あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を

羽兎里

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お小言 ジークside

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まったく、あれほど念を押したのに、それなのに言いつけを守れなかったのか、この阿呆エロ狼は!

「マシュー君、大丈夫ですか?辛いところはない?」

私はようやく目を覚ましたマシュー君に声をかけた。

「ジ…クフリードさん…、あれ?ど…して…。」

「ジーク兄様ですよ。あぁ、酷い声だ、今良いものをあげましょうね。」

私はスプーンで蜂蜜を掬い、マシュー君の口元に差し出す。

「やめろ、俺がする。」

後ろで待てのできない狼が吼える。

「言ったでしょ、罰です。あなたは、私が“すぐ飲ませてあげて下さい”と言って渡した抑制剤を、すぐ飲ませました?
あれは早ければ早いほど効き目が違って来るんですよ。
ちゃんとお伝えしましたよね。
それを、薬をマシュー君に飲ませず、自分の欲求ばかり先にして盛って。」

「だが、あの時は…。」

「言い訳は聞きません。マシュー君の体の事を考えれば、最優先されるべきものは何かわかるでしょう!
さ、マシュー君、喉が楽になりますよ口を開けて。」

マシュー君は素直に口を開け、スプーンを咥える。
最初に見た時は、かわいい子だと思いはしたが、
運命の番を得、受け入れたこの子は、まるで大輪の花がほころび、咲き誇るように輝いている。
今は憔悴しているはずだが、それでもこれ程までに艶やかに美しい。
そんな彼を見ていると、少将殿が妬ましいほどに羨ましくなってきた。
マシュー君に執着を持ったと言う訳ではない。
私にも私の番が、出来れば運命の番が欲しいと初めて思った。

そんな事を思いつつ、マシュー君のお世話をしていると、後ろから唸り声が聞こえる。

「五月蠅いですねぇ。罰だと言ったはずです。
マシュー君は本調子ではないと、無理をさせるなとも言いましたよね。
それを大急ぎで医師から取り寄せた抑制剤を飲ませもせず、思いっきり盛った結果ごらんなさい。」

かわいそうに、マシュー君は発熱し、臥せってしまう事になった。

「悪かった。」

「謝るのは私ではなくマシュー君にでしょ?
大体これだってマシな方なんですからね。
まったく、何で私が盛っている最中の隙をついて、濡れ場に忍び込み、薬を飲ませなければならないのですか。
マシュー君に薬を飲ませる役はあなただったはずですよ!
これは貸しですからね、大きな。」

「……お前、良く俺がマシューに薬飲ませてないって分かったな。」

「薬瓶に細工がしてあるのですよ。遠隔で開封したかどうか分かるように。」

「薬を飲ませるのは、早い方がいいと言っていた奴が、そんな事に時間をかけたのか。」

「あなたがそれを言いますか。
そういう瓶が有るんです。
それに薬を入れ替えただけです。
見なさい、ヒートが始まった直後に飲めば1日程度で終わるものを。
せめてあの時、あなたが飲ませさえしていれば、2日程で終わっていたと思われるものを、
3日ですよ、体力のないマシュー君が3日も体力バカの阿呆なエロ狼に付き合わされて。
……可哀そうに。」

付き合ったのは俺の方だとか何とか聞こえましたが、言い訳は聞きません。
たしかにΩはヒートの最中、αを求め、フェロモンを出しますが、
それに誘発され、襲うのはαです。
今回は悪いのは全てあなたです。
この駄目狼は、今は罰として、拘束して、正座させています。
そして今日1日、マシュー君に触れる事を禁止しました。
とにかく罰です。気が狂おうが何だろうが、罰です。
その間のお世話は私、ジーク兄様がします。
そこでキャンキャン吠えていなさい!

「えっ、3日…?そんなに…僕……。」

マシュー君が熱で赤くなった顔を、さらに赤くし呟いている。
純真な彼に、こんな恥ずかしい思いをさせているのも、
すべてあなたの責任ですからね。

「そんな事、気にしなくてもいいんですよ。
ヒートというのはそういう物なんですから。
それが無ければ、子どもも授かりませんし。」

「子供…?結婚、ヒート…。
…‥子供、赤ちゃん!ど、どうしよう。」

「マシュー君?もしかして、あなた子どもは……。」

「マシュー、嫌なのか?
俺との子供は欲しくないのか?
いや、お前が欲しくないならそれでもかまわない。
俺はお前さえいればそれだけでいいのだから。」

「五月蠅いです。少し黙っていて下さい。マシュー君?」

「ち、違うんです。
自分が赤ちゃんを産める事をすっかり忘れていたので、
ちょっとびっくりしただけです。
そうか…。そうですね、赤ちゃん。アダム様の赤ちゃん…。」

そう言うと嬉しそうに自分のお腹を撫でている。

「マシュー君、残念ですが、抑制剤を飲むと言う事は、その行為を抑える事、通じては、妊娠をも抑制する事なんです。
もし本当にこのエロ狼との子供が欲しいのであれば、もっと体力をつけなければ…。
そうですね、1週間は、この体力バカに付き合う覚悟をして、
抑制剤を飲まずにヒートを迎えなければなりません。」

「そうなんですか……。」

あぁ、その残念そうな顔も、なんて可愛らしい。
そんな恨めしそうな顔をしてもダメですからね。
罰です、このエロ狼。

「マシュー君、こんなに汗をかいて、下着も湿って気持ち悪いでしょう。
すぐに温かい湯を用意し体を拭いてあげましょうね。
下着や夜着も全部着替えさせてあげますから。」

「やめろ!そんな事をしたらお前を殺す!この縄を今すぐ解け!」

「聞こえません。
言っているでしょう?マシュー君をこんなにしたのはあなたなんですよ。
見なさい。」

ベッドに横たわるマシュー君は、
熱で体が火照り、目が潤んでいて、軽く息が上がっている。
実に色っぽい。
私はクローゼットから着替えを取り出してソファの上に置き、湯を用意しに行こうとした。
だがふと足を止め、マシュー君の方を振り返り、念を押すように言う。

「マシュー君、ベッドから出てはいけませんよ。
少将殿、あなたはそこで指をくわえて、ゆっくりマシュー君を眺めて生殺しになっていなさい。」

そう言ってから部屋を出た。


用意を整え、部屋に戻った私が目にしたのは、
予想に違わず、エロ狼が拘束されたままマシュー君のベッドの傍に跪き、キスし合っている姿だった。

「ハァ―ッ。まぁ、こうなっているとは思っていましたがね。」

私は、拘束されたままの少将殿を引きずり、2人を引き離した。

「さー、マシュー君ジーク兄様がきれいにしてあげますからね。」

「やめろと言っているだろう!お前!本当に殺されたいか!」

私は振り返りニヤッと笑ってやった。

「嘘ですよ。私は番の前でそんな事をするほどの、愚か者では有りませんよ。」

そう言うと、少将殿の所に行き、拘束している縄を解く。
これ以上すると、本当に命が危なくなるだろう。
揶揄うのはこれまでにしましょう。

「さて、此処からはあなたがしてあげて下さい。
でも分かってますね。無茶をして、後悔するのはあなたなんですからね。」

しかし、私の話など全然耳に入っていないエロ狼は、
一直線にマシュー君の下に駆けていく。
はいはい、私は退散します。
これでマシュー君が回復するまでは、また私の仕事が増えるわけですね。
いや、後に回せるものは、すべてエロ狼に取って置いてあげましょう。
あまり甘やかすのも、良くありませんから。
マシュー君が良くなったら、少将殿には馬車馬のように働いていただきましょうか。



「それにしても、なぜヒートの最中マシュー君の項を噛まなかったんですか?」

「マシューが気を失ってしまったから……。」

「え…?」

「だから、つい夢中になってその事を忘れていて……、
だが、本能なんだろうな。
突然マシューの項をかみたくなって、歯を剥いた矢先、マシューが気を失ってしまったんだ。
俺は噛む時は、二人の意識がしっかりしている時に、互いがちゃんと番だと自覚している時に噛みたいんだ。」

「貴方からそんなロマンチックなセリフを聞くとは思いませんでしたよ。
まあ一応は納得しました。」

項を噛むという行為は、番の一種の契約のようなものだ。
結婚は書類上で証認されるが、Ωがされるその行為は、肉体上の契約のような物。
ヒートの時に行われる、一種の消えないマーキングみたいなものだ。
もしまかり間違って、突然のヒート時に番以外のΩに噛まれでもしたら、体は噛んだαのものになってしまう。
それを防ぐために、必要が有れば番持ちのαは、自分の妻にチョーカーを装着させる。

「それなら、次のヒートが来るまでは、マシュー君の首にチョーカーを付けることを、忘れないで下さいね。」

「あぁ、分かっている。」

そう言う少将殿は、いつもより上の空の様だ。
大方、マシュー君に似合うチョーカーのデザインでも考えているのでしょう。
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