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第十一章

四話 【怒り】

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馬車の中は無言だった。

足を広げ座る惣一郎が男を睨みながら、コールの魔法でヒロヨシーと話していた。

訳も分からず震え、小さく膝を抱える男。

『という事だ。相手が誰だろうと潰すぞ』

『王都のすぐ近くでそんな事が行われていただなんて…… わかりました全てお任せします。後始末は私がしますので…… 以上』

過去、中世ヨーロッパなどで行われていたとされる初夜権。

結婚する花嫁の処女を、花婿より先に権力者が奪うと言う物だった。

意味合いも諸説あるが、権力者の力を誇示する為や、宗教的な意味合い、貞操観念からの意味などどれも今では問題視され廃れた恥ずべき行為だ。

この世界でどんな意味合いがあるにしても、許せない惣一郎はヒロヨシーに確認はとっておく。

折角幸せそうな雰囲気だったのに、ぶち壊しやがって……

惣一郎の怒りは、迎えに来た男を震え上がらせていた。

しばらくすると、広い屋敷に着く。

馬車から男を下ろすと、ニコニコとやらしい笑みの小太りの男が現れる。

「おお、待っておったぞ、花嫁はどこじゃ!」

だが、馬車から降りて来たのは片腕のおっさん。

「なんじゃお前は?」

問答無用で鉄球が飛ぶ。

ゴフっと鈍い音を立てて玄関まで転げ戻る小太りの男。

「お前が領主か?」

「き、き、きさま! うぅぅ、だ、誰じゃ!」

鉄球がまた、男ごと玄関ドアを壊し、中まで押し戻す。

「お前が領主か?」

小さく疼くまる男を見て、警備の者が集まり出す。

惣一郎を取り囲む8人の騎士や使用人。

「や、やれ…… ぞ…… 賊だ…」

襲い掛かるも全て、鉄球が迎え撃つ。

浮いてる鉄球は16個。

取り囲んだ8人は全員、鉄球の餌食になり地面に転がる。

「お前が領主か?」

言葉を失う小太りの男。

その投げ出された左足に真上から鉄球が落ち、関節を無視して曲がる。

「お前が……「そ、そうだ! わ、わしが」」

鉄球がもう片方の足にも落ちる。

「ぎゃー!」

たまらず声を上げる領主。

集まり出すメイドや使用人が、遠巻きに見ていた。

「初夜権の意味は?」

「な…… なんなんじゃ…お前は……」

鉄球がまた曲がった左足に落ちる。

「ギャァアアアア!」

「初夜権の意味を教えてくれよ」

メイドや仕様人が荷物をまとめ、逃げ出し始める。

「く…… く……」

領主は言葉が話せない様だ。

倒れた8人の目の前に鉄球を地面に食い込ませ、

「誰でも良いから、答えろよ!」

「「「 …………… 」」」

返事はなかった。

容赦なく全員の足をへし折る。

8人の叫びが屋敷にこだまする。

「答えられない様な事をして来たのか? 人の幸せを力で奪い取って、その説明も出来ないのか?」

「と、特権じゃ! 領主と言う貴族の特権じゃ! わしの土地、わしの民じゃ! 選ばれた貴族の特権を…… キ、キサマ、ただで済むと思うなよ」

「お前、貴族なのに王都に居なかったよな?」

王が亡くなっても集まらない貴族。

大体察しはついていた。

「お前…… 何者なのじゃ……」

「賊なんだろ?」

鉄球が領主の頭に落ちる。

玄関でお漏らししてしゃがみ込む、迎えに来た男に惣一郎は、

「賊だって言ってるんだから、早く金目の物を出せよ」

っと冷たく言う。



馬車で待つ惣一郎の前に、金目の物が集められると、惣一郎は全て収納し、

「この家はこれで終わりだ」

っと、無数の鉄球が屋敷を破壊し始める。

土埃を上げ、あっという間に瓦礫の山に変えた惣一郎は男に「村まで」っと馬車に乗り込む。

屋敷を失った豪華な庭には、使用人やメイド達が、ただ立ち尽くしていた……





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