底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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頑固

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私で無くても、彼には彼に相応しい人はいくらでもいる。
それに私は、彼に釣り合う物など何も持っていないもの。
彼の横に並ぶための身分も、財産も、容姿すら。

「エレオノーラ、あなたに説明していなかったけれど、あちらさんからは、うちの爵位を上げたいと打診があったの。それに伴う領地や、金銭も。でもうちはそんなもの必要が無いから断り続けているの。でもあなたがそれを必要とするなら受けてもいいのよ?」
「いいえ母様、それは父様に送られるものであり、私自身が受けるものでは無いでしょう?」

母様の気持ちはよく理解しています。
母様は大好きな父様と家庭を守りたくて、自分の力を封印したのでしょう?
そして例え貧しくとも、頑張って私達を守り、育ててくれていた。
私がようやく成人を迎え、その手を離れたから、母様はやっと本来の力を取り戻たのに。
やっと自由になれたのに。
それが私の為に、あんなに嫌っていた上流階級に戻す事なんて出来ないわ。

「私は今のままでも十分幸せなんです」
「でも、エレちゃん、アレクシス様ってあなた好みの容姿なのよ?」
「そうですねぇ」
「あなただけには、とても優しいのよ?」
「ええ、優しいんですよね」
「とても頭も良くて、強いのよ?」
「そうらしいですね」
「それにあなたの事を凄く大好きよ?」
「そうかもしれませんが、彼は国を、国民全部を愛さなければいけないのです。私だけ?それはなりません」
「それはそうかもしれないけれど、一人の人を愛せなくて、国民全部を愛せると思う?」
「隊長、それは屁理屈です(お前もな)とにかくアレクシス様には守らなければならない物がたくさん有るのです。私などに感けていてはいけません」

母様、隊長、何で頭を抱えているんですか?
頭痛ですか?
お薬作りましょうか?

「いいエレちゃん、あなたは神似者なのよ?この国、いえこの世界の誰もがあなたに逆らう事が出来ないのよ?」
「いやですね隊長、それは母様の事ですよ。だって誰も私に逆らえないって言われても、隊長も母様も私に命令できるじゃないですか」
「私はエレちゃんの姉だし、リン姉様だって母親だからいいの!」

やっぱり私って神似者じゃないと思う。

「それに私に取って、家族や陛下の言う事は絶対だし、兄様達には頭が上がらないし、シュカルフ様だって私の上司だし」
「ふーん、それじゃぁ陛下がアレクシス様と結婚しろと命令したなら、あなた彼と結婚する?」
「また逃げますね」
「「はぁ~~~」」
「だって、私以上にアレクシス様に相応しい人が絶対にいますよ」
「「いないわね」」

そんな、二人でシンクロしないで下さい。

「エレちゃん、あなたの理想の結婚相手ってお父様なのよね?」
「はい!」
「その結婚条件…、アレクシス様も持っているんじゃないの?」
「あっ………でも私が不釣り合いな事は確かですよ」

私だって、結婚に憧れは抱いていますよ。
だから適当な時期に、適当と思われる人と結婚するつもりではいますよ?



「アレクシス様もかなり拗らせてますけど、エレちゃんもかなりな物ですね」
「そうみたいね……」

誰が何を言おうが、なだめすかそうが、あの様子では自分の考えを変える気は無いだろう。
何かいい策は無いものか。

「まあ今回の収穫は、エレちゃんはアレクシス様を嫌っていなかったことですね………。ところでリン姉様は、いざとなれば簡単にこの縁談を無効に出来たのに、どうしてそうなさらなかったのですか?」
「ん~、アレクシス様をこの上ない優良物件だと思ったのよ、親としたら、やっぱり娘には幸せな結婚をしてもらいたいじゃない?彼だったらいいと思ったの。だって王子様なのよ。それも二番目、後を継ぐ必要も無いからその分負担は少なくなるし、お金も有るし、贅沢も出来るし、皇太子の妻となれば嫌がらせはそう無いだろうし、風当たりだって少ないでしょう?何よりエレオノーラにベタ惚れっぽかったし」
「この上ない好物件ですよね…」
「まさかここまで、この子が自分を卑下し、凝り固まっているなんて思わなかったのよ」
「これを溶かす方法って有るんでしょうか?」
「有るのかしら?」

困った物です。
いっそ洗脳でもしますか?

「それは無理でしょう……?」
「そうですよね、でも色々考えれば、今の時点ではやはりアレクシス様が適任かと。しかしこの先、もしかしたらエレオノーラ様自身が結婚を望む人が出来るかもしれませんしね。こればかりは分かりませんよ」
「そうなのよね…こればかりは本当にエレオノーラの気持ち次第なのよね。まあ出来れば、この子がおばあちゃんになる前に、そんな人が現れてほしいものだわ」

と言う訳で、私達はこの問題をしばらく放置する事にしました。
もちろん時々は、彼女の気持ちの変化を探り、助けを必要だと思った時は動くつもりです。
何たって彼女は私のディア・アレルヤ様なんですから。
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