ワケあり男装令嬢は家督を継いで、死刑執行人になると決めた。

みかん坊や

文字の大きさ
18 / 30

十八刑

しおりを挟む


 ——そして、見学日当日。

 見学期間は10日間。
 一先ず、私が目を付けている指導員は3人。見学の時間帯は昼休みか放課後が主になり、指導員の都合によって見学できない場合も考えられる。1日1人単位で見学に行く予定ではあるものの、もしも期待が外れてしまった場合も考えると決してゆっくりとはしていられない。

 最初に見学に行ったのは、ロイの本命 ジェームズ・サリ指導員。今年で齢58歳。二代前の死刑執行人……つまり私のお爺様の時の死刑執行補佐官という経歴を持っている為、より専門性の高い講義をウリに、死刑執行人希望の生徒からは絶大な人気を誇っている。


「我がクラスでは、現場実習にて本物の死刑執行人から直接話を聞き、事例分析を元に講義を行っていきます。かくゆう私自身も元死刑執行補佐官でしたので、死刑執行人着任に向けた本格的な指導が売りとなっております」


 卒業生の実績も悪くはない。目が高いロイが気に入る訳なだけある。それに、早期の段階で本格的な死刑執行人指導をするクラスは彼のクラスくらいだろう。元補佐官であったからこそできる授業カリキュラムの組み方と言っても過言ではない。

 次に見学に行ったのが、ソブチェル・ダートフ指導員。40歳。通称 死刑執行人マニアオタク。


「吾輩のクラスでは、他クラスに比べて現場実習に赴く時間を大幅に削減しております。というのも、執行現場をまだ見る事が出来ない今の君達の時期、処刑場に行っても意味がない。はっきり言って時間の無駄。初回授業で処刑場内を見学できたのなら、首切り現場の見学までこの教室で死刑執行人の歴史や事例研究、道具説明などを講義し、事前学習に徹底します」


 彼はジェームズのように補佐官などの経歴は無いものの、死刑執行人に関する机上の専門知識はジェームズ以上と言われている。
 本人が補佐官にならなかったのは、噂では血を見ると立ったまま気絶するからという本当なのか嘘なのか分からない理由らしい。
 しかし夢を諦めきれず、実践経験は積み上げず死刑執行人について研究していると、いつの間にかマニアオタクという変なあだ名を付けられていたという話だ。

 比べればそこまで差はない。元補佐官という伯があってジェームズの方が良い印象があるものの、どちらに入ってもハズレと言うのは無さそうだ。

 そして、いよいよ問題のクラスの見学だ。


「問題のヴァージットのクラスは……」
「本当に行くのか?  ラルフ」
「別にロイは無理に付き合わなくてもいんだよー」


 というか、元々ハイノと二人で見学に行こうって言ってたのに、しれっと付いてきてるな。ハイノの事をまだゴミだ何だと言っていたくせに、私と彼が仲良いから何となく仲間外れにされる感覚が癪に触るのだろうなぁ。


「ハイノも気が乗らないなら私一人で行くよ」
「偶には自分の選択外の物に目を向けておくのもいいだろう!  それに、噂のロクデナシ指導員をこの目で一眼見ておきたい興味もある!  この見学期間が好機だ!」
「嫌じゃないならいいんだけど、本人の目の前でロクデナシとか絶対言わないでね」


 ヴァージットの教室は、彼のクラスに生徒がいない為、指導員の部屋が並ぶ旧校舎3階の奥。指導員の部屋の中で最も狭い部屋だ。
 部屋の灯りが付いていた為、早速ノックをしてみるも中から音沙汰がない。試しにドアノブを捻ってみると、鍵はかかっていなかった。


「失礼しまー……」
「な、な!?」
「むむむ!!?」


 部屋の中を覗いた3人は、あまりの規格外さにその場で固まった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...