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第八章

二十一話 【段取り八分!】

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国境を超え森に入る。

半日も進むとワーテイズ側の国境があるそうで、国境と言っても防衛線の様な物らしい。

アロス側から行けば警戒されるので、まずはそこを通り抜ける事が目的となる。

深い森を進むと目の前に、鷲の頭部に熊の体、鉤爪の手足で木にしがみつく[オマルド]と呼ばれる魔獣が姿を現す。

ベンゾウがひょいっと荷車を飛び降りると、弁慶が「私がやろう!」と腰の鉄の塊を抜く。

木の上から小刻みに顔を動かすオマルドが、弁慶を捉えると近くの木を蹴り、凄いスピードで鉤爪で襲い掛かる。

弁慶は左腕で足の鉤爪を受けるとそのまま足を掴み、オマルドを地面に叩き付ける。

背中から叩きつけられたオマルドは、空気が漏れる様な「ケギャ!」っという声を上げ、弁慶の右手で振り下ろされた鉄の塊が、頭部に食い込む!

頭を潰されたオマルドはピクピクと足を動かし、そのまま動かなくなった。

パワー重視の戦い方だった。

ベンケイの左腕からは鉤爪が食込んだのだろう、赤い血が流れていた。

惣一郎は、返り血を浴びた弁慶にクリーンをかけ、傷薬を塗る。

プロテクターをしてても食込んだ爪は、オマルドの強さを物語っていた。

それを倒す弁慶も相当な手練れなのだろう。

「無茶するなよ」

惣一郎の言葉に弁慶は、顔を赤くしていた。



先にしばらく行くと森を抜け、丘の上に丸太が組まれた国境だろうワーテイズの防衛線が見えてきた。

向こうも計画が進んでいるのか、すでに避難して誰も居ない。

好都合とワーテイズ国に入った惣一郎は、国境から一番近い[ゴディップの町]を目指す。

ところが、国境を超えるとすぐ大きな急拵えの木造の建物があり、大きく円状に外壁をめぐらせ、中央には大きな岩の天辺が見えていた。

マルジさんの情報にあった封印の場所だろう。

大勢の騎士の姿も見えた。

すると馬に乗った騎士が数人、慌てた様子で近付いて来る。

「貴様! 何処から現れた!」

「ここら一帯は封鎖中だぞ!」

「え、それで国境に誰も居なかったのですか?」

臭い演技だ。

「ここに何用だ!」

「いえ、ギルドの依頼でゴディップに向かう途中ですが……」

惣一郎は依頼書を騎士に見せる。

遅れて上官らしき騎士が到着すると、依頼書を持つ騎士が説明する。

「ギルドに話は通してなかったのか!」

怒られる騎士が、何故かこちらを睨む。

「冒険者か?」

「はい、あのこれは?」

「しらんで良い!」

「仕方あるまい。ここで見た物は何も話すな! 良いな!」

上官は依頼書を投げ落とし、建物へ帰っていく。

「全くこんな時に……」

「ゴディップはこの先だ、言われた通り誰にも話すなよ! フン!」

不満気に騎士達も建物へ戻っていく。

「何とか無事通過出来そうだ、気が変わらない内に通り抜けよう」

惣一郎達は施設の様な建物を横目に、ゴディップを目指す。

丘を抜け林の中に入る惣一郎は、荷車を止め地図を確認する。

「この辺りがいいかな?」

大規模な魔獣狩りのお陰で、林の中も魔獣の気配はなかった。

ひとり確認を終えると、ゴディップへとまた進み始める。

林を抜け北へしばらく進むと、ようやく町が見えて来る。

冒険者カードと依頼書を見せ町の中に入ると、ここも情報通り何も知らされて無いのか見捨てられたのか、平穏な風景が広がっていた。

真っ直ぐギルドへ向かい、ギルマスに面会を求める。

部屋に通された惣一郎に、

「初めまして、ギルドマスターの[ボリン]と言います。お話はヌイバリ殿からのコールで聞いております」

「初めまして、ジビカガイライの惣一郎です。早速ですが、何人集まりましたか?」

「ええ、目立た無い様にとの事でしたので、11名しか確保出来ておりませんが、多少の荒事は冒険者なので、問題ないかと」

「十分です」

惣一郎は地図を広げて、ボリンと細かい段取りを話し合う……



「では明朝、南の林で落ち合いましょう!」

そう言うと惣一郎は、忙しなくまた林に戻る。

林に戻る頃には陽は落ち辺りは暗く、星の明かりが足元を照らしていた。

テントを出して、クロを労う。

「お疲れ様~ 走りっぱなしだったな!」

水を置き、食事の準備を始める。

作り置きの鳥の生姜焼きと唐揚げを並べて、ご飯で食べる。

食後、風呂を準備して弁慶に入り方を教える様にとベンゾウに頼む。

ベンゾウとベンケイ……

名前が似てて紛らわしいな!っと、今更気付く惣一郎だった。






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