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ジークフリード偏
ジークの運命 1
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「ねえジークフリード、マシュー君は今度はいつ遊びに来てくれるのかしら。」
久々に母親から電話が有ったと思ったら、マシュー君の事ですか。
「母上、分かっていると思いますが、マシュー君は少将殿の奥方なんです。
いくらイスパルダから近いからとは言え、早々そちらに行く訳が無いでしょう。」
「えー、でも私は、マシュー君の叔母よ。時々ここに遊びに来てもおかしくは無いわ。」
「そう言う問題ではないでしょう。」
ただでさえ忙しい少将殿が、溺愛して暇さえあれば可愛がりたいマシュー君を、
そう何回も我が家に寄こす訳が無いという事です。
二人のハネムーンの途中で立ち寄った我が家でも、マシュー君は我が家族に、いたく気に入られてしまったようだ。
「ねえ、ジークフリードからもマシュー君に、また我が家に遊びに来るよう言ってちょうだい。」
「そんな事出来る訳無いでしょう。」
マシュー君が強請れば、きっと少将殿は動くだろうが、
その尻拭いは絶対に私に来る。
「えー、つまらないわ。
………ねえジークフリード。」
「何ですか。」
「あなた結婚なさいな。」
「はぁ?」
「だって、アダム様だって、結婚なさったのよ。
あなただって結婚してもいいじゃない。」
何なんですかその理論は。
「いいですか?少将殿は運命の番であるマシュー君と出会われたから、結婚されたのですよ。
もし、彼と会っていなかったら、未だに結婚されていないでしょうね。」
「でも、結婚されたわ。
あぁ、羨ましい。
あんなにかわいい子に、お母様って慕われたい。
あなたがいない時には、私が面倒を見てあげるから大丈夫よ。
一緒にお買い物に行ったり、ランチに行くもいいわね。」
「嫁は玩具ではないのですよ。
少将殿にしても、もし実家でマシュー君がそんな扱いをされたら、きっと腹を立てるでしょうね。」
「あら、嫁を可愛がって、どうして怒られるのよ。」
「とにかく、少将殿が結婚したから私もするなど、そんな、ついで仕事のような真似は致しません。
良く覚えておいてくださいね。」
そう言うと、母の次の言葉も聞かず、受話器を置いた。
私の中では、その話はそれで決着がついたつもりだった。が、
それが甘かったと知ったのは、それから1週間ほど経った金曜日の夜だった。
「今度は一体何ですか。嫁の話でしたらすでに私の考えは伝えたはずですが。」
「い、いやぁねぇ。違うわよ。
実はね、明日の土曜日の夜、ジョナサン(ジークの父)がカンタール家のパーティーでオズワルド様にお会いする約束をしていたのよ。
でもね、腰を痛めてしまって行けなくなってしまったの。」
「切ります。」
「待ちなさい!いきなり何なの。」
「いえ、悪い予感しかしませんので。」
「何、馬鹿な事を言っているのよ。
いい、よく聞きなさい。
あなたに、明日のパーティーに、お父様の代わりに行ってほしいの。」
行ってほしいのではなく、行きなさいの間違いでしょう?
「大体にして、父上の代わりって、私に何をしろと言うのです。」
「あら、パーティーに出てオズワルド様に会ってくれるだけでいいのよ。」
「本当にそれだけとは思えませんね。」
「やだわー、何を勘ぐっているの。大人には付き合いと言うものが有るのよ。
約束していたのに、急にオズワルド様をパーティーで一人にさせるわけにはいかないでしょう。」
「あの叔父上に限って、一人でパーティーに出るとは考えられませんがね。」
何せ、50歳を回っても未だに独身貴族を満喫している叔父だ。
そんな叔父上が、急に予定が変わったとしても、一緒に行くパートナーに事欠くとは思えない。
「それに明日は仕事ですし。」
「そう、昼間はね。でも夜は開いているでしょう?ちゃんと確かめさせていただいたわ。」
「いったい何をなさってるんですか。」
「とにかく、明日、6時、カンタール家ですよ。オズワルド様に恥をかかせないでね。お父様の為にもちゃんと行くんですよ。」
今回は私の方が一方的に電話を切られてしまった。
まったくもって悪い予感しかしない。
気が重い。
明日となれば、何かしらの理由を付けて逃げようにも、時間的に余裕がない。
すっぽかせば、後で何を言われるか分かったものではないだろう。
あぁ、気が重い。
翌日、案の定仕事がズレ込み、1時間ほどカンタール家のパーティーには遅れてしまった。
叔父上には一応連絡を取っておいたので大丈夫だろう。
「君も大変だね。まあ、私もいろいろ気に掛けておいたから、気楽に来るといいよ。」
それは、元々私が行くことを想定していた口ぶりですね。
何が目的か、大体想像は付きますが。
会場に足を踏み入れると、何故か自分の気が騒ぐ。
周りの雰囲気もいつものパーティーと、どうも違う。
とにかく気が急く。
一刻も早く叔父上を探して、何が有ったか問い質すしてみなければ。
ぐるりと見渡すと、叔父上はすぐに見つかった。
いつものように、数人の女性に囲まれている。
今日はいつもより、若い娘が多いようだ。
「叔父上。」
「ああ、来たね。待っていたよ。早速だけど…。」
「それより、何か有ったのですか?」
「相変わらず鋭いね、君は。
まあ、ちょっとした事件…が有ってね。事件と言っても君達が出張る類のものではないよ。
君は知らないだろうが、ロシニョールと言う小さな会社の社長が、どうやら愛人が出来たらしくてね。
さっき婚約者であった少年に婚約破棄を言い渡したんだ。」
「婚約破棄…ですか?」
たかがそれ位の出来事で、私の気持ちがこれほど乱れるのはおかしい。
久々に母親から電話が有ったと思ったら、マシュー君の事ですか。
「母上、分かっていると思いますが、マシュー君は少将殿の奥方なんです。
いくらイスパルダから近いからとは言え、早々そちらに行く訳が無いでしょう。」
「えー、でも私は、マシュー君の叔母よ。時々ここに遊びに来てもおかしくは無いわ。」
「そう言う問題ではないでしょう。」
ただでさえ忙しい少将殿が、溺愛して暇さえあれば可愛がりたいマシュー君を、
そう何回も我が家に寄こす訳が無いという事です。
二人のハネムーンの途中で立ち寄った我が家でも、マシュー君は我が家族に、いたく気に入られてしまったようだ。
「ねえ、ジークフリードからもマシュー君に、また我が家に遊びに来るよう言ってちょうだい。」
「そんな事出来る訳無いでしょう。」
マシュー君が強請れば、きっと少将殿は動くだろうが、
その尻拭いは絶対に私に来る。
「えー、つまらないわ。
………ねえジークフリード。」
「何ですか。」
「あなた結婚なさいな。」
「はぁ?」
「だって、アダム様だって、結婚なさったのよ。
あなただって結婚してもいいじゃない。」
何なんですかその理論は。
「いいですか?少将殿は運命の番であるマシュー君と出会われたから、結婚されたのですよ。
もし、彼と会っていなかったら、未だに結婚されていないでしょうね。」
「でも、結婚されたわ。
あぁ、羨ましい。
あんなにかわいい子に、お母様って慕われたい。
あなたがいない時には、私が面倒を見てあげるから大丈夫よ。
一緒にお買い物に行ったり、ランチに行くもいいわね。」
「嫁は玩具ではないのですよ。
少将殿にしても、もし実家でマシュー君がそんな扱いをされたら、きっと腹を立てるでしょうね。」
「あら、嫁を可愛がって、どうして怒られるのよ。」
「とにかく、少将殿が結婚したから私もするなど、そんな、ついで仕事のような真似は致しません。
良く覚えておいてくださいね。」
そう言うと、母の次の言葉も聞かず、受話器を置いた。
私の中では、その話はそれで決着がついたつもりだった。が、
それが甘かったと知ったのは、それから1週間ほど経った金曜日の夜だった。
「今度は一体何ですか。嫁の話でしたらすでに私の考えは伝えたはずですが。」
「い、いやぁねぇ。違うわよ。
実はね、明日の土曜日の夜、ジョナサン(ジークの父)がカンタール家のパーティーでオズワルド様にお会いする約束をしていたのよ。
でもね、腰を痛めてしまって行けなくなってしまったの。」
「切ります。」
「待ちなさい!いきなり何なの。」
「いえ、悪い予感しかしませんので。」
「何、馬鹿な事を言っているのよ。
いい、よく聞きなさい。
あなたに、明日のパーティーに、お父様の代わりに行ってほしいの。」
行ってほしいのではなく、行きなさいの間違いでしょう?
「大体にして、父上の代わりって、私に何をしろと言うのです。」
「あら、パーティーに出てオズワルド様に会ってくれるだけでいいのよ。」
「本当にそれだけとは思えませんね。」
「やだわー、何を勘ぐっているの。大人には付き合いと言うものが有るのよ。
約束していたのに、急にオズワルド様をパーティーで一人にさせるわけにはいかないでしょう。」
「あの叔父上に限って、一人でパーティーに出るとは考えられませんがね。」
何せ、50歳を回っても未だに独身貴族を満喫している叔父だ。
そんな叔父上が、急に予定が変わったとしても、一緒に行くパートナーに事欠くとは思えない。
「それに明日は仕事ですし。」
「そう、昼間はね。でも夜は開いているでしょう?ちゃんと確かめさせていただいたわ。」
「いったい何をなさってるんですか。」
「とにかく、明日、6時、カンタール家ですよ。オズワルド様に恥をかかせないでね。お父様の為にもちゃんと行くんですよ。」
今回は私の方が一方的に電話を切られてしまった。
まったくもって悪い予感しかしない。
気が重い。
明日となれば、何かしらの理由を付けて逃げようにも、時間的に余裕がない。
すっぽかせば、後で何を言われるか分かったものではないだろう。
あぁ、気が重い。
翌日、案の定仕事がズレ込み、1時間ほどカンタール家のパーティーには遅れてしまった。
叔父上には一応連絡を取っておいたので大丈夫だろう。
「君も大変だね。まあ、私もいろいろ気に掛けておいたから、気楽に来るといいよ。」
それは、元々私が行くことを想定していた口ぶりですね。
何が目的か、大体想像は付きますが。
会場に足を踏み入れると、何故か自分の気が騒ぐ。
周りの雰囲気もいつものパーティーと、どうも違う。
とにかく気が急く。
一刻も早く叔父上を探して、何が有ったか問い質すしてみなければ。
ぐるりと見渡すと、叔父上はすぐに見つかった。
いつものように、数人の女性に囲まれている。
今日はいつもより、若い娘が多いようだ。
「叔父上。」
「ああ、来たね。待っていたよ。早速だけど…。」
「それより、何か有ったのですか?」
「相変わらず鋭いね、君は。
まあ、ちょっとした事件…が有ってね。事件と言っても君達が出張る類のものではないよ。
君は知らないだろうが、ロシニョールと言う小さな会社の社長が、どうやら愛人が出来たらしくてね。
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「婚約破棄…ですか?」
たかがそれ位の出来事で、私の気持ちがこれほど乱れるのはおかしい。
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