シェイクフリードが危機に陥っているんじゃないかって知らせるのを優先すべきかも。正直、悪役令嬢が死んでも傍から見てる分には、私には関係ない、所詮物語の中での出来事だし、なんならスッキリしたくらいだわ、で済ませられる。けれども一心同体になっているらしい今は、話が違ってくる。
死んだはずの彼女が生きているというのが解せないけれども、今後、同様の危険な目に遭わないとは限らない。というよりも、可能性は高いでしょ、普通に考えて。ここは協力して、生き延びるルートを選び取らなくては。
『まず気になったのは、足の怪我の原因ね』
彼女が口にした最初の疑問は、私の予想の外だった。
「えっと、何か問題が? 私、正直に伝えましたが」
『私の方にも左足を怪我した心当たりがあるの。どれくらい時間が経ったのか分からないけれども、夜、階段を歩いているときに突き飛ばされたのよ。転がり落ちて、意識を失ったのね』
言葉遣いや口調が少し変化したような。突き飛ばされたときのことを思い出して、むかむかしているのかも。
「誰にですか」
『分かっていたら、こんなところでぐずぐずしていません』
「あの、根本的なこと聞きます。ノアルさんは夜、こんなところで何をされていたんですか」
『――キース・ハムンゼンをご存知?』
「え、ええ」
肯定したものの、言っていいのかちょっと躊躇う。キース・ハムンゼンとはノアルがご執心だった男性の一人、ディア・ハムンゼンの兄で、ノアルの本性をいち早く見抜いていた人物だ。物語の中ではばちばちにやり合っていた。暗闘ってやつね。互いに体面があるため、表立って争うことはなかったから。
そしてノアル・シェイクフリードを死に至らしめたのが誰なのか、第三巻まででは明らかになっていないものの、いかにもキースの仕業らしく綴ってあった。ジャンルはミステリじゃないのだから、あそこから逆転劇とか意外な真相が用意されているとは思えない。だとしたら、今のノアルはキースに対し、何を思っているのかしら。
『キースが提案してきたの。大事な秘密を握っている、その証拠となる物を空き別荘のどこかに隠した。一日の猶予を与えるから、見つけ出せたら私の負けだ、とね』
「そんな展開があったなんて」
口が滑った。聞き逃しているか、スルーしてちょうだいと思ったけれども、さすが?悪役令嬢、耳ざとい。
『展開?』
「いえ、こちらのことです」
“私が小説で読んだ限りでは、あなたはキースのせいで死んだはずなんですけど、何故か生きていて、今また命を狙われているみたいです”なんて説明しても、通じるとは思えない。かといって、ごまかしが通用する相手でもなさそう。案の定、質問を重ねてきた。
『こちらのことといわれて納得すると思って? だいたい、今はあなたと私、二人で一人みたいなもの。“こちら”とは私のことでもあるんじゃなくて?』
「うう、でも正直に話しても信じてもらえるかどうか」
『多少のおかしなことには目を瞑るわ。いつまでもぐずぐずしていられない状況らしいのは、私にも分かる。キースの話に乗った結果、階段で突き落とされたのだから。それに、あなたが普通じゃないのも分かっているわ』
「え?」
『あなた、私が名乗らない内から、私のことを「ノアル」と呼んだわよ』
え、そうだった? 自覚がない。虚を突かれたため、すぐには返事できなかった。どうにか言葉を絞り出そうとがんばる。
「それは……ノアルさんが凄く有名だから」
『仮に私が世の中に広く知られていたとしても、あなたのような一介の外国人にまで知られているとは考えにくい。外国人よね、アンジョーさん?』
やっぱり。私のいた世界について、知りたくなるのが当然よね。どうやったらうまく伝わるだろうと算段を考える。あるいは聞かれても後回しにしてもらい、現在私、というかノアル・シェイクフリードが危機に陥っているんじゃないかって知らせるのを優先すべきかも。正直、悪役令嬢が死んでも傍から見てる分には、私には関係ない、所詮物語の中での出来事だし、なんならスッキリしたくらいだわ、で済ませられる。けれども一心同体になっているらしい今は、話が違ってくる。
死んだはずの彼女が生きているというのが解せないけれども、今後、同様の危険な目に遭わないとは限らない。というよりも、可能性は高いでしょ、普通に考えて。ここは協力して、生き延びるルートを選び取らなくては。
『まず気になったのは、足の怪我の原因ね』
彼女が口にした最初の疑問は、私の予想の外だった。
「えっと、何か問題が? 私、正直に伝えましたが」
『私の方にも左足を怪我した心当たりがあるの。どれくらい時間が経ったのか分からないけれども、夜、階段を歩いているときに突き飛ばされたのよ。転がり落ちて、意識を失ったのね』
言葉遣いや口調が少し変化したような。突き飛ばされたときのことを思い出して、むかむかしているのかも。
「誰にですか」
『分かっていたら、こんなところでぐずぐずしていません』
「あの、根本的なこと聞きます。ノアルさんは夜、こんなところで何をされていたんですか」
『――キース・ハムンゼンをご存知?』
「え、ええ」
肯定したものの、言っていいのかちょっと躊躇う。キース・ハムンゼンとはノアルがご執心だった男性の一人、ディア・ハムンゼンの兄で、ノアルの本性をいち早く見抜いていた人物だ。物語の中ではばちばちにやり合っていた。暗闘ってやつね。互いに体面があるため、表立って争うことはなかったから。
そしてノアル・シェイクフリードを死に至らしめたのが誰なのか、第三巻まででは明らかになっていないものの、いかにもキースの仕業らしく綴ってあった。ジャンルはミステリじゃないのだから、あそこから逆転劇とか意外な真相が用意されているとは思えない。だとしたら、今のノアルはキースに対し、何を思っているのかしら。
『キースが提案してきたの。大事な秘密を握っている、その証拠となる物を空き別荘のどこかに隠した。一日の猶予を与えるから、見つけ出せたら私の負けだ、とね』
「そんな展開があったなんて」
口が滑った。聞き逃しているか、スルーしてちょうだいと思ったけれども、さすが?悪役令嬢、耳ざとい。
『展開?』
「いえ、こちらのことです」
“私が小説で読んだ限りでは、あなたはキースのせいで死んだはずなんですけど、何故か生きていて、今また命を狙われているみたいです”なんて説明しても、通じるとは思えない。かといって、ごまかしが通用する相手でもなさそう。案の定、質問を重ねてきた。
『こちらのことといわれて納得すると思って? だいたい、今はあなたと私、二人で一人みたいなもの。“こちら”とは私のことでもあるんじゃなくて?』
「うう、でも正直に話しても信じてもらえるかどうか」
『多少のおかしなことには目を瞑るわ。いつまでもぐずぐずしていられない状況らしいのは、私にも分かる。キースの話に乗った結果、階段で突き落とされたのだから。それに、あなたが普通じゃないのも分かっているわ』
「え?」
『あなた、私が名乗らない内から、私のことを「ノアル」と呼んだわよ』
え、そうだった? 自覚がない。虚を突かれたため、すぐには返事できなかった。どうにか言葉を絞り出そうとがんばる。
「それは……ノアルさんが凄く有名だから」
『仮に私が世の中に広く知られていたとしても、あなたのような一介の外国人にまで知られているとは考えにくい。外国人よね、アンジョーさん?』
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