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第十七章

十話 【世界からの依頼】

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「惣一郎、彼がなぜ卵の事を?」

「ああ、複雑な事情がな」

不思議そうな顔で見合う、ギドとイグラシオ。

「それよりも、早くココを出なくては…… ギド、町の人を全員、瞬間移動出来るか?」

「全員をか! ふむ…… だが惣一郎の魔力が尽きるぞ」

頑張ります。






惣一郎の食事と、セシルの魔法で回復した生存者達に手を繋がせ、集中する惣一郎。

握る理喪棍の先を持つギドが、声を張り上げる。

「行くぞ!」

おっさんの張り上げた声に、ビクっと驚く生存者達の視界が変わる。

「「「「 なっ!!!! 」」」」

続け様に、パッパッっと連続で景色が変わる。

湿地帯を過ぎ、来た時通った広間の入り口が現れる。

放心状態の生存者達。

「しかしなんて便利な魔法なんだ、ホントに何者なんだ、お前さん?」

感心するガブガが、ギドに問い詰めるが、

「話は後だ、ボスが復活してるぞ!」

っと、話を遮る惣一郎。

ボスは、禍々しい斧を持ったゴブリンの王だった物……

視線を仲間へ注意に向けた間に、バラバラになり倒れていたゴブリンの王。

その向こうでは、小刀を鞘に仕舞う少女。

誰もが口を開けっぱなしに、理解が追いつかなかった。

「まっ、まぁ、兎に角、ココを出よう!」

地面に吸い込まれるボスは、宝箱を残し消えていく。

「また出たのか! ホントにどうなってるんだよ旦那!」

「後にしろ!」

奥の階段を降り、魔法陣に乗る。

一度に乗れるのは30人前後。

ミコ達、ショウニカガイライを最後に、惣一郎達が先に乗ると魔法陣が光り出す。






「またかよ……」

惣一郎達が出たのは、賑やかな町の中だった。

公園の様な広場。

一緒に魔法陣に乗った町の人達の姿はない。

いるのは、ジビカガイライの4人と1匹。

『惣一郎…… 惣一郎ヨ!』

誰?

『我ハ世界……』

横でお座りしているデカい犬。

ホラー映画で見る様な白目で、頭の中に話しかけて来る。

クロ…… じゃない?

賑やかな夕方の公園の中、セシルと弁慶は辺りを見渡しキョロキョロしている。

ベンゾウは屋台のいい匂いに、釘付けの様だ。

何処なんだここは?

『後ロヲ見ヨ……』

公園の真ん中には大きな岩で出来た獅子が、口を開け鎮座する。

ダンジョン?

『ソウ、ココハ[エキオ]ノ町』

だって、エキオは!

『聞クガヨイ惣一郎ヨ…… 運悪ク復活シテシマッタ[ミルドラ]ニ世界ハ終リヲ迎エル……』

はい? 

ミルドラって厄災の女王? 

まだ戦ってもいないぞ!

『ミルドラト戦ウカ…… アノ娘、勇者ナラ出来ルカモシレン…… ダガ、恐ロシイノハ[ミルドラ]ノチカラダ…… 奴ハ次元ヲ開ク。其方達ガ姿ヲ隠シタ後、奴ハ次元ヲ開キ、コノ世ニ厄災ト呼バレル蟲ヲ、解キ放ッタノダ……』

すまん理解が追いつかん!

『聞ケ惣一郎。三十七年前ニ[ミルドラ]ハ、世界ヲ超エ、コノ世ニ現レタ…… 我モ魔力溜マリカラ現レタ蟲ト思ッテイタガ…… 奴ハ他ノ魔物ヲ喰ライ…… チカラヲ増シ…… 世界ノ均衡ヲ崩ス者ニナッタ…… 我ハ[ギド]ト言ウ青年ヲ呼ビ寄セ…… 均衡ヲ守ル為、封印スル事ニ成功シタノダガ…… 惣一郎ヨ、其方ガ現ワレ全テガ狂イ始メタ……』

俺のせい……

『遠ク離レタ世界カラ来タ其方ハ、我ノ知ル常識デハ予測ガ付カナカッタ…… 迎エヲ呼ブモ帰エラズ其方ハ、ココニ残ッタ…… 世界ノ[ルール]ハ、均衡ヲ崩ス者ハ魔王トシテ排除スル…… ダガ、ソレモ叶ハナイ…… 勇者ガ其方ニ付イテイル限リ……』

なんか、すいません……

『ダガ、其方ヲ見テイルト、我モ…… コレモ良ク思エタ…… 何度カ助ケラレタ事モ、アリ……』

ええ、俺は決してこの世界を壊すとか、迷惑をかける事は!

『理解シテイル…… ダガ我ニ予測ガ付カナイ事モ事実…… 現ニ、[ミルドラ]ガ復活スルトハ思イモヨラナカッタ…… [ネウロ]トノ出会イガ、コノ結果ニ変化スルトハ…… ソレユエニ対策モ対応モ遅レ、奴ハ次元ヲ開イタ…… 先ノ未来ハ蟲ニヨル世ノ終ワリ…… 其方ラモ懸命ニ戦ッタガ数ニハ勝テナカッタ……』

マジっすか……って、じゃここは?

『我ノチカラヲ使イ、時ヲ巻キ戻シタノダ…… ダガ、我ノチカラデハ[ミルドラ]ガ町ヲ襲ウ前日マデガ限界デアッタ……』

時間を…… じゃ、町の人は全員、救われたのか!

『其方次第ダ…… 奴ガ次元ヲ開ク前ニ、倒セルカ?』

必ず!

『……良カロウ…… 我ハ、チカラヲ使イ過ギタ…… コレ以上、何モ出来ナイ…… 其方ニ託ス……』

それは、いいんですが……

こんな力をお持ちなら、なぜご自身で?

『我ガ直接手ヲ加エル事ハ無イ…… 世ガ終ワレバ、マタ作ルダケ……』

では何故、そんな力を使ってまで!

『楽シゲデナ… 礼ダ…… 見タイノダ、我ノ知ラナイ先ヲ……』

なんか、すいません俺のせいで……

『奴ハ王ヲ求メテイル…… チカラヲ付ケ王ヲ作リ、子ヲ作ル…… 生ル物トシテ普通ノ事ダ…… ソシテ世ニハスデニ、王ニ近イ者ガイル…… 気ヲ付ケヨ…… 奴ハ以前ノ[ミルドラ]デハナイ…… 大キナ魔力ヲ持ツ者ト融合シタ……』

でも、何故ダンジョンに卵が?

『[ネウロ]ノ強イ願イト、[ミルドラ]ノ復活ヲ願ウ思イガ、繋ナガッタノダ……』

予測出来ない事か……

『奴ハ学ンデイル…… 飢エヲ糧ニ召喚ヲ繰リ返シ、次元ヲ開ク…… ソレモ予測出来ナカッタ事…… ダガ、ソノ魔力ニモ限界ガアル…… ソレヲ可能ニシテルノガ最初ニ召喚シタ緑ノ蟲ダ……良イカ、現レタ[ミルドラ]ガ召喚シタ緑ノ蟲ヲ倒スノダ…… ソウスレバ次元ガ開ク程ノ魔力ハ生マレナイ…… ソコカラ先ハ我ニモ予測出来ナイ…… 任セルゾ…… 惣一郎ヨ……』

わかった、必ず救って見せる!

『手ニ入レタ宝ハ、我カラ其方ヘノ最後ノ贈リ物…… 我ハ眠ニツク…… モウ会ウ事ハ無イダロウ…… ダガ、見テイルゾ、犬神ノ目デ…… 託スゾ、コノ世ヲ……』

待ってくれ、もう少しミルドラの情報を!

………

あれ? もしも~し……

………

ま、やりますか!





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