上 下
14 / 67
第一章 ジュリエッタ婚約破棄編

幻聴と現実

しおりを挟む
「スティール様、今、只ならぬ幻聴が聞こえた気がしたんですが。」

ト・二・カ・ク・離れて下さいませ。

「やだなぁ、只ならぬ幻聴なんて、そんな物騒な事全然聞こえなかったよ。

「そうですか?私には、婚約者云々と聞こえたんですが。」

「あ、それは聞こえたんだね。
それは幻聴じゃないよ。現実。」

「…………現実?」

「うん、ついでを言えば、決定事項。」



「ソレハオメデトウゴザイマシタ。ツツシンデオイワイモウシアゲマス。
コレデ、ワガクニモアンタイトイウモノ、ワタクシモココロカラオヨロコビモウシアゲマス。」

「過分なる祝いの言葉をありがとう。
で、相手は誰か確かめてくれないの?」

聞くもんですか!
絶対に聞かない。

「申し訳ありません、私何やら頭痛がひどくなったようで、
耳鳴りもして参りました。
もう少し休みたいのですが、
王太子殿下、退室願いますでしょうか。」

「そんな事出来ないよ、具合の悪いジュリエッタを一人残していける訳がない。」

くっそー、出てけよ。
スティール様がいたら、気がそれて頭が働かないの!
私は状況をまとめて、この先の事を考えなきゃならないんだから。

「ジュリエッタ!気が付いたのですね!」

突然ドアが開き、お母様が飛び込んできた。
その後からお父様も。

「あぁ、ジュリエッタ。良かったわ。
一時はどうなるかと…。
大丈夫?まあ可哀そうにコブがこんなに大きくなってしまって。」

そんなに大きなコブなの?
まさか禿げないわよね?

「お義父上、お義母上。
私の為に、ジュリエッタ嬢を大変な目に遭わせてしまいました。
再度お詫び申し上げます。」

「スティール王太子殿下、そんな他人行儀な呼び方をなさって。
あなたはすでにジュリエッタの婚約者。
嬢など付けたら、反って角が立ちますわ。
それに私たちは、あなたからの謝罪は何度も受けました。
そんなに気にしないで下さい。」

「それでしたら、どうぞ私の事もスティールとお呼びください。」

「まあ、無理だという事はお分かりのはず。
仕方のない方ですわね。」

お、おお、お母様。
今何と仰いました!?
只ならぬ電撃発言が、また聞こえた気がしたんですが~。
いや、幻聴だわ。
絶対そうよ。
そうじゃなきゃいけないのよ。

「あっ、そうそう、
ジュリエッタ、婚約おめでと~。」

    えっと……

「あ……、私何やらひどい耳鳴りが……。
申し訳ございません、今しばらく臥せっていたいのですが、
皆様退室していただけませんか……。」

「何言っているのジュリエッタ。
耳鳴りどころじゃ無いでしょう?
さあさあ、いつまでもそんな格好してないで、
さっさと身支度をなさい。」

身支度?
ふと見下ろすと、
いつも着ている猫さん柄を織り込んだ、
ピンクのフリフリ、の夜着が目に入った。

ぎ、ぎゃあぁ………!

「出てって!さっさと出て行って!
出っててよ―――!」

「まあまあ、そんなに照れて。」

「ジュリエッタ。私たちは婚約者同士なんだから、大丈夫だよ。」

一体何言ってるんですか!大丈夫って何がですか!
お父様、そんな憐れむような目で見ていないで、この二人を何とかして下さいませ!

「奥様、たとえ婚約者同士でも、未婚の女性の部屋に、若い男性が入るなどとは…。
しかもお嬢様は夜着のまま。
此処はいったん皆様お部屋を出ていただけますか?
お嬢様は私がしっかり見張っておりますから。」

オ~ロラ~。私の見方はあなただけなのね。
オーロラはキビキビと皆をドアの外に押し出し、
私の着替えを手に戻って来てくれた。

「さあさ、お嬢様、お着換えしましょうね。
頭のコブには触れないように、このオーロラが手伝って差し上げますから。」

あぁ、今日のオーロラが優しい……。

私はオーロラの手を借り、何とか身なりを整えた。

「ねえ、オーロラ。私が倒れた後の話、何か聞いてる?」

「はぁ、ざっとでは有りますが。」

「私とスティール様が婚約したってホント?」

「はい。そのようにお聞きしております。」

GODDAMN!

「そんな馬鹿な話無いわ!
私、了承なんてしてないもの!
せっかくアンドレア様から逃げ出したっていうのに、
何で自由を満喫できないまま、また捕まっているのよ~!」

「まあまあ、お嬢様。
物は考えようです。
お嬢様はスティール王太子殿下がお嫌いですか?
アンドレア様と比べてどう思われますか?」

「えー、スティール様はアンドレア様となんて比べようがないくらい出来はいいし、
頭もいいし、回転は速いし、おまけに顔もいい。
性格もいいし(?)紳士だし、ん~しいて文句を付けるとしたら………無いな。」

何だこれ……こんな人間いたんだ。

「あ、でも私よりも3歳も年下よ。
年上と婚約なんて体裁が悪いでしょう。」

「まあ、お嬢様が体裁を気になさいますの?
大体にしてこんな話、今まで幾らでも有りましたし、平均寿命は女性の方が上。
年を食ってからの事を考えれば、3歳の差などまだまだですわ。
大体にして、スティール王太子殿下は年下だからと言って、頼り無いですか?」

「そんな事無いわ。年下とは言え、とても頼りになる弟よ。」

「お嬢様、スティール王太子殿下はじきに16歳。
いつまでも弟扱いなさってはご無礼です。」

そっか、王室の16歳と言えばもう立派な大人。
不敬よね。

「それに、お嬢様は、スティール王太子殿下の事をお嫌いですか?」

えっ?




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

旦那様にはもう愛想が尽きました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:432

初夜に妻以外の女性の名前を呼んで離縁されました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:366

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:411pt お気に入り:4,463

【完結】私がいなくなれば、あなたにも わかるでしょう

nao
恋愛 / 完結 24h.ポイント:10,628pt お気に入り:930

処理中です...