俺の人生、元いじめられっ娘によって破壊される

なめ沢蟹

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人生を破壊する存在との出会い

8話 リゾートホテルの裏の池

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 お昼を食べた。
 しばらく経った
 当然眠くない。
「グガー」 
「・・・・・・」 
「・・・・・・」
 腹ごしらえが済んだ明子さんは盛大にイビキをかいて寝始めた。
 令菜はまた座椅子に座ってスマホをいじり始めた。
 暇だ。
「令菜。俺ちょっと出かけてくる。観光してくる」
「・・・・・・うん」
「一緒に行く?」
「ごめん。いいや」
「あ、ああ」
 振られた。
 でもこういう時一応誘っておくべきかと思った。
 それに・・・・・・まだ親密じゃない令菜とこの辺を回るのは疲れそうだ。
 明子さんとなら楽しそうだが。
「あれ?」
 自分の思考に自分で驚いた。
 確かに明子さんは美人なほうだが・・・・・・。
 同じ高校生で可愛い令菜と中良くなれたほうが楽しいに決まってる。
 しかしガッつかないほうがいいか。
 たった10日前後、何も進展しない可能性のほうが高い。
 ハンガーにかけてた上書きを着た。
 そのまま玄関に行き、外に出る。

†††††
 
 結局最初に来たこのリゾート地の見取図の看板のところに来ていた。
 しばらくぼっーと眺めていた。
 風は冷たいが、着込んでいるし日差しもあるので寒くはない。
 この駐車場、けっこう車が並んでる。
 家族連れの子供のはしゃぐ声がやたら大きく聞こえる。
「お土産屋は最終日でいいか。金稼ぎにきたのにぜいたくはできないし」
 また独り言をブツブツつぶやいていた。
 しばらくすると。
 なんだか不思議な匂いがしてきた。
 嫌な匂いではないが、なんだか牛乳と香水を混ぜたみたいな・・・・・・。
「コンニチワ」
「あ、こんにちは」
 外国人だった。
 いつの間にか二人組が後ろに立っていた。
 見取図は見終わったので、一歩下がる。
 結局何をするか決めあぐねてる。
「・・・・・・」 
 チラリと二人を横目で一瞬確認した。
 金髪でウソみたいに顔が小さい女の人。
 背が高くてゴツい短髪の男性。
 どちらも目が大きくて青く、鼻はスッキリして高い。
 なんだか冷たい感じがした。
 白人って人たちだ。
 日焼けしてるのだろうか? 肌の色は令菜のほうがずっと白い。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 何か口論してる。
 英語ではない。
 何語だかもわからない。
 なぜか二人組は、このスキーリゾート地において釣り竿を持ってうろうろしてる。
 よし、離れよう。
 とりあえず移動しようと思ったら・・・・・・。
「スミマセン」
 声をかけられた。
「コレ、聴イテクダサイ」
「ん?」
 何か電子手帳のようなものを差し出された。
「ワタシ タチ 釣リ ガ シタイ デス」
「・・・・・・翻訳機?」
「ドコカ シリマセンカ?」 
「・・・・・・」
 知るわけない。
 俺も今日ここに来たばかりなのに。

†††††

 二人組はペルラとフェルモンドと名乗ってきた。
 なんとなく直感でわかる。 
 この人たちは一緒に遊ぶと楽しい人たちだ。
「これ押すのかな?」
 反対側に向けられた翻訳機に自分の伝えたいことを打った。
 わからないと。
「・・・・・・」
 翻訳機が向こうの言葉で伝えたようだ。
 すると、今度はこんな機械音声が返ってきた。
「池デ 釣ル事二 シマシタ。シカシ ココデハ コイ ノ エサ 買エマセン」
「恋? いや、魚のほうか」
「代用品 知リマセンカ?」
 そういうことか。
 知ってる限りの知識を話す。 
 たしかご飯とかサツマイモを練ったやつにすりゴマ加えれば釣れるはずだ。
 けっこう時間がかかったが、何とか翻訳機に入力してみた。
「オー」
「・・・・・・」
 なんだか盛り上がってる。
 急に男のほうがけっこう流暢な日本語で話しかけてきた。
「これからおひまですか? 良かったら付き合って欲しいデス」
「・・・・・・あ、はい」
 フェルモンド、この人・・・・・・多分このフレーズだけは言い慣れててるんだと思った。
 いつもは日本人の女の子をナンパしてるのかもしれない。  
 でも今日は彼女連れだから、無難な男の俺に声をかけた?
 いろいろ勝手な妄想をしながら、一緒に歩き出した。
「・・・・・・」
 周りを見渡す。
 スキー板をかついだ人がかなり多い。
 外国人もけっこう多い。
 知らない人にはついていくなというが・・・・・・この辺で何か事件が起きたとか聞いたことないし、大丈夫だろう。

†††††
 
 そのままコンビニまで歩いた。
 リゾート地でご飯とすりゴマを手に入れるには、そこが一番安く済むはず。
 ペルラとフェルモンドは持っていた荷物を持ったまま店内に入る。 
 入り口に置いておけばいいのに・・・・・・。
「いらっしゃいませ」
 外国人二人組が入ってきても店員さんは驚きもしない。
 すでに先客に何人か外国人がいるし。
「えっと、イトーのご飯とパックのすりゴマと・・・・・・つなぎにパン粉もあったほうがいいか」
 独り言をつぶやきながら、ペルラとフェルモンドにその3つを指さす。
「オー!」
 二人ともやたら興奮している。  
 ここまでの流れで何をそんなに騒ぐことがあったのか。
「・・・・・・」
 ペルラは買い物カゴにどんどん体に悪そうなものを入れていく。
 ポテトチップス ビール 甘い菓子パン数種。
 それ、ビールと合うのだろうか?
「あ、イトーのご飯だけ温めてもらえますか?」
「はい」
 レジに並び、レトルトのご飯だけレンチンしてもらうように店員に頼む。
 何気にこういうものをコンビニで温めてもらったのは初めてだ。
「ありがとうございました。またお越しください」
 定型文を聞きながら店を出る。
 今度は俺が二人についていく。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
 二人は何かを話してる。 
 フェルモンドはどこかに行ってしまった。
「ツイテキテ クダサイ」
 翻訳機が鳴る。
 とりあえずペルラについて行くことにした。
 
††††† 

 フェルモンドはすぐに合流してきた。
 荷物に釣り竿が1本増えてる。
 もしかして俺の分?
「おお」
 案内されたのは立派なホテルだった。
 太陽を反射するガラス張りのおしゃれな建物。
 入り口は大きくて、人が行きかってて屋台も並んでて活気がある。  
 多分このスキーリゾートで一番大きな宿泊施設。
 ここのアルバイト募集も多かった。
 二人はここに泊まってるんだろう。
「コッチデス」 
 フェルモンドが自前の言葉でニカッと笑いながら指さす。
 目的地は、ホテルではなくホテルの裏側か。
「んん?」
 釣り竿を持った集団とすれ違う。
 スキーリゾートで? 
 これから行くとこは秘かに釣りの穴場なんだろうか。 
「・・・・・・」  
 目的地についた。
 大きめの池だ。
 湖とはさすがに呼べない。
 見取図にこんなのなかった気がするが・・・・・・。
「釣ロウ! コレ 太一ノ竿! 貸スョ」
「あ、ありがとうございます」
 やっぱりさっきはフェルモンドは俺の分を持ってきてくれていたのか。
「・・・・・・」
 しかし鯉か。
 真冬に釣れる可能性は低いはず。
 そんなことを思いながら、池の岸に簡易のイスを設置する二人を手伝っていた。
 まあ多分、この二人は例え釣れなくてもこの時間を楽しむんだと思った。
 こういう場に令菜とかいたら、帰りたがって場の空気が気まずくなるんだろうけど・・・・・・。
「・・・・・・?」
 また自分で自分の思考に驚く。
 会ったばかりの令菜が楽しい奴がつまらない奴かなんてまだぜんぜんわからない。
 なんでさっきから俺は令菜に対して失礼な感情を抱いてるんだろう?
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