俺の人生、元いじめられっ娘によって破壊される

なめ沢蟹

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人生を破壊する存在との出会い

10話 アルバイト初日の終わり

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 いつの間にか夜になっていた。 
 客人は帰り、俺は令菜と一緒に後片付けをする。 
 テーブルの上には大量の酒やつまみの残骸が。
「・・・・・・」  
 揚げ油と酒の匂いがきつい。
 居酒屋の匂いって多分こんなんのはず。
「ほらほら、やっぱりあの2人ブロガーだった。さっそく私たちのこと記事にしてるわ」
 スマホをみながら明子さんが騒いでる。
「・・・・・・」
 俺はというと・・・・・・。
 メイド服姿でテキパキ働く令菜に目を奪われてしまっていた。
 素直に可愛い。
 今さらだが、髪はポニーテールに結っていて、いつもとは違う感じに見える。
「なあ? 顔出し良かったのか?」
 後片付けを続けながら聞いてみた。
 先ほど令菜はペルラさんにブログに写真を載せていいか聞かれて快諾していた。 
 ・・・・・・ちなみに翻訳機を通じて。
「別にいいよ。髪型変えてるし、お化粧してもらってるし、コスプレしてるし」
「・・・・・・?」
「ぱっと見誰だかなんかわからないってこと」
「ああ、そういうこと」
「それに別にやましい事じゃないし」
「まあな・・・・・・俺は載せていいか聞かれもしなかったけどな」
 さっきチラリと確認した。
 まったく読めないペルラさんのブログに載っていた画像は、令菜と明子さんのものだけ。
「これで今年は宣伝いらないわ」
 明子さんは興奮してる。
 先ほどビールをかなり飲んだのに、缶チューハイを開けようとしている。
「ああ! 明子さん、もう今日は酒やめましょうよ」
「どうして?」 
「万が一明子さんに潰れられたらですね、明日俺らだけじゃ何していいかわかりませんよ」
「それも・・・・・・そうね」
 説得が通じた。
 明子さんはすでにぐでんぐでんに酔っぱらっているが、少しは判断力が残っているようだ。
「あなたたちももう終わりでいいよ、もう寝よ」
 指示が来た。
 後片付け、だいぶ中途半端だが・・・・・・。
「え? こここのままで寝るんですか?」
「うん。今日の夜中私の彼氏がここに到着するの」
「はあ」
「彼、夜型だし。眠くないだろうし、几帳面だし、勝手に片付けると思う」
「・・・・・・ではお言葉に甘えて」
 休むことにした。
「うちは日給制。あんまり働くと損よ」
「はあ」
「とにかく令菜からお風呂入って来て、太一は覗かないように見張っとくから」
「そ、そんなことしませんよ」
 失礼な事を言われた。
「・・・・・・」
 しかし、これから10日間・・・・・・。
 いろいろ男女間のトラブルもあるかもしれない。
 何かやらかさないように気をつけるか。

†††††
 
 夜9時になっていた。
 思ったより時間が経ってない。
 風呂にも入り、さっぱりしたところで・・・・・・まだ眠くない。
 昨日の午後2時に家を出発したから、かなりの時間寝てない。
 今眠らないと明日キツいんだが・・・・・・。
「困ったわ、眠くない。今寝ないと明日キツいよね?」
「あ、ああ」
 令菜は俺と同じことを思ってた。
 さっきからずっとテーブルでスマホをいじっていたが、突然立ち上がる。
 上下地味な色のジャージ姿。
 先ほどまでとメイド服姿と違って色気も何もない。
「玄関前で筋トレしてくる」
「え?」
 突然そんなことを言い出した。
 それ、女の子が言うことか?
「風呂上がりに?」
「私ね学校行ってないからさ、少し自分に厳しくしないと太っちゃうんだよね」 
「ああ、そうなんだ」
「静かにやるし、早朝シャワー浴びるから安心してね」
「・・・・・・風邪ひくなよ」
 この辺は治安いいらしいし、玄関前でやるなら外に出ても大丈夫だろうと思った。
「グゴー グゴー」
「・・・・・・」
 問題はこれだ。
 明子さんはまたイビキをかいて長座布団の上で寝てしまった。
 一応暖かそうな服に着替えてはいるが、こっちはこっちで風邪をひきそうだ。
「しょうが無いなあ」
 とりあえずエアコンの暖房を強めにして、毛布をかけた。
 ・・・・・・近づくと酒臭い。 
「乾燥してるよなあ。喉やられそうだなあ」
 明子さんは寝相悪そうだから寝てる間に取られそうだけど、濡れタオルを額に乗せといた。
 少しは違うだろう。
「令菜! 微灯だけ付けとくな! 俺もう部屋で寝るから!」 
「うん。終わったら消しとくし、鍵をかけとく!」
 外から声が聞こえてきた。
 そのまま自分に割り当てられた部屋に入る。
「おお、わりと快適そう」
 さっき見たときは気付かなかったが、清潔なシーツ付きの布団が片隅にあった。
 見た感じ旅館とかと同じシステムだ。 
 掛け布団のほうにも包む形のシーツ。 
「寝るか」
 部屋の電気も消して、布団に横になる。
 寒くはないし、寝れないまでも目はつむっていたい。
「・・・・・・」
 真っ暗な中、考える。
 今日の最後のほうはけっこう令菜と打ち解けた気がする。
 いつの間にかお互いくだけて喋ってるし。
 しかし・・・・・・。
 あのリストバンドがどうしても気になってしまう。
 あの下の手首の内側には太い傷跡があるわけで。
「単なるケガの痕かもしれないし」
 小さな声で独り言を喋っていた。
 どちらにせよ、何も気付かないふりを続けよう。
 たった10日間の付き合いだ。
 令菜が高校を中退してる件にもなるべく触れないようにしよう。
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